第一話 転勤と不穏
2025年 1月21日 午前1時 ○○村
周囲は昨夜から降り続いている雪で覆われて白銀の世界になっていた。
そこに、一人の男性がいた。
その男性は服が紅く染まっており、白い息をはきながらどこか吹っ切れており、激しく肩を上下させていた。
私は何のために生まれてきたのだろう…
ふと、空を見上げた。
真っ暗な空からは、雪が降り続いていた。
手には、何かが付着している金属バットが握られていた。
私は唐突に過去に思いを巡らせた。
全てはこの村に来たときに始まった。
2024年 5月21日
私「転勤ですか?」
私は突然の転勤を上司から言われて戸惑っていた。
上司「場所は、○○県にある○○村で21軒に35人が住んでいる限界集落。なんでも、近くの町まで車で20分かかり、それも山道。」
私「どうして、私がそんなところに行かなくてはいけないのですか!」
私は険しい顔と少し苛立った声で、上司に詰めよった。
上司もばつが悪そうな顔で私をなだめつつこう説明した。
上司「なんでも、その近くの町で支店を出したいから、そのための準備を君にして欲しいと社長から頼まれたのだよ…○○村に転勤なのは、その町の近くにアパートが無くて、一番近いところが○○村の賃貸住宅だったから…」
私「社長から…?何でですか?」
上司「君は会社設立当初からいるし、一番頼れるから…ぜひ君にお願いしたい!」
確かに私は会社設立当初からいる。
この会社は、今から約10年前に設立されその時に、新規社員として入社。
この会社の社員1期生として、社長も気に入ってくれていると自負している。
それに、この会社もかなり規模も大きくなったし社員も増えてきたので、支店を出して営業拡大も理解できる。
私は仕方ないと思い、この話を飲み込んだ。
2024年 6月1日
私は○○県○○村に来ていた。
○○村は、上司が言った通りかなりの限界集落で住んでいる人達もほぼ全員が高齢者だった。
そして、私が住む賃貸住宅は古い一軒家で築40年とかなり年期が入っていた。
しかも、壁は木製で床は畳といかにも和風を感じられている。
私は一通り軽く掃除をし、持ってきていた荷物を運び終えた。
ちなみに、持っている車は軽自動車で上司の言った通り道中かなり険しい道のりで慣れるまでかなり苦労しそうだった。
私はある程度落ち着いたので、この村の住民への挨拶周りをした。
私「こんにちは。この度この村に引っ越してきました。どうぞ、よろしくお願いします。」
この村の住民の人達の印象は、はっきり言ってかなり良い。
てっきり、外部から来た人を嫌ったりしていると思っていたけど、こちらが挨拶をすると全員が満面の笑顔で挨拶を返してくれたし、相談があれば乗ってくれるとも言ってくれた。
この村での生活も何とかなりそうとこの時は思っていた。
あんな事さえなければ
2024年7月上旬
ここに来て1ヶ月程が経過した。
近くの町に出す支店の場所もある程度の候補を絞れてきたので、あとは会社と相談するだけ。
そうしたら…この村ともお別れか…
どこか悲しい思いになり、村の住民達の笑顔が目に浮かび泣きそうになった。
どうやら思っている以上にこの村が好きになったようだった。
そんな時だった…
ガシャーンと音を立てて窓ガラスが四散した。
側には拳程の大きな石があった。
私は何が起きたのか分からなかった。
だが、すぐに外に出てみたが誰も居なかった。
私は恐怖心を抱いた。
一体誰が...何のためにこんなことをしたのか?
そこに、近所(近所と言っても400~500m離れている)の安田さんがガラスが割れた音を聞き付けてやって来た。
安田さんは、60歳の女性でこの村出身。
私が休みの日にこの村の清掃を自主的にしている時によく飲み物をくれる優しい女性。
安田「大丈夫ですか?何か割れた音が聞こえたので慌てて来たのですけど…」
私「幸いにも怪我はないので大丈夫ですよ…多分どっかの若者か何かですよ…」
安田「そうですか…怪我が無くてよかったです…」
そう言って安田さんは、家に戻った。
私は考えていた。
こんな山奥の村に若者は来るのか?
否、来ない。
ということは、この村の住民の誰か…
この村の住民は、とても優しくてこんなことをするはずがないし、信じたくない。
だが、実際に石を投げられている。
そもそも、安田さんの家までガラスが割れた音まで届くのか?
外に居たのなら、犯人を見ているはず。
だが、安田さんは何も犯人のことを言っていない。
ということは、家に居たことになる。
家に居たのなら、音は聞こえなくなる筈なのに安田さんは、すぐに来た。
まさか…
私はどうしようも出来ずにただ、立ち尽くすことしか出来なかった。
そういえば…この村には若者は一度も見かけていないな…
私は一瞬そう思ったが、関係ないことだと考えて割れたガラスの後片付けをするために家に戻った。
途中、安田さんの家の方を向くと安田さんが二階の部屋から真顔でこちらをずっと見ていた。
背中に嫌な汗が出てきて、冷水を頭から掛けられたような感覚に陥ったが、すぐに家に駆け込んだ。
何かがおかしい…
そう思いつつも、いつもの日常を送ることしか出来なかった。
続く
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