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終章:偽りの母

終章:偽りの母

      *

 大粒の雨がX字に伸びる道に落ちていた。

 白亜の巨塔に連なる建造物がある。そこには銀翼を持った鉄の鳥が幾羽も待機しており、その内の一羽は体内にヒトを乗せていた。

 ムンバイ空港。チャーターされた旅客機に乗るのは神州神話機構の者たちだった。

 インドとの交渉成立後、彼らは翌日にはもうインドを立とうとしていた。連戦と激戦の疲労がまだ言えぬ一行だったが、インドに長居をしている訳にはいかないと蒼衣が言ったため、本格的な治療は帰国後という事になった。

 神州外交団と一匹以外に、座席に座る者はいない。先頭の列、その窓際の座席で水色の長髪を頭の上で結った少女は、顎肘を着いて外を眺めていた。

 ……たった数日の出来事でしたけど、随分と濃度の濃い数日でしたわ。

 波坂は嘆息を吐いて、

「帰ったらまた忙しくなりそうですわね……」

「何かあるのかい?」

 横に座っていた海瀬が、彼女の言葉に反応した。ええ、と波坂は苦笑して、

「この前までは人事異動と防衛訓練の日々でそれなりに大変だったのですけど、今回の一件でおそらく外交や貿易、その他の面でも大人数を指揮する事になりそうですから。――それに、月末には全クラス対抗の体育祭がありますし」

 下位十五クラス、三中隊分には夏休みに補修が倍になるという罰ゲーム付きだ。

 波坂の回答に、海瀬は腕を組んで懐かしそうに、

「運動会か。和時が小学校の時は大変だったな」

「? 何かありましたの?」

「ああ、一年の時、エリスがブルマで保護者競技に出てね。勝つために催眠まで使って散々だった。おかげで翌年から出禁、足の悪いボクは出れないから和時には可哀想な思いをさせた」

 父親は達観したような、諦めたような瞳で遠くを見始めた。

 ……相変わらず我が道を行く方ですのね……。

 愛想笑いを浮かべる波坂だったが、彼は、更に横に座って眠りこける空を撫でながら、

「まあ出るのが飽きたみたいだから、応援で先生方の頭を悩ませていたよ」

「もしかして遠野・和時があんな性格になったのはお母様が原因では……」

 機内販売のためだけに通路側に座った空だが、連日の消耗のせいか、離陸する前にもう寝てしまっている。それをかいがいしく世話をしてやる海瀬は、波坂の言葉に失笑する。

「迷惑がっているだろうけど、あれで和時も嫌ってる訳じゃないからね。二人がいいと言うのならボクは止めないよ。人はその人らしくあればいい」

 含蓄のある言葉だと波坂は思った。一度に聞くのももったいない、遠野親子の話はこの辺りにして彼女は話題を変えた。小さく寝息を立てる矮躯の少女を眺めて口を開く。

「お疲れなら、ワタクシが変わりましてよ?」

「大丈夫だよ。これはこれで、娘ができたみたいで面白い」

 義理の娘という事だろうか。つまりは和時さんの―――。

 ふるふると波坂は首を振って自分の邪推を捨て、愛想笑いを浮かべた。

      *

      *

 海瀬の心情は冷えていた。

 隣の少女と他愛のない会話をする一方で、もう片方で寝入る少女の方に彼の注意は向けられていた。

 ……心拍数正常、体温も平熱。代謝活動もヒトの域にある。

 間違いなくこの空という少女は、正常だ。が、しかし、

 海瀬は空の頭を優しく撫でた。少女の柔らかい濃紺の糸の感触が来る。そして、


 筒。

 筒がある。

 水蒸気の塊である雲を壁に、両の口を蒼穹とする筒の世界がある。

 そこに上下はなく、墜ちる感覚はあっても決して地に着く事はない。巻き上げるような強風が吹き荒れるそこはまるで、

 ――閉ざされた虚空の世界だった。


 海瀬は目蓋を開ける。

 わずか数秒の間だけ見えた映像ビジョンは、〝世界〟を有する彼にだからこそ感じ取る事ができる、その者が抱く〝世界〟の在り様だ。

 ……不思議な感覚だ。別段おかしなものがある訳ではないが、この子の持つ心象世界は、この子にしては不釣合いだ。

 〝世界〟はその者の全てだ。その者が抱く理想、信念、愛情、特性が、全て凝縮されて〝世界〟は構成される。故に、どこかしらにその者と似通った面が見られる筈なのだ。

 海瀬ならば、水の神殿。遠野ならば、広い野になだらかな山。エリスは公園。鬼村なら密林。遠野の母ユイでは、夕陽の空だ。経験則ではあるが、絶対に似るところがあるのだ。が、

 ……こんなにも愛らしい少女の〝世界〟が、あれほど簡素で奥底の知れないものであるとは到底思えない。ただ単に器が大きいという訳でもなさそうだ。

 異質の存在だった。

 海瀬の脳裏に過る記憶がある。昨夜、邪龍種を無力化する直前に少女が見せた容貌だ。

 紅の髪に碧の瞳。

 その上、少女は破格の力で、分断されたアナンタを蘇生させた。あれは神力という代物だけで可能な事なのだろうか。海瀬の疑問は晴れない。

「伊沙紀君、君は分からない事があればどうする?」

「? 分からなければ調べればいいのではありませんの?」

「そうだね。でも、誰も知らない事、未知の事なら、それはどうなる?」

 いきなりの問いで驚く彼女だが、しばし熟考した後、ごく当たり前の回答を示した。

「考察を経て試行し、結果を見る。それを繰り返して真実を見出す。――それか潔く諦めて違う事に関心を持つとかですわね」

「成程。君は合理的だね。参考になったよ」

「それは光栄ですけど、何かありましたの?」

 いや、と海瀬は小さく首を振った。客室乗務員を手招きして毛布を一枚頼み、それから、

「この世界は不思議に満ちていると、そう思っただけだよ」

 静かにそう答えた。

 しばらくすると飛行機がターミナルを離れて、滑走路に入った。

      *

      *

 雨天。

 管制塔から、アウヴィダとドルガー、そしてアッシュは滑走路を走る旅客機を見ていた。

 神州外交団が乗った旅客機は、四基の推進エンジンを唸らせて大空にその銀翼を羽ばたかせた。徐々に小さくなり、やがて雨と雲に隠れて見えなくなった頃、ドルガーが言葉を作った。

「行きましたか……」

「残念そうですね、ドルガー」

「無論です。敗ける事は覚悟の上でしたが、よもやここまで私たちが屈するとは思いもしませんでした。 しかし、彼らに負けたのは、ある意味幸運だったのかも知れません」

 青年の言葉に、老婆は微笑んだ。

「貴方がこの計画を提案した時、私は貴方の狂気を見ました。そして、それを本気で推察する私の思考にも、私は複雑な思いを得ました。利己のためだけに、何を考えているのだろうか、と」

「……私は貴女様がそのような考えを持っていた方が意外です。ヒトは自分の利益を考えて行動すべきという貴女様の考えを、私は世界に示したかったというのに」

『口を挟んで悪いが、まさか貴様らそんなすれ違いで事を起こしたのか?』

 アッシュの問いかけに、二人は即答した。苦笑したのだ。犬は嘆息して、

『馬鹿かお前らは……』

「ですが、結果としては私の想いは叶わず、しかし希望は見いだせていると言えます」

「ええ、インドが経済で世界を支え、神州が道を開く。事が順調に進めば、再びヒトが自らの手で生き抜く事が出来る世になるやも知れません」

 希望的観測だとアッシュは言いたかったが、それを叶えるのが参謀としての自分の役目だと自分を戒めた。しかし、一つだけアッシュはアウヴィダに確認したい事があった。

『インドは神州に借りを作っている計算だが、交渉内容はともかくとして遠野中将の不法入国やムンバイ上空での戦闘機爆破は咎めないのか? あれがあれば対等な交渉だぞ?』

「何を仰います。全て清算してしまえば神州の大義名分、インドの行為に介入という事案の履行が難しくなるではありませんか?」

『それで敗けを認めたと?』

 いいえ、と老婆は意外にも首を振った。深い笑みを浮かべて、

「これは神州への貸しです。こちらが借りをわざと残したという貸し。体外的に見れば私どもの負けですが、当人間では私どもの方が神州に貸しを作った計算になります。

 とどのつまり、神州が今後動くためにはそれなりにこちらの意図を汲んでくれる必要が生まれると、そういう訳でありますね。私にツケを作らせるだけの事はあります。ええ、いい商売になりますよこれは」

 アッシュは再度、溜め息をついた。

『勝てんな……』

「最初から分かり切った事です、アッシュ」

 ほほほ、とアウヴィダは笑っていた。

「さあお二人とも、局に帰って皆で宴です。――それとドルガー、いえこの場合はスカンダですが、よろしいですか?」

 彼女の呼びかけに、ドルガーは首を傾げた。無言で言葉を促す。すると、

「マーリーを三重襲名にしようと思います。今はアグニとカーリーですが、渾名ではなくれっきとしたカウマーリを。――よければドルガー、貴方をシヴァにしてもよろしいですが?」

 彼はぽかんとしていた。アッシュは堪らず吹き出して、大声で笑い始めている。

 言われた本人であるドルガーは一瞬、アウヴィダの言った意味が分からなかった。が、ややあってからその意味に気付いて、顔を赤くさせた。

「あ、や、彼女とは別に、そのような関係では……っ!」

『っく、お、お似合いだと言って、く、やってやろ、ぷは――、傑作だ……』

 スカンダが唯一認めた女神がカウマーリであり、シヴァの最愛の妻はカーリーだった。

 管制塔のエレベーターにさっさと乗り込むアウヴィダ。ドルガーは慌てて彼女を追い、

「待って下さい! そのような個人的な思惑で襲名をしてはなりませんっ。多神の神話とはいえ襲名者は多くあらねば―――」

「何を仰います。万人が認めればそれもまたアリ、という奴です。そもそも、私としては散々手を掛けた二人が一向に結ばれないので退屈なのですよ」

 それに、と老婆は前置きを入れてから、心底楽しそうな笑みでこう告げた。

「――言って差し上げますが、昨晩貴方と彼女が行った刀剣術式を介した同化行為は、普通長年連れ添ったパートナー同士でするような増強行為ですよ。それもほんの一瞬だけ、それをあんなにも長時間続けるとはよほどの信頼関係がなくば出来ぬ芸当です。

 ドルガー、いえスハルトよ。貴方も少しは、自分の欲というものに素直になってはみませぬか?」

 ドルガーは口をしぼめて、顔をゆでだこのように紅潮させる事しかできなかった。

 変革より以前。ドルガーは一匹の使い魔を持っていた。それは火竜であり、大変仲が良かった。しかし、変革の翌日、その火竜は姿を消し、彼はあの使い魔にも帰りたい所があったのだろうと探すのを諦めた。

 変革の一週間後、ドルガーの前に素っ裸の火竜の少女が現れた。彼女はドルガーに助けを求めようとして行き倒れたのだ。その日から、アウヴィダの手下が二人になった。

 ――インドと神州の戦争終結から数日後の事だった。

 顔を赤くさせたドルガーとマーリーが、ムンバイ市街をただ歩いている光景を多くの市民が見た。そして、それを目にしたムンバイ市民は、こう思った事だろう。

 こいつら何で知り合いしかいない所で初デートしているんだ? と。

      *

      *

 飛行機の中で、遠野と蒼衣は一つ席を空ける形で座っていた。

 最初こそ他愛もない会話をしていたが、段々とその内容は、空の襲名や神力についてのものに変わっていた。

「空の神力の能力はまだ判明しておらん。不用意に使うのも考え物だ。神役の保護領域も調べる必要があるゆえ、しばらくは空の襲名は伏せておくべきだろう」

「その考えはもっともだが、どこまで情報規制を敷くつもりだ? 少なくとも戦闘中に月光が日中レベルに達している。勘繰られる可能性は高いぞ」

「所詮は人伝いの情報だ。問い詰められたとしても俺の力だと言えば多少は言いくるめられる筈だ。少なくとも、オレは臣民に知られなければそれでよい」

 何故、という遠野の問いに、蒼衣は即答した。

「先も言った通り、空の今の状態がどんなものか、オレにも分からん。明確な事も分からずに襲名させては、縁故と思われる可能性が多分にある。それは癪だ」

「そんな事を気にするほど、会長は小心者なのか?」

「普通ならば要らぬ節介という奴だ。だが空の性格は利用できる。あの容貌も合わされば臣民からの支持はそれなりに得られる。それがあれば機構への不安感も多少拭えるだろう。そのためにも夏季の間に空を臣民の前に出して印象を良くし、その上で神在祭にて正式に襲名を発表する。そういう段取りだ」

 カグツチへの風当たりも少しは柔らかくなるだろう、という蒼衣の言葉に彼は驚いた。

「改めて思ったが、貴方は身内には優しいな」

「クク、――貴様の心を開けるための術数かも知れんぞ?」

 肩を竦めてみせる蒼衣だが、そこに悪意がないのは遠野にも分かり切った事。だから、

「それこそ会長には必要ないものだ。すでに俺はそれなりに会長を信頼しているからな」

「意外だな。二か月前の恨みはとうに消えたか? オレがまた策を弄するやも知れんのだぞ。その時になって恨みがましく罵られても面白くもなんともないのだが……」

 拍子抜けだな、と蒼衣は窓の外を見やった。

 雲の内部を翔け上がる飛行機は、しばらくすると雲の上に出る。上を向いていた機首も徐々に水平軌道に入り、やがては完全に蒼穹の空を横に翔けていく形になった。

「……平和を望む覇王は道化だな」

 彼の呟きは、しかし誰も聞いていなかった。

 常に孤独だと思ってきた彼だが、誰かに信頼されると思うと歯痒く、そう呟かずにはいられなかった。

 彼は自嘲する。己と己が愛する者のためだけに平和を望む自分に、信頼を寄せてくれる者がいる事を自嘲する。

      *

      *

 エリスは静かに席に座っていた。

 彼女は独り。皆の最後列で座席に腰掛けている。

 ここからでは顔は見えないが、皆は連日の疲労で口数が少ない。行きとは違い元気はないが充実した雰囲気を匂わせていた。

 いつの日だったろうか、昔にもこんな空気を味わった事がある。

 ……魔道会の皆で仕事をした後みたい。

 万年的な資金不足に悩まされていた魔道会は、不思議な事件を請け負い解決する仕事を請け負っていた。

 いつも変な事件ばかりをしていたせいか皆、行きは不安そうだが帰りは仕事の達成感に溢れていた。エリスはその空気がとても好きだった。

 幼い頃、自分がまだちゃんと肉体を持って生きていた時、仲間たちで探検を繰り返し、不安という高揚と探検を終えた達成感に似ていたからだ。

 エリスは小さく笑む。幾度となく名を変え、ここまで生きてきた彼女だが、その信念は一度として変わった事はない。大好きな仲間を死守する事だ。

 死守する。死んでも守る、殺してでも守る、と。

 ……でも、私の理を正してくれた人がいる。カイセ、私はあの時カイセに助けてもらった。トモダチ失格だと罵ってくれた事がとっても嬉しかった。

 会って数週間のエリスを本気で叱り、そして受け入れてくれた。

 ……私はカイセを愛してる。ユイを愛してる。カズトキを愛してる。仲間の皆が大好き。

 だから、遠野にも愛して欲しい。

 自分をではない。自分と遠野との関係はこれでいい。自分が望んでいるのは、彼に本当の母親を愛して欲しいのだ。

 彼はきっとユイを大切に想っている。しかしそれでは駄目だ。所詮は他人から聞いた人物像でしかない。それは、本当のユイではない。遠野には、ユイ本人を知って欲しいのだ。

 いつになるかは分からないが、いつか本当の母親に逢わせてあげたい。

 エリスは決意した。

 いつか、彼に本当の母親の顔を見せる、と。

 彼女はこの世界最高の死霊魔術師だ。死んだ人間でも、逢わせる方法は幾らかある。

 ……カズトキ。カズトキにはカズトキの幸せを望んで貰いたい。だから、その時が来たら反応はカズトキに任せるよ。これは私の願いなんだから、拒否してもいいからね。

 エリスは微笑んでいる。

 思い出すのは美しい黒髪。長くて細くてサラサラしていて、手で梳いても引っ掛からない。真面目でツンツンしてるけど、とっても素直なユイにピッタリな、とっても綺麗な黒髪。

 ――えりざべすって言いにくいのよ。だからあたしが考えた渾名を使えばいいよ。エリスってのはどう! イイでしょ? 

 ――え? スペルミスって? 知らないよそんなの!

 英語がまだ苦手だったユイが付けてくれた渾名は、今でもエリスの大切な名だ。

 ――エリス、これでまた一緒にいられるわよ。プロティスタには追われるけど、あたしたちなら何ともないわ。だから心配しなくていいから。ね?

 ――あらエリス、いたの? コイツ、さっき〝魔法〟を使ったの。〝鍍金殺し〟に見られたし、もしかしたらプロティスタに追われるかも知れないわ。どう思う?

 ――アイツ、絶対おかしいわ。何で寿命まで使って皆を助けるのよ。アイツは、本当なら普通に暮らして 普通に働いて、普通に結婚して子ども作って、普通に生きていける筈なのに、なのにどうして、アタシたちを助けるのよ!

 ユイは海瀬が自分たちと一緒に戦い続けるの一度として良しとはしなかった。ある時は指揮官としてわざと海瀬を戦線から外そうとした事もある。

 ――エリス、ごめんね。アイツには黙ってて。後でアイツが怒っても無視していいから。

 ――エリス。あとは頼んだわよ。アイツたぶん自分を責めるだろうから。

 ――エリス、ありがと。貴方に逢えて嬉しかったわ。

 ――エリス、貴女もたまには、自分の幸せくらい願ってね。

 ああ。ユイ、そんな事はないよ。自分はこれ以上にないくらい幸せ者だよ。沢山の友達に出会えて、沢山の楽しさを手に入れて、好きな人と一緒になれて、大切な子どもを得られた。

 逆に、私がユイの幸せを奪ったのではないかと思えてしまうほどに、私は幸せだよ。

 ふ、と細く長い吐息を彼女はつく。その顔には優しい微笑みが浮かんでいる。

 彼女の心はいつだって喜びに満ちていた。ユイと出会った時も、ユイに渾名を付けてもらった時も、ユイに助けてもらった時も、カイセに助けられた時も、二人が結ばれた時も、そしてカズトキが生まれたも、私はとっても嬉しかった。

 だから、そんな喜びをくれた皆を、私は幸せにしてあげたい。それが、

「……私の一番の幸せだよ」

 彼女は偽りの母だった。

 子どもを騙し、母の皮をかぶって子どもを育て続けた。

 だが、その心にある想いは、決して偽りなどではなかった筈である。

 そうだ。

 子どもの幸せを望む事のどこに、母としての汚点があるというのだ。

 彼女は母親だ。決して、紛い物などではない。

 飛行機のシートの上で、銀髪の少女は目を閉じる。

 息子を想ったまま、少女は安らかに、独り寝息を立てた。





 申し訳ありません。未完状態ですが、これでインド編は終了です。

 内容についてですが、まあ私としてはエリスさんが一番嬉々としえ書けるキャラの一人ですね。もう一人は波坂さんあたりですけど。--とりあえず彼女については私の頭の中でも屈指の中二キャラです。長い名前と名前の多さから始まり、てんこもりの属性、幽霊という理由で十九歳から九歳まで自由に変身できたり、あとは技についてもおそらく一番種類というか具体的な名前を考えたりしているという有様で、楽しくてしょうがないです(汗)。

 作中の終盤でアウヴィダ婆が色々言っていましたが、私としても訳分からんだろうと思ったのでエリスさんの紹介文を書いておきますね。

 〇エリス

   名前(古い順)

    ・エリザベス=ノアール

    ・エリザベス=ネクロマンテイア・ツアペックドックス

    ・エリス=ネクロマン

    ・エリス=遠野

   異名(古い順)

    ・死玩具シミテール

    ・リリス

   主要な特技

    複合型死霊魔術

    魔法もどき(庭園と遊園地)

    初歩及び応用魔術全般

   経歴

    九歳で肉体と霊体が乖離。以後、霊体は魔導会が密かに保護、肉体は魔法   機関の実験体。十代後半で魔導会に肉体も救出され、その一、二年後に海瀬   と出会う。しばらくして魔導会と仲違いにおちいるが海瀬との死闘により和   解、この際肉体が限界を迎え、行き場を失くしたが海瀬の特殊な肉体構造ゆ   えに中に入る事で消滅回避。それ以後は海瀬と共に生活。魔法機関との闘争   を経て、今に至る。

   

 以上な感じです。性格は奔放で自分の良いと思うものにしか優しく接しませんが、一度好印象になればどこであろうと守ってくれるような人だと考えています。遠野夫妻は今後も度々出す機会があると思うので、よければ覚えておいて下さい。


 次回は短編集っぽい形になると思います。他国には出ずに国内でいろいろやる感じですかね。

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