四国旅行 6
徳島駅に辿り着いた頃には、夕方になっていました。
私たちは予約していたホテルへ向かいます。
徳島は見に行きたい観光スポットがたくさんあります。
阿波踊りに、鳴門の大渦など、ゆっくりできればいいのですが、四国はどこに行っても観光地が多くて、徳島にたどり着くまでに結構な時間を使ってしまいました。
四国は何度でもきたくなる土地ですね。
ザ・グランドパレス徳島というホテルに到着しました。
建物の造りは豪華で、とても綺麗なホテルのお部屋をお借りしました。
「豪華ですね。ええ。今までも風情があったり、素敵なお部屋ばかりです」
「そうですね。カオリさんがとってくれているお部屋はいつもセンスがいいですね」
「ふふ、ありがとうございます」
ホテルのレストランで食事をいただいて、本日はホテルでのんびりと過ごします。テレビのニュースを見る機会も少なくなっています。
徳島の情報番組がやっていて、今年も残り一ヶ月半だと告げていました。
年末年始に入っているとは思えないほど、昨年との違う生活に戸惑いから慣れてきている自分がいますね。
「年末年始には、大阪に戻りたいと思っていますが、良いでしょうか?」
「はい。その前に一度東京の家も見ておきたいですね」
「ええ、四国が終わったら一旦東京に戻って、京都の酒呑童子ダンジョンですね」
酒呑童子は、丹波国と丹後国の境にある大江山、または山城国と丹波国の境にある大枝共に京都府内に住んでいたと伝わる鬼の頭領だそうです。
白鬼乙女さんは神様のような存在ですが、酒呑童子は鬼の頭領のような存在なのですね。
「年末にはご近所ダンジョンにたどり着けると良いのですが」
「そうですね。ですが、鬼の頭領ということは強いってことなので油断しないでくださいね」
「はい。黒鬼ダンジョンも黄鬼ダンジョンもかなり苦戦しましたからね。油断は絶対にしません」
できれば、徳島のダンジョンを攻略してもう一つぐらいはレベルを上げたいと思っていますが、いいところがあるといいですね。
「カオリさん、できれば徳島では観光もしたいのですが、少し高ランクのダンジョンに挑戦したいんですけど、いいところはないですか?」
「少し調べてみますね」
カオリさんはパソコンを取り出して、冒険者ギルドのサイトを開いた。
私はあまり操作の方法はわかりませんが、最近はスマホとパソコンでなんでも調べられてしまうのですね。
「大塚国際美術館というところがAランク認定をされているダンジョンになっていますね」
「大塚国際美術館? 数年前に紅白歌合戦で歌手の方が歌われていましたよね?」
「そうですね。聖地巡礼になっているそうです。ただ、昨年からダンジョンと認定されて閉鎖されてしまったようです」
「それはすぐにでも解放したいですね」
私はあまり音楽を聴く時間も取れていませんでした。
そんな私でも有名な曲というのは、ふとした瞬間に聴くことがあります。
その一つに紅白歌合戦は私にとって会社から解放されて、ゆっくりできる時間の中で唯一音楽を聴くタイミングでした。
癒しをいただいた方の大切な場所ですからね。解放しなければいけません。
「いつになくやる気に満ちていますね」
「はい! 感動をくれた人ですから」
あれはまだ私が社畜で、人生に絶望している時でした。
地元で歌う歌手ということで、徳島の美術館をお借りして歌われている姿に
目頭が熱くなったものです。
多くの人が成功して、様々な出来事を成功させます。
その一つの事象として、疲れた私の心を癒してくれた一件だったのです。
「ヒデオさんに好きなアーティストさんがいたことを知りませんでした」
「昔はたくさんいましたよ。アニメやドラマ、ゲームのサウンドをされている人たちはたくさん好きでした」
「そうなんですね」
「ええ、音楽もゲームと同じで離れてしまうと、昔の曲は聞いても最近の曲には耳を傾けなくなってしまうんですよね」
「あっ、それはわかるかもしれません。学生時代の音楽は覚えているんですけど、最近の歌手と聞かれるとわからないかもしれません」
そうなんですよね。
そうなるとついつい昔は良かったと思ったちゃうんです。
ですが、ふとした時に聞いた最近の曲は、凄いなぁ〜と感動しました。
そして、歌詞を見て感動するという二度の感動をもらえたことに気づきました。
「ささいなことだとは思うのですが、自分が気づいた知らないことを知るってことが嬉しいと思ってしまうんです」
「それってありますよね。私もコンビニで見つけた新しいスイーツが自分の大好きな味だって気づいた時、すごく幸せを感じるんです」
「ありますね。逆に、好きだった缶コーヒーが廃止になった時は愕然としました」
少しの幸せと、少しの不幸せ、そんなことを繰り返して時は過ぎていくのでしょうね。
「ですが、そういう経験を積んでいくことで、自分という人間が大人になって成熟していくのかもしれません」
「ふふ、なんだか急に詩人ですね」
「そうですか? ふと、大塚国際美術館という普段は行かない場所が話題に出たからかもしれません。明日は、大塚美術館でAクラスの魔物を倒して解放して見せます」
「はい! ただ、油断はしないこと! そして明日だけでは無理な時は時間をかけてください。私たちには時間がありますから」
「わかりました!」
「ヴュ〜!」
私が気持ちを昂らせていると、カオリさんが諌めてくれて、ミズモチさんが和ませてくれます。
私はまだまだ自分一人では大人になりきれていませんね。




