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片目を失った少年 その3

「勿論。その国なら知っています。我が国と同盟関係ですが、それが?」


(父上はどれだけ僕がバカだと思っているんだ?)


「その国の使者が先程、来てな――」


言葉がそこで、一旦途切れた。


王の間で、緊張が走る。


(あのジパルグから?珍しいな)


この数年の間、ジパルグとは国交をしているから、使者が来る事はそう珍しくはない。


だが、二週間ほど前から使者が来なくなっていた。


(内乱でも始まったのか、と憶測していたのだが。まさか、本当にそうだったりして)


そして、ガルビオンが切った話を繋ぐ。


「――――竜が現れたと言いおった」


どよめきが起きた。


いつもは、胸を張って誇らしげな将軍らも、目を剥いている。


「えっ?竜?」


アレクの質問にガルビオンが深く頷く。


そして、自らも怪訝した表情で言った。


「大崎とは長い付き合いだ。だから嘘は申さんと思うのだが、こればかりは、なんとも信じがたい話だ………。確認の為、こちらから使者を送らせた。一週間もすれば、辿り着くだろう」


(竜だと?この時代に、まさか冗談だろ?そんな太古昔の生き物が………)


1年前には、周辺を調査する為、調査隊を各地域に派遣していた。


王国の付近には、魔物やら、山賊など、悪しき者共が徘徊しているからな。


我が領内を荒らされては困る。


そこでは、異常はないと、確認したばかりのはず。


何も竜に関することではない。


この国の先祖達が行って来たことで、なぜしているかは誰も理由を知らないが。


これはシェール建国と同時に作られた国の定めなのだ。


誰もが従ってきたし従わねばならない。


10年に一度の周期的に調査し文章にまとめて、書き残すことが決まっている。


ガルビオンは額に手を置き横目でメルナの目を見つめ何か意見を求めているように見えた。


それに気づいて一度振り返ってからうつむき答えた。


「ガルビオン、大崎様は嘘はつかないわ。でも竜は遠の昔に、絶滅したと聞きましたが?」


そのまま王と王妃は沈黙した。


(混乱しているのか?あの父上が?)


考えがまとまったのか、ガルビオンが両膝に手を付いて、立ち上がった。


それに息を呑んだ衛兵や近衛兵が顔を強張らせる。


当然、アレクもだ。


「ようか!このことが真であれば、定めに従う。急ぎ、各地の城壁外の村々を調査せよ。ヨハン隊長!志願兵を募り調査隊を編成せよ。いかなる些細なことでも構わん。すべてここに報告せいッ!」


ガルビオンの威厳ある声が、王の間を響き渡る。


「はっ!」


一斉に兵士達が敬礼した。


そして、鎧の音が、ガチャガチャなり始める。


アレクには耳障りだった。


その為、心の中で、文句を垂れる。


(王の間で、走るなよな。まぁ国王の命令だから急ぐのは仕方ないことだが………)


ガルビオンは近くに居た大臣と王の右腕であるアプラン将軍を引き連れ、奥の間にある会議室に入ろうとした。


アレクは何もない日常と退屈な王宮生活に飽きていた。


その為、この竜の出現は言わば予定されていない事態だ。


変動を好むアレクには持って来いだ。


そこらの道化師などの催す出し物は見飽きていたが竜となれば話しが違うしそれが嘘だろうが本当だろうが彼にとって問題ない。


大きな退屈しのぎとなるならなんでも良かった。


(………暇つぶしになるか)


そして最大のチャンスを逃してはならないと一歩前に出て言った。


「父上!自分を調査隊に入れて下さい!」


先程まで、騒がしかった王の間が一瞬にして、静まり返り、近くに居た兵士らが、口をポカリと開けて、アレクを凝視していた。


メルナもそれを聞いた瞬間、一度は固まったが、すぐさま、アレクに駆け寄った。


「何を言っているのですかあなたは!何かあったらどうするのですか?!」


「しかし、僕はもう飽きたんです!」


「あ、飽きた?」


「そうです!僕はこんな暮らしはもう嫌なんです。毎日、同じ事をして、毎日、何もせず、ただのうのうと暮らす。そんな王の子など、民衆がどうみるか?俺は、民と同じ、暮らしがしたいんです。特別扱いなんて求めていない!」


(まぁ、これは建前だ。別に、どうでもいい。ただ、暇つぶしになればそれでいい)


アレクは心中で、そう思っていると、目の前から、すすり泣く声が聞こえる。


目線をメルナに向けると、彼女は涙いていた。


「なっ?!」


アレクに涙を見せたのは初めてだった為、彼は戸惑った。


(う、嘘?母上が泣いている。どうしてだ……?)

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