フェレナス戦記
三年前に小説を書き始め、いろいろな作品を書いてきましたが、これが僕の幻の処女作です。
まぁ――日本語がおかしくて、設定も定まっていない頃でした。
でも、ほぼ、完成に近い作品でしたので、このまま、お蔵入りするのも勿体無いかと思い、出してみました。
どうか、暖かく見守って下さい。
“バルクルィン戦争”
これは、シェール国が栄えた時代から遥か千年の昔の事である。
――――――暇を持て余していた創造神ラスタはちょっとした暇潰しに、生命を誕生させようと考えた。
そこで、人と竜をまず初めに作ってみた。
せっかく作ったのだから、人と竜を争わせぬ為にも、二つの世界を与えた。
人の世界と竜の世界。
表と裏の世界といってもいいだろう。
それは重なり合ってはならない異なる存在、異なる世界。
神ラスタは竜に翼を与え、人に知恵を与えた。
ミラハルム国暦、六〇三年の頃。
時は流れ、人は火を手にしてから飛躍的な発展を遂げ、共存の道を選び、国へと発展していった。
人が集まり、村となり、集落となり、砦となり、やがて、国となった。
互いの世界は天秤のように均等に保たれていた。
だが突然、それが片方に大きく傾いった。
原因は漆黒の竜バルクルィンの登場である。
彼は貪欲であった。
いや貪欲過ぎた。
そのため竜達の中でも彼を恐れ、誰も逆らおうとしなかった。
なんの抵抗も受けないまま、竜の世界を征したバルクルィンはそれだけでは心を満たせず、黄金と力を求めて、人の世界にまで手を伸ばした。
バルクルィン巨大な両翼をはばたかせ、大地に降り立つと、古の竜語を使い広大なる人の世界の大陸に恐怖の竜語を響かせた。
「弱き人間ども、我を崇めよ。人間よ、我に金銀財宝を奉納せよ!そして、我の永遠なる奴隷となれ!」と言い放つ。
バルクルィンの放つ漆黒の闇は強力で、空は一瞬にしてその邪悪な色に染まりあがり、破滅への道を進もうとしていた。
誰もがそう思っていた。
そして、人々は未来を絶望し、生きる事を諦め始めた。
奴隷になるならば、滅んだほうがよういと考える者まで現れる始末。
だが、ここで英雄に相応しい一人の男が立ち上がった。
必然的なのか、それとも偶然なのかはわからない。
ただ、わかる事は誰かが自分たちの世界を守り、誰かが勇気を出す。
ただそれだけなのだ。
後は偉大なる指導者に人々が従うのみ。
人々は求めていた。
平和を約束する真の王を。
その後に英雄となった男は自分の民の前で、拳を空高く掲げる。
拳には光が見えた。
それは希望。
人々が棄てようとした希望その物をあらわしているように見えた。
ここで、一説によると、魔法を使ったと、一部の書に記されているが、それは定かではない。
その英雄の名、竜に立ち向かった男は、ミラハルム国初代の王のガランハルだった。
王は戦う為の理由として、未来について語り民達を説得させる。
そこで、彼が人間の中で、最もカリスマ性に優れていた事を思わせる事実の一つだ。
結果的に、何千何万の民を説得したのだから。
「我が民よ!闇を恐れるな。諸君らが戦い続ける限り、希望は消えない。約束しよう!私が竜を倒す。ならば、今ぞ、立ち上がれ!いまぞ、団結の時ぞ!」
この一言で世界が動いた。
多くの民は自分から志願し戦いに参加した。
そこには女や子供も含まれていたと、記されている。
人々はこの決戦に最期の希望をガランハルに託した。
ミラハルム国軍は決戦の地に進軍する。
それを見た他の国は、王の呼びかけに賛同し軍の規模がどんどんと拡大していく。