帰りの新幹線にて
翌々日、柴田のお骨を持った妻と娘は帰りの新幹線の中にいた。
妻は、骨壷を大事そうに抱え、二人シートの窓側に座っている。
「お母さん、朝からずうっとそうやって持っているよね」
「そうね。だって大事な人なんですもの。ちゃんと連れて帰って丁寧に供養してあげないとねぇ」
「そうだね。でも先生も仲間だなんてびっくりだよね。いったいどういう会社なのかしら」
「しっ、声が大きいわよ」
「大丈夫よ、ほら、そこの人だって寝てるし・・」
といって同じシートの列のとなりの人をチラリと見た。
確かに、三人がけシートの二つを一人で占有して座っている太ったおばさんは、さっきから口を半開きにして寝ている。
妻は、どこかで見たような人だなと思いながらも、明確な心当たりが見つからなかった。
やがて、新幹線は二人が降りる駅に近づいてきた。
二人は、荷物棚から荷物を降ろしたり、下車の準備を始めた。さっきまで口を開けて寝ていた同じシート列のおばさんも、同じ駅で降りるらしく、立ち上がって荷物の整理をしている。
その時、列車にブレーキがかかりおばさんはバランスを崩し理穂の方に寄りかかってきた。
「あら、ごめんなさい」とおばさんは理穂に向かって言った後、理穂の耳元でささやくように
(村での出来事はもっと小さな声でね)
と話しかけた。
ぎょっとした理穂は化け物でも見るかのように目を見開き、そのおばさんの顔をまじまじと見た。
その太ったおばさんは、二人の驚いた顔を楽しむかのようにニッと笑って再び自分のシートに戻って下車支度を続けた。
その横顔を見ていた恵子は、「あっ」と小さな声を上げささやくように理穂に言った。
(たしかあのおばさん、行きの新幹線でも近くに座っていた人よ。ということは・・)
理穂は、母の顔を見てつぶやいた。
(あの人も浦河さんの仲間で、もしかして行く時から監視されていたっていうこと?)
二人は、葬儀屋と名乗った浦河の会社の底知れなさに不気味さを感じていた。




