男同士の会話
オークの廃道から冒険者ギルドへ帰還した私は水野さんに報告を終えて、冒険者ギルドを出ました。
出口には、珍しく高良君が一人でいたので声をかけることにしました
「高良君。珍しいですね。一人ですか?」
「阿部先輩チワッス。はい、今日は一人っす」
いつも三人仲良しなので、一人でいるのは珍しいですね。相変わらず彼なりの礼儀口調なのでしょうが、どうしても軽く感じてしまいますね。
「こんにちは。こんなところでどうしたんですか?」
「今日は二人が外せない用事があるので、俺一人で報告に来たところなんです」
「外せない用事?」
「はい。明日、成人式ですから」
「成人式?」
私はあまりにも古い記憶で忘れておりました。
そう言えば、湊さんに初めて会ったときに19才と言っていた気がします。
確か、現在は18才で成人になるんでしたね。
えっ?成人式って来年…… あっ、確かに年を越していましたね。
「そうなんです。俺たち明日成人式なんで、二人は着物の最終チェックに行ってます」
綺麗に成られたお二人なら、成人式でも注目を集めるのでしょうね。男性も袴を着る子がいますが、高良君は着ないのでしょうか?着そうなタイプなのに……
「高良君は袴などは着ないのですか?」
「う~ん、考えたんですけど、スーツでいいかなって思いました。無駄な金を使いたくないなって、今は貯めてるんです」
「お金を?偉いですね」
「ウスッ!ありがとうございます!!!でも、マジで真剣なんです」
なんでしょうね?一人でいるのが珍しい高良君ですからね。たまにはご飯でも誘ってみましょうか?
「高良君、よければ一緒に夕食でも取りませんか?お一人でヒマだったらですが?」
「おっ!ノミニケーションって奴ですね。俺、若者ですけど大歓迎っす!ゴチになりますっす!」
あれ?私が奢ることになりました。
まぁいいのですけどね。
「何か食べたい者はありますか?」
「う~ん、やっぱり肉っすね」
《ミズモチさんはプルプルしながら、頂きますと言っています》
え~ミズモチさん。ボアを一頭食べてましたよね!!!!最近、食べる量が増えているのかな?
「それでは食べ放題でもいいですか?」
「全然OKっす」
私はスーパーカブさんを引いて、食べ放題の焼き肉屋さんに行くことにしました。
高良君というよりも、ミズモチさんが満足するためには質よりも量ですね。
有名焼き肉店へと入っていきました。
サイドメニューも入れれば100品ほど注文が出来るので、凄くありがたいですね。
私はそれほど食べる量はいりませんが、高良君とミズモチさんが満足してくれると嬉しいです。
「高良君はどうしてお金を貯めようと思ったんですか?」
「……う~ん、阿部先輩ならいいか。俺、サエと本気なんです」
「本気?」
「はいっす。本気で結婚したいと思っているんです。それで、この間プロポーズしてOKもらったっす」
「結婚!!!凄いね!!!」
青春ですね!!!まだ若いと思っていましたので、全然想像もしていませんでした。
高良君と鴻上さんが付き合っていることは、湊さんに聞いていましたが……結婚とは……
高良君、男ですね。
今まで高良君のことを危ないイケイケ少年だと思っていました。彼も社会人として、大人になるための成長をしているんですね。
「だから、今はあんまり金を使わないで、コツコツ稼ごうと思っています」
「高良君は、偉いですね」
「そうでもないです。阿部先輩に、二度も命を救ってもらって、シズカに説教されて…… やっと俺わかったんです」
焼き上がったお肉を冷まして、ミズモチさんに差し出すと、一瞬で消化されていきます。
《ミズモチさんはプルプルしながら、ありがとうと言っています》
「冒険者は危ない仕事です。そんな危ないことをサエにもさせています。
いつかはサエには家庭に入ってもらって、安全なところで待っていてほしいんです。
それに、シズカは学校を卒業したら冒険者と兼業はできません。もしもサエに子供が出来れば、俺は一人で冒険者をしないといけないから。
だからちゃんとギルドに入らないとダメなんです。
今は、準備期間を作ってくれてるシズカのためにも、強くなる必要があるんだって思うんです」
男子、三日会わざれば刮目して見よ。
そんなことわざが、私の脳裏に浮かんできますね。
彼は彼で確実に成長を遂げているのですね。
「高良君はちゃんと大人に成る準備をしているんですね」
「まだ、実感はないんですけどね。始めたばかりです」
「それでも十分に凄いと思います。
結局、習慣というものは、最初の一歩を継続していくものですからね。
大人になれば、様々なルールを守らなければいけなくなります。知らないだけで損をしてしまうこともたくさんあります。協力出来ることはなんでもしますよ」
若者の応援できる喜びってなんだか、こちらまで嬉しくなりますね。
「ありがとうございます!!!阿部先輩みたいにカッケエエ大人になれるように頑張るっす」
私は過ぎ去ってしまった青春です。
ですが、今はミズモチさんが来てくれて幸せを感じております。人の幸せって、その人の数だけあるものですね。
私に出来ることがあればなんでもお手伝いしようと誓いました。




