配置
朝になって、廊下に出た。
白い床。
白い壁。
照明の位置も、足音の響き方も、昨日と変わらない。
何も起きていない。
何も変わっていない。
俺と一哉は、並んで歩いていた。
同じA区画。
同じ服。
同じ時間。
「今日は、一緒の仕事だな。」
一哉が言う。
「ああ。」
それだけで、会話は終わった。
倉庫では、昨日と同じ作業を任された。
棚の整理。番号の確認。
能力の使用は禁止。
俺と一哉は、同じ棚の前に立つ。
職員が来て、俺の横で一度だけ足を止めた。
「白石。ここは、この順で。」
短い指示だった。
言い終わると、職員はすぐに離れていく。
そのあと、別の職員が一哉の前に立った。
「佐藤。少し、いいか。」
声の距離が近い。
視線が、長い。
一哉は頷いて、棚から離れた。
誰も、止めなかった。
作業を続けながら、
棚の向こうを見る。
同じ場所。
同じ仕事。
それでも、
一哉の立っていた場所だけが、空いていた。
倉庫を出るときも、違いは続いた。
資材置き場へ戻ろうとして、
俺は通路の角に足を向ける。
そこで、軽く制止された。
「この先は、今日は使用しません。」
理由は、言われなかった。
一哉は、そのまま通された。
会議室のある方向へ。
一瞬だけ振り返って、手を挙げる。
俺は、返せなかった。
倉庫に戻る。
同じ作業。
同じ空気。
ただ、
進む線だけが違っていた。
作業を終え、部屋に戻る。
扉の前で、職員が言う。
「白石さんは、今日はここまでです。」
それだけだった。
ベッドに腰を下ろして、天井を見る。
同じA区画。
同じ仕事。
同じ空気。
なのに――
俺と一哉は、
同じ場所に置かれていない。
ここは、人を守る場所じゃない。
人を、
配置する場所だ。




