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命の恩人

【Side湊静香】


 阿部さんと仲良くなったことで、いつか一緒に冒険したい。そう思うようになった私は阿部さんにお願いすることにしました。


「臨時でいいので、うちのパーティーと行動を共にしてくれませんか?」


 私の言葉に阿部さんは困ったような顔をしていました。

 考えた末に同行者ということで引き受けてくれました。

 冒険を始める前にユウ君がバカなことを言って気分を悪くさせてしまったので、気分を悪くしていないか不安になりましたが、午前中は阿部さんの活躍でいつも以上にゴブリンを倒すことが出来ました。


 サエちゃんも阿部さんに話しかけて、雰囲気も良くなり一緒に冒険したのは成功だと思えてきた矢先。ユウ君が、三人でやらなくちゃダメと言って阿部さんもそれに賛同しました。

 そんなこと言わなかったら!ずっと阿部さんがパーティーに参加してくれたかもしれないのにユウ君のバカ。


 三人でゴブリンを倒していると、阿部さんの偉大さが分りました。

 ゴブリンが居る場所が事前に分かるって、気持ちが凄く楽なんです。

 身構える時間があって、戦う覚悟ができます。

 それなのにユウ君のせいで、緊張の連続で余計に疲れました。


 私のステータスは


 名前 ミナト・シズカ

 年齢 19歳

 討伐数 31

 レベル 2

 マジックポイント 2/30

 職業 プリースト

 能力 

 ・回復魔法(極小)


 レベル2になったときに人体強化を取りました。

 最初の頃よりも戦うときに力と体力は強くなった気はします。マジックポイントも増えました。


 それでもやっぱり戦闘は緊張するし、恐いので疲れます。


 もう疲れたので帰りたい。そう思っていると阿部さんが言ってくれました


「そうですね。皆さんも冒険者として学びながら強くなって行くんだと思います。よい時間になりましたし、本日はもういいんじゃないですか?」


 やっぱり阿部さんは大人の男性です。ユウ君とは大違いです。私たちのことをよく見てくれています。

 それなのに、ユウ君がまたも否定して、まだ戦うって……ハァ~本当にしんどい。

 ほったらかしにしてサエちゃんが死ぬのもイヤ。


 そんなユウ君を阿部さんが叱ってくれました。

 ユウ君は納得していませんでしたが、それでも帰ると口にしてくれたのでよかったです。

 やっぱり阿部さんに来てもらってよかった。


 やっと帰れる……そう思っていたのに……


「GYAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!」


 地面が揺れるほどの魔物の叫び声。

 誰よりも早く阿部さんは私たちを助けるために動いてくれました。

 サエちゃんと私の手を引いて走り出しました。


 だけど、ユウ君が足をもつれさせて転倒しました。


 こんなときにも足を引っ張るユウ君に私も我慢の限界です。それでもサエちゃんが戻ろうとして、阿部さんに腕を掴まれました。


「危ない!」


 阿部さんが居なければ、私たちは、もう何度死んでいたかわかりません。


 本当の絶望が突然現われました。

 巨大なゴブリンについて、初心者講習で聞いていた魔物の名はホブゴブリンです。

 レベル10以上の強さがあり、初心者が出会ってしまうと死ぬ確率が高い魔物。


 目の前に降りたって、私は恐怖で身動きが取れなくなりました。阿部さんが逃げるように言ってくれても動くことができません。


 そんな私たちを見た阿部さんは、ミズモチさんと一緒に戦い始めました。


 阿部さんの攻撃が効いているようには見えません。

 だけど、阿部さんは諦めることなく、ホブゴブリンを引きつけて、私たちから引き離そうとしてくれていました。


 だけど、ホブゴブリンは知能が普通のゴブリンよりも高いので、阿部さんを厄介な相手だと判断して、こちらへ跳躍してきました。


 降り立つ位置にいたユウ君を標的にしました。


 もしもユウ君が殺されたら……私は恐怖で身体が動かなくて……その時……大きな背中が私を隠してくれました。


 ミズモチさんが飛んできて、ユウ君を守ってくれて、阿部さんが私たちの前に立って戦ってくれています。

 あの初めてあったときのように、私のヒーローは強く勇敢に戦っていました。


 ああ、あの背中に頼りたい。着いていきたい。


 ミズモチさんと阿部さんはレベルが上のホブゴブリンを二人で倒してしまいました。


 緊張と恐怖、そして阿部さんへの感謝で、私は阿部さんに抱きついて泣いてしまいました。

 そのあとも阿部さんは、大人な対応で優しく頭を撫でてくれて、私たちを応援すると言って、ホブゴブリンの魔石を譲ってくれたのです。


 どこまでカッコイイんですか?私……初めて……


「ちょっといいかい新人さん方」


 そういって私たちに話しかけてきたのは二人のおじさんでした。


「はい?」

「冒険者ギルドの依頼でな。俺たちはB級冒険者なんだが、あっしはチョウって言うんだ。こっちがゲンさんだ。最近、ゴブリンの住処で行方不明者が出ていてな」


 トレンチコートを着たオジさんの言葉を聞いて、私は納得しました。

 あのホブゴブリンによって、新人たちは殺されていたんだ。


 私は阿部さんの勇姿を語らなければなりません。


 あの優しくて素敵なオジ様が、如何に格好良かったのか!!!ユウ君もサエちゃんも同じ気持ちだったようです。阿部さんへの感謝と、勇姿を三人で語りました。


「……そうか。それは悪いことをしたな。無事に帰ってきてくれて本当にオメエらは運がよかったな」


 長さんは怖い顔をしたオジサンでしたが、私たちを心配して笑顔でそういってくれました。一緒にいた作業着を着た元さんと共に冒険者ギルドまで送ってくれました。


 ホブゴブリンの魔石は、事件解決の報酬も上乗せされて、250万になりました。


 このお金は阿部さんがくれたものです。

 少しだけみんなの装備を整えて、残ったお金でお礼をしよう。

 きっとお金は受け取ってもらえないから何か阿部さんに送ろう。


 二人も一緒にお礼をすると言ってくれました。

 お金の使い方を三人で相談して、前よりも二人は冒険者として成長している気がして、阿部さんにまた一緒に冒険に来てほしいと思ってしまいます。

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― 新着の感想 ―
元々の話では、主人公が倒した敵が落としたものは主人公がもらうという話だったのに、なぜ魔石をあげちゃったんでしょう? そして魔石を持ってきたのは3人組でも倒したのは主人公なのだから討伐報酬は主人公がもら…
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