帰ってきません
冒険者の仕事として、マンティスダンジョンに行く日々の合間に東郷道場に通う流れが現在の私の生活リズムです。
一週間ほどマンティスダンジョンに通って魔石を販売するだけで、稼ぎは会社勤めの三ヶ月分を稼げてしまいました。
剣術の訓練にもなって、最近はミズモチさんの魔力供給としても十分に役立ってくれています。
危険ではあるのですが、効率が良いと感じてしまいます。
たくさん稼がなくても良いので、目標は剣術を鍛えてご近所ダンジョンに挑戦することです。
また、一つの目安として、一週間で60万ぐらい稼げるのは嬉しいです。
目に見えた成果が出たような気がするからです。
「ミズモチさん。今日もご苦労様でした」
「ヒデヴュ〜!」
冒険者ギルドで魔石を追えて家へと帰宅します。
最近は十月にカオリさんが会社を辞めて結婚する話をよくしています。
もう九月も半ばになり、連休もありますので、カオリさんと式場の下見に行く予定も立てました。ドレスなども試着する予約も入れています。
カオリさんが着たウエディングドレスは綺麗でしょうね。
ついつい、そんなことを考えるとニヤニヤとしてしまう日々です。
ふと、カオリさんが帰ってくる時間が近づいてきたので、カオリさんの顔が早くみたいと思ったので駅まで迎えに行くことにしました。
あの日以降は、カオリさんのお母さんを名乗っていた方は姿を見なくなりました。私と接触して諦めてくれたら嬉しいのですが。
私はミズモチさんと、駅までの道のりを歩きながら、カオリさんとの未来に想いを馳せて結婚式のことを思い浮かべます。
カオリさんが降りてくる電車が到着しました。
いつも決まった時間の決まった電車で帰ってこられるので、カオリさんが降りてくるのを楽しみにしていたのですが、降りてきません。
驚かそうと思っていたので、メッセージも送りませんでした。
もしかしたら、買い物をして帰るので遅くなるのでしょうか?
「遅いですねぇ〜。買い物でしょうか?」
「ヒデヴュ〜!」
ミズモチさんとのんびり駅のベンチ座りながら、メッセージを確認しましたが、何もきていません。
いつもなら遅くなる時は連絡があるのですが、メッセージを送った方がいいでしょうか?
それから一時間待っても、二時間待ってもカオリさんが帰ってきません。
もしかしたら、私が気づいていなくてカオリさんは帰ってしまったのかもしれないと思い、家にも帰りました。
ですが、カオリさんは帰っていませんでした。
メッセージを送ってみましたが、既読もつきません。
なんだか、だんだん不安になってきて、電話をかけてみます。
ですが、留守番電話になってしまって繋がりません。
「三島さんに電話してみましょうか?」
私は三島さんへ電話をかけました。
カオリさんが会社を出たのか、聞こうと思ったのです。
「あら〜阿部君? 久しぶりね。どうしたの?」
「お疲れ様です。三島さん。ちょっとお聞きしたいのですが、矢場沢さんは会社を出られましたか?」
「えっ? いつも通り定時で帰ったわよ。もうすぐ退職するから、最近は残ることもないからね」
「ありがとうございます」
「何かあったの?」
「いえ、大丈夫です。すみません」
私は三島さんにお礼を伝えて電話を切りました。
やはりカオリさんは、会社を出ていました。
「他にカオリさんの繋がりで知っているのは、お義父さんか、ユウリさんぐらいです」
私はカオリさんが心配だったので、二人に連絡を取りました。
ですが、ユウリさんは知らないと言われ。
お父さんとは連絡がつきませんでした。
「これはどうすればいいのでしょうか? ただ、カオリさんが無事に帰ってきてくれるのを待っているだけでは落ち着きません。ですが、こういう時は何をすればいいのかわかりませんね」
私はソワソワとして悩んだ末に、こういうことで頼りになる人に電話をかけました。
「やぁ、阿部君。君から電話とはどうしたんだい?」
いつもながら渋い声をされている長さんが、私の電話にすぐに出てくれました。
「実は……」
私は最近の状況と、カオリさんの話をしました。
結婚に向けて、二人で話し合っていたこと。
彼女の両親が色々と問題を抱えているなどの事情を話して、彼女が帰ってこないので不安であると伝えました。
もしかしたら、私へのサプライズなどを考えてくれているのかもしれません。
「なるほど、人探しは厄介だね。私は最悪を想定して考えを伝えることにするよ。まずは、スマホの連携はしているかい?」
「えっ? 連携ですか?」
「ああ、パソコンやパッドなどと連携していると、スマホの位置情報がわかるんだ」
私は言われるがままに、カオリさんがいつも使っているパットを開きました。
その位置情報アプリを開き、連結を確認すると、確かにパットの画面にカオリさんのスマホがある位置情報が出てきました。
「あっ、ありがとうございます! 位置がわかりました」
「うむ。それで? どこにおられるのだ?」
「えっ? そうですね? ここはどこでしょうか?」
特徴のないお家の中にカオリさんはおられるようです。
二駅ほど隣の駅で、近くではありました。
「うむ。何かあってはいけないからね。私も同行しよう。その駅で待ち合わせだ」
「そんな悪いです!」
「まぁ、興味本位のようなものだよ。気にしないでくれ」
長さんの優しさに甘えて一緒に同行してもらうことになりました。




