嘘に沈む村
影を切る儀式の村に、国家の嘘が静かに落ちていく。
浮ヶ谷亨、浮島あきら、浮名あつしの三人は、同じ村の出身だった。
その村は、詐欺師の村と呼ばれていた。日本という国が、他国や自国民を欺くための数多の嘘を、もっとも巧みに操る者たちが集う、静かなる巣窟である。
村人たちは幼い頃から言葉の罠、表情の演技、数字の幻惑を磨き上げ、一定の富を掴むと故郷に戻り、得たものを村に捧げた。
しかし、彼らには特有の「寿命」があった。
長年にわたり他人を欺き続けた呪いや念が、魂を蝕むのだ。病や老いではなく、積み重なった欺瞞そのものが命を削る。
だからこそ、彼らは「命見の洞窟」へと向かう。洞窟の奥で特別な蝋燭に火を灯す。
揺らめく光が壁に投げかける影が、異様に長く伸びる者は、魂の浸食が深いとされる。その影を短く切り落とす儀式により、呪縛を断つのだ。
三人もまた、富を携えて村に戻り、この儀式を受けるために洞窟へ足を運んだ。彼らが持ち帰ったのは、国が極秘裏に開発した「特効薬」だった。
「これで癌は根絶できる。世界が変わる」と、関係者から囁かれた品である。
高額で転売すれば村はさらに豊かになるはずだった。三人は胸を高鳴らせ、村の長老たちに献上した。
村人たちは歓喜し、早速その薬を分け合い、儀式の前に飲んだ。魂の浄化と富の拡大を祈りながら。
しかし、それは癌の特効薬などではなかった。日本という国家が、他国への脅威や自国民の管理のために密かに生み出した生物兵器だった。
欺瞞を生業とする者たちを、欺瞞で葬るための、完璧に計算された毒。
最初は微かな発熱だった。やがて皮膚が爛れ、視界が歪み、呼吸が乱れる。村人たちは互いに疑い、騙されたと叫びながら倒れていった。
長年他人を欺いてきた者たちが、最後に自らの国に欺かれたという事実に気づく間もなく。命見の洞窟では、最後の蝋燭が灯されていた。
儀式を終えようとした三人の影は、異様に長く、黒く、ねじくれていた。だが、もはやそれを切る者はいなかった。
村は静かに滅んだ。他者を騙すことで肥え太り、国が他者を騙す嘘に自ら飲み込まれて消えた。
まさに皮肉な結末だった。日本という巨大な詐欺師が、意図せず小さな詐欺師の村を、完璧に、慈悲もなく、葬り去ったのだ。
洞窟の奥で、蝋燭の火が消えた。影は永遠に闇に溶け、誰もその長さを測る者はいなくなった。
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