会社の祈願
本日は1月10日です。
土曜日に雨が降った影響で、寒波が降りてきたため、寒い中に人が集まっています。
会社では、毎年商売繁盛を願うために各部から代表して数名の社員でお参りにやってきます。
仕事を早めに終えて、集まったのはほとんどがオジサンでした。営業部や人事部などは、これから飲み会にくり出していくのでしょう。
最近は、飲み会の風習が戻りつつあるので、オジサンたちは楽しそうです。
私の課からは、私と矢場沢さんが参加しました。
社長が前方で笹を持ち上げて、商売繁盛の祈願を受けている後ろで、お祭りの賑わいを感じております。
「阿部さん」
「はい。どうしました?矢場沢さん」
「今日は、これで業務が終わりなので、よかったら一緒に食事をして帰りませんか?」
祈願が終わって社長が解散を口にすれば、私たちは会社に戻ることなく帰宅を許されます。
ほとんどのオジサンたちは、飲みにいく話で盛り上がっており、私も他の課のオジサンから声がかかっていましたが、矢場沢さんの様子に引き下がっていかれました。
「はい。もちろん、いいですよ」
昨年は矢場沢さんに大変お世話になりましたからね。
今年の始まりとして決起集会です。
「明日も仕事なので、軽くですが、どこか行きたいところはありますか?」
「少し変わったところなんですが、いいですか?」
「ほう?それは面白いですね。私は嫌いな物がありませんので、全然大丈夫ですよ」
そう言って矢場沢さんが連れて行ってくれたのは、韓国料理屋さんでした。
店内はオシャレな作りになっていて、コンクリートの壁に年輪が浮かぶ木製のテーブルと椅子が並でいました。
ウッド調の店内は、女性のお客様が多くおられます。
なるほど、オジサンたちは少なく、私では絶対に入れそうにないお店ですね。
「オシャレなお店をご存知なんですね?」
「私も来るのは初めてなんです。でも、前から入ってみたいなぁ〜て思っていて」
カウンター席に2人並んで座ると、笑顔が素敵な女性店主さんがカウンター越しに注文を聞いてくれます。
「飲み物は何にされますか?」
「ビールをお願いします」
「私はハイボールで」
メニューを見ても私はあまり食べたことのない物ばかりでしたので、名前では料理が想像できません。
ここは、矢場沢さんに注文をお願いしました。
「チョレギサラダです。それとキンパとチヂミ、あとスンドゥブとチーズタッカルビは後からお待ちしますね」
最初にやってきたのは、ごま油の香りがするチョレギサラダでした。
更に韓国版の海苔巻きに、韓国版のお好み焼きでしょうか?私は初めて食べる物ばかりでしたが、どれも本当に美味しいです。
明日も仕事なのにビールが進みますね!!!
後から来たのは、辛そうな豆腐スープと、鶏肉の上にチーズを垂らしていました。
食べ応え満点ですね!何よりも、ビールに合って最高に美味しいです。
「ふふ」
「あっ?私、変な顔をしていましたか?」
矢場沢さんが私の顔を見て笑っておられます。
「いえいえ、凄く幸せそうに食べていましたよ」
「お恥ずかしながら、韓国料理がこんなにも美味しいと知らなかったです!!!韓国料理デビュー記念日したいぐらいですよ」
「記念日?ふふ、気に入ってもらえてよかったです。
最近は冷凍食品とかでもチヂミやキンパが売っていますよ。スンドゥブもあるんじゃないかな?」
「そうなんですか?今度、買ってみようと思います」
良いことを教えてもらいました。
締めはスンドゥブスープにご飯を入れて、卵を落とした雑炊を出していただきました。
ビールの締めに雑炊は、お腹が温まって最高でした。
「幸せですね」
「ここの料理ってテイクアウトもできるようですよ。ミズモチさんにどうですか?」
「えっ?そうなんですか?なら、ミズモチさんへお土産に買っていきましょうかね」
私は、矢場沢さんオススメのヤンニョムチキンとキンパを注文してお持ち帰りしました。
ミズモチさんは喜んでくれますかね?矢場沢さんはミズモチさんへも配慮してくれるので嬉しいです。
「ご馳走様でした」
「いえいえ、こちらこそ凄く美味しかったです。決起集会大成功です」
「そうですね。今年も頑張って行きましょう!」
「はい。矢場沢さん、昨年から凄く良くして頂いて、ありがとうございます。今年も色々と甘えてしまいますが、よろしくお願いします」
「私ができることであれば、阿部さんを支えさせてください」
「はは、ありがとうございます。十分に助けて頂いておりますよ。それでは」
矢場沢さんは本当にいい人ですね。
仕事だけでなく、ランチも作ってきて頂いて助かりすぎて申し訳ないぐらいです。
何かお礼をしたいのですが、誕生日とかじゃ無くても女性へ、お礼のプレゼントってしてもいいのですかね?
「ミズモチさん。ただいま帰りましたよ。今日はお土産がありますよ」
《ミズモチさんはプルプルしながら、おかえりと言っています》
「ふふ、ありがとうございます。さぁ準備しますので、晩御飯にしましょう」
私は、ミズモチさんが食べている姿を眺めながら、デザートに買ってきたタピオカミルクティーを飲みます。
流行ったのはすでに数年前なのですが、私タピオカミルクティーも初めて飲みました。
ストローが大きくて、吸い上げるたびに喉に衝撃を受けるのですね。
「ゴホッ!!」
食べ慣れていない、オジサンには辛かったです。




