表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ハロウィンの夜に

作者: うろ




 トントンと。

 扉を叩く音。


「「トリックオアトリート」」


 いつかのハロウィンに。

 君と僕とで、

 扉を叩きに行った。




***




 君は黒のとんがり帽子をかぶっていたから。


「知ってる」僕は言った。


 君、魔女なんでしょ。


 ほうきに乗って、空から降りてきた君は、絶対に。


「そうだよ」


 君はにっこりと笑って、僕にその白い手を差し伸べた。


「トリックオアトリート」


 おかしをくれないといたずらするぞ。


 だけど僕はおかしを持ってなかったから。

 君は口をとがらせて、不満げな顔をする。


「じゃあ」君は言う。


「いたずらする」


 それから君は、僕の手をとって、ほうきを片手に歩き出した。


 ずんずん歩く君に引っ張られて。藁葺きの牛小屋が見えてくる。中にいる牛たちの寝息が、微かに空気をふるわせている。

 うずたかい牧草の山に、半分隠れた扉を。


 トントン。


 君は叩いてから、細く開けて、「なんだ」と言った。


「牛小屋なの」


 そう言ってまた、歩き出す。


 すぐ隣に見つけたウッドハウスからは。明るい調子のメロディーと、楽しげな笑い声が僅かに聞こえる。


 トントン。


 扉を開けたのは、若い女の人だった。


「トリックオアトリート」


 君は言って、さっきのように手を差し伸べた。


「ねえ」


 だけど。


「君たち、理不尽だと思わない?」女の人は言う。


「こちらは何もしていないのに、突然こちらの損害にしかならない取引を持ちかけるなんて」女の人は、僕と隣の君を見下ろす。「そんなの、人質をとった強盗と同じじゃなくて?」


 でも、君は眉ひとつ動かさず。真っ直ぐ女の人を見上げて。


「それもそうね」と、短く応えた。「ごめんなさいね、さよなら」


 君は、僕の手をひいて女の人に背を向けた。


 歩く。

 歩く。

 歩きながら、

 僕は君に問うた。


「どうしてあの人にはいたずらしないのに、僕にはするの?」

「私は」


 君は答えた。


「誰かを嫌な気持ちにするために、ここに来たんじゃないもの」

「ふうん。偉いんだね」


 僕は答えたけれど。

 意味はよく分からなかった。


 そしてまた、家が見えてくる。柔らかな明かりがカーテンの隙間から仄かに漏れる。赤いレンガ造りの家。


 トントン。


 君はまた、扉を叩いた。


「「トリックオアトリート」」


 僕も一緒に言ってみた。

 君が僕を見る。僕が微笑んでみせると、君も笑った。


 扉を開けたおばあさんは、少し驚いた様子で。僕と君を見て、ふと微笑んだ。


「少し待っててね」


 おばあさんは、油紙に包んだクッキーをふたつ持ってきた。

 そしてそれを、僕と君にひとつずつ手渡して。


「ありがとう」


 君は言った。僕も言った。

 おばあさんも言った。


「ひとりで迎えるハロウィンなんて、面白くもなんともないもの。来てくれて、ありがとう」




***




 それから僕と君は、扉を叩いてまわった。

 君の持っていた籠がいっぱいになった頃。

 僕と君ははじめに会った場所に戻っていた。


「いたずらは終わり」


 結局。


「いたずらって何だったの?」


 だから、と君は言う。


「私と一緒におかしを貰いに行くこと」


 そうだったのか、と僕は頷く。


 そして。


 君は、僕に一言、


「じゃあね」と言って。


 ほうきで空に昇っていった。




***




 いつかのハロウィン。

 あの日から僕は、毎年。

 扉の叩かれるのを待っている。







 ハロウィンだけど忙しくて何もできなかったので、中学の時に書いたものを発掘。言葉遊びとか某おとぎ話とかが、微妙な感じにからんでます。話の内容もよー分からん感じになってます。でもとりあえず。なんか、今より全然純真だなって。思います。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ