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仕事と自由度


昼前、倉庫での作業を終えた。


職員が一度だけ端末画面を確認して言う。


「白石さんは、次の指示が出るまで待機です。」


「待機、って……どこで?」


「A区画内で。部屋でも、共用スペースでも。」


それだけだった。


選択肢があるようで、

範囲は最初から決まっている。


共用スペースへ向かう途中、

一哉を見つけた。


職員と並んで歩いている。


距離が近い。

歩く速度が同じだ。


「佐藤。これ、確認してもらえるか。」


「分かりました。」


端末を受け取る仕草が、自然だった。


説明はない。

確認事項も聞こえない。


それでも、一哉は迷わず頷いている。


一哉の進んだ通路に足を向けると、

職員の視線が上がった。


「白石さん、そちらには行かないでください。」


「……分かりました。」


――行けない、じゃない。

行かない、でもない。

行かせてもらえない。


昼食の時間。


食堂で向かいに座る。


「午前、どうだった?」


一哉が聞く。


「倉庫。いつも通り。」


「そっか。」


それだけで、話は続かない。


少し間を置いて、一哉が言う。


「午後、呼ばれてる。」


「また?」


「うん。調整、って言ってた。」


調整。


能力の話じゃない。

仕事の話でもない。


「外、出るのか?」


聞いてから、

聞くべきじゃなかったと思った。


一哉は少し考えてから答える。


「まだ。

 でも、出る前提で話してる感じだった。」


前提。


俺は、前提に含まれていない。


午後。


俺は、共用スペースで待機する。


本を読んでもいい。

端末を触ってもいい。


ただし、

どこかへ行こうとすると、視線が動く。


止められはしない。

でも、進めない。


しばらくして、一哉が戻ってきた。


表情は変わらない。


「どうだった?」


「説明。

 あと、質問された。」


「何を?」


「困ったとき、誰に相談するか、って。」


俺は答えなかった。


一哉は続ける。


「別に正解はないらしい。

 でも、答え方は見てた。」


評価は、

能力じゃなく、振る舞いで進む。


夕方。


一哉はまた職員に声をかけられる。


「佐藤。これ、明日までにまとめてほしい。」


「はい。」


自然なやり取りだった。


俺のほうには、何も来ない。


待機は、続く。


部屋に戻る。


扉は軽い。

鍵はない。


今日一日で分かったことがある。


自由は、

許可じゃなく、前提として配られる。


俺は、

安全だから止められる。


一哉は、

問題が起きないから任される。


能力を使っていない。

規則も守っている。


それでも、

自由度は同じにならない。


ここでは、

何ができるかより、

どこに置かれているかが先に来る。


配置は、

仕事の内容だけじゃない。


動いていい距離。

話していい相手。

任される重さ。


全部が、最初から決まっている。


ベッドに腰を下ろす。


今日は、何もしていない。


それでも、

差は確実に広がっていた。

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