悪魔を呼ぶ声。
「世界は素晴らしい」
かつて彼は言った。父親は大手企業の社長、母親は東京大学出身のエリート。すべてが上手く行っていた、中学1年生の頃。成績も良くて、運動もできた。有名な進学校に通い、生徒にも先生にも好かれた。彼女だっていた。親友もいた。何一つ不自由していなかった生活。
「世界は不平等だ」
彼は言った。父親は多額の借金に負われ、母親は他界。すべてが崩れ始めていた、中学3年生の今。成績も思うように伸びなくなって、運動も嫌いになった。学校の勉強にも着いて行けなくなった。周りからは"落ちこぼれ"と呼ばれた。彼女だっていなくなった。親友も引っ越した。周りにあるすべてのものに腹を立て、荒れた。どうしようもなく荒れた。
結局は幸せなんて壊れる。永遠に続く幸せなんて存在しない。彼はそう思った。暗闇に落ち、光を探すことを止めた。心に刺さったままの棘を抜くこともできずに、彼は静かに涙を流した。そんな彼の前に、ひとつの影が現れた。彼と同じくらいの年齢の、一人の少年。少年は真っ黒な布を体にまとい、黒いフードの奥で白い肌がちらつく。奥からじっと見つめる黄色い目が、彼の部屋を冷たい空気で包んだ。少年は自らを「死を司る悪魔」だと名乗った。彼は怯えた。しかし彼は思ったのだった。悪魔を身に付けたら、世界を支配することが出来るのではないか、と。気に入らないものには死を宣告する。世界の頂点に立つのは自分だ、と。




