願うことはただ1つ【連載始めました】
初投稿です。
うまく文章になってませんが、お付き合いください
平民から貴族王族まで身分を問わず勉学を学ぶ学園の最上階の廊下にて数人の男女が藍色の髪をしたシュテルン公爵家の嫡男、レイヴィン様につめよっていた。
レイヴィン様は諦めと悲しみの顔で小さくため息をして口を開けたとき、
「おまちください」
わたしは声を上げ、レイヴィン様と彼に詰め寄っていた金色の髪に紫の瞳の第一王子のヴィルフリート殿下の間に強引にわりこみました。
わたしの身分は男爵家なので、これは不敬罪といわれるかもしれませんが、学園内では身分に関係なしとなってますし、これから起こることを考えたら恐れていてはいけないと自分にいいきかせ、王子をキッと睨みます。
「男爵令嬢が何の用だ。貴女に用はない。どいてくれないか」
氷のような寒気がする声で王子はいいますが、ここで負けてはこの先レイヴィイン様を守ることができなくなります。
わたしは震える手を握り締め、再び王子を睨みます。
「どきません。それにこの学園内では身分に関係なく発言権があると以前に生徒会長である殿下がおっしゃったではありませんか。それに先ほどの肩がぶつかったなど、大勢で横並びにすれば当然の結果です。謝るのはレイヴィン様ではなくサテライト公爵令嬢のエミリア様ではないかと思いますが」
一息に言えば、エミリア様は両手で口元を覆い、今にも泣きそうです。
そんなエミリア様を支えるようにして緋色の王立騎士団長の息子でもあるマルス公爵のアルベルト様が反論してきます。
「今回の件以外でも、ここ最近のレイヴィンはエミリア嬢とカミーラ嬢に嫌がらせしていると報告を受けている」
「そうです。それに兄上は最近、帰宅も遅く学園内でも色々と動き回っていると聞いています」
この発言にわたしはぶちっとキレそうです。
これがレイヴィン様の弟君のお言葉でしょうか。
わたしは睨みから微笑みに変えてさらに反撃します。
「まぁ。レイヴィン様の帰宅が遅くて学園内のあちこちに出没するのは当然かと思いますわ?何しろ生徒会の仕事を副会長であるレイヴィン様がおひとりでやられているんですもの。当然ではないかしら?それに忙しいレイヴィン様が他の方へ嫌がらせをする暇などありません。」
詰め寄ってる方のほとんが生徒会役員の方たちなのでしかめた顔をしています。
カミーラ様はそれでも不思議な微笑みを浮かべ、口を開きかけましたが。
「申し訳ありませんが、本来は滅多に呼ばれない生徒会サポート会が召集される程、今の生徒会は忙しいんですの。失礼いたしますわ。何かありましたら生徒会まで来てくださいませ」
と一気にいうとレイヴィン様の腕を掴み、その場から急いで退散しました。
カミーラ様は危険な方です。
あの方がしゃべるとあの方の言うことが正しいって流れになってしまいます。
なんとか逃げ出せてよかったと思っていると
「アリア・・・」
レイヴィン様が呟き、生徒会室まであと少しってところでわたしの手を掴み歩みをとめました。
そこでわたしは慌ててレイヴィン様の手を放してレイヴィン様の顔をみると困ったような顔をしていました。
「す、すみません。つい口を出してしまいました」
わたしは慌てて謝罪します。
今回の事はわたしの独断で動きましたし、いくら学園内が身分に関係なくといっても後で苦情が来そうですし、わが男爵家はシュテルン公爵家とは懇意の仲です。
何かあれば公爵家にもご迷惑がかかるかもとは頭ではわかっていたのですが、今回だけはわたしは何に変えてもレイヴィン様をおまもりしたかったのです。
あ、申し遅れましたわたしはヴィーゼ男爵の次女でアリア・ヴィーゼと申します。
そして私、前世の記憶持ちでもあります。
7歳の頃、木登りをしてうっかり足を滑らせて落ちた衝撃で思い出し、ここが前世で人気だったライトノベルの誓いシリーズに酷似していると気付きました。
誓いシリーズはエールデ王国の第二王子が主人公で、留学中に国を乗っ取られ奪還するために仲間を集めたり、恋に落ちたり、裏切りにあったりとかなり長編なシリーズでした。
そして冒頭のシーン。
あそこでレイヴィン様はかつての仲間に散々責められて、いつか昔のような仲になりたいと願ってたのが無理だと思い、窓から飛び降りてなくなってしまうのです。
その後、学園は機能しなくなり、さらに第一王子達がカミーラ様にいいようにあつかわれ、エミリア様は嫉妬でカミーラ様を殺そうとしますが逆に王子達に捕まり処刑されてしまいます。そして国はカミーラ様に乗っ取られて、留学から第二王子が戻ってきてと物語ははじまります。
クールだけど仲間想いってタイプに弱かったわたしはレイヴィン様に憧れてました。
たとえ物語の序盤の中でいなくなってしまってもわたしの中ではレイヴィン様が一番だったのです。
兄のティルフとレイヴィン様は仲が良く、わたしも幼い頃から何度かレイヴィン様にお会いして、レイヴィン様が実はクールと言うよりは無口かつ人見知りってだけで、わたしが描いてた憧れの人とはちょっと違ってましたが、それでも親しくなるにつれ、この人には生きて笑っていてほしいと思うようになりました。
それからわたしは前にも増して武術に力をいれ、レイヴィン様をお守りするために頑張ってきました。
ちなみにわたしは誓いシリーズでは名前すら出ていません。
『ティルフの妹が伝言を伝えに来た』レベルでしか登場しません。
レイヴィン様を助けるってことで今後の展開は大きく変わり、わたしにも予想はつかなくなるでしょう。
それでもわたし達にとっては今が現実です。
例え自己満足と言われようとレイヴィン様には幸せにいてほしい。それがわたし、アリア・ヴィーゼの願いです。
たとえ死ぬ定めを変えられないとしても裏切りで自分から死ぬことがないように願うばかりです。
わたしが頭を下げているとレイヴィン様の手が頭に乗りました。
「いや。ありがとう。アリアがかばってくれて嬉しかった」
いつも口を開けてもあまり言葉を発しないレイヴィン様のこの一言にわたしは嬉しくて思わず頭をあげた時、レイヴィン様の後ろの木に光るものがみえました。
「レイヴィン様!!」
わたしはレイヴィン様を引っ張りその背中を覆うようにした瞬間、窓ガラスが割れる音と肩に衝撃が走り、徐々に体が熱くなってきました。
何が起こったのか把握しようと思うのに体は動かず、近くの教室にいた人たちとレイヴィン様の声が聞こえたような気がしただけでわたしの意識はそこで落ちました。
3日後にしてわたしは目を覚ましました。
わたしの肩にあたったのは弓矢でした。
しかも毒ではなく呪の弓矢で当たった個所には痣のように魔法陣のような形が浮かんでました。
そしてわたしの声を失ってました。
目が覚めた後も熱はまだ引かずわたしは夢現の日々をすごしました。
それからさらに1週間が経ち、通常の生活に戻れ得るまでになりましたが、お父様から学園にはしばらく休学で静養に専念するように言われました。
この世界には魔法はありませんが、呪術は存在します。
わが国では呪術に関してはそんなに知識はありません。
なので声以外にも影響がでるのか他の人にも影響がでるのか判断できない状態なので、学校への休学はしかたないことです。
レイヴィン様はあの後、第一王子達を説得して今では前みたいな学園に戻っていると兄から聞きました。
説得する際に殴り合いもしたそうですが、詳しい経緯は聞いてません。
でもとりあえず前みたいな関係に戻られてよかったとうれしく思います。
これでわたしがそばにいなくても大丈夫なはずです。
学園も今では正常に機能回復しつつあるそうで、物語と完全に異なってきているようです。
わたしは今回の事件はレイヴィン様のお命を狙ったのではなく、物語を変えてしまったわたしへのペナルティではないかと考えるようになりました。
矢を射った犯人もみつかっていませんし、わたしは治療の関係で隣国に行くことになりました。
ペナルティが声でレイヴィン様が無事ならよかったといいたいことですが、物語で国をのっとたカミーラ様は現在行方不明だそうです。
これからの展開がまったくわからなくなりましたが、わたしにはもう何もできないのかと考えても考えてもいい案が思いつかないまま隣国に旅立つ日が訪れました。
華族に挨拶をすませ、馬車に向かうとレイヴィン様がいらしてたのです。
驚きです。今日は授業のはずなのにどうしたのかと見つめていると
「私も休学届だしてきたんだ。家督は弟にまかせたし、生徒会もヴィル達がやってくれてるし、父上にも許可をとってアリアと共に行くことにしたんだ」
え!?とお父様の顔を見ればうなずいております。
戸惑うわたしの背中を押し、馬車に乗せられ出発になってしまいました。
馬車が動き出しても何が起こったのか理解できない私にレイヴィン様がわたしの手を握り言いました。
「ヴィル達がカミーラ嬢に夢中になった時、私は言葉での説得を最初からせず黙ってたんだ。あの日もヴィル達の言葉に反論しないで諦めてたんだ。でもアリアは私の為に怒ってくれた。私の為に怒ってくれたアリアの声が戻るまで私はどこまでも君の側にいると約束しよう」
この言葉にわたしは涙がでました。
物語では名前すら出なかったのに憧れの人を助けられ一緒にいられる。
まるでヒロインのようだとわたしは嬉しくて涙を流しながら微笑むのでした。
~余談~
隣国について10日程過ぎたころ、王国が何者かに襲撃されたという話を耳にした。
やはり物語補正はあるのかと、再びレイヴィン様を守ろうと決意を新たに闘志を燃やすのですが、これはまた別のお話。
最後までありがとうございました。