剣術指南 5
私はカオリさんのお母さんにお会いして、感情が落ち着くことがなく。
そのまま東郷師匠の道場へ向かいました。
八千代さんには行っても大丈夫ですかとお伺いをたてました。
八千代さんからは、すぐに返信が来て大丈夫だと返事をいただきました。
私は30分ほどでお伺いして道場へ向かいました。
メッセージに道場へどうぞと書かれていたからです。
道場に入ると、平三郎師匠が待っておられました。
「急に申し訳ありません」
「構わんよ。むしろ、阿部くんが熱心に剣術に取り組んでくれることがワシは嬉しいと思っておる」
にこやかに迎えてくれる平三郎さんに、私は正座して一礼しました。
平三郎師匠も私と向き合うように正座で座ってくれます。
「実は、スキルを得ることができました」
「ほう、スキルですか? 剣術ということですかな?」
「はい。私は武術は素人なので、杖術の時もスキルを覚えてから体の使い方を理解しました。実際、剣術を使っている際に斬り難いと思う斬り方が存在しました」
私の言葉を平三郎師匠は静かに聞いてくれました。
剣術をされている方なので、スキルなど邪道だと怒られてしまうかもしれません。それに斬り方も変な癖があるから正しい斬り方ができていないことがダメだと言われるかもしれません。
「うむ。ならば一度見せてもらえるだろうか?」
「よろしくお願いします」
「うむ。始め!」
「はっ!」
私は立ち上がって木刀を持ち、平三郎師匠を正面に見据えて、アクティブスキルを発動します。
・真向斬り
・袈裟斬り
・一文字斬り
・逆袈裟斬り
・左袈裟斬り
・左一文字斬り
・左逆袈裟斬り
・突き
一つ一つ、平三郎師匠が見せてくれた時のようにゆっくりと披露していく。
八つの全てを披露して、木刀を納刀させました。
「うむ。確かに基礎の型は全てできておる」
「そうですか?」
「ああ。間違いない。ただ、剣術を極めたという意味では、できてはいない」
「やはりですか」
「勘違いしないでほしい。剣術はあくまで人を相手にして戦う場合に使うものであり、基礎的な型を覚えてもらったのも、刀で斬るということに慣れてもらうためじゃ」
私がガッカリしていると、平三郎師匠がフォローしてくれました。
「それにのぅ、本来の門下生であれば週に何度か通わせて修行するところじゃが、阿部君はすでに杖術を極めた強者じゃ。それを強引に剣術に移行することは難しい。すでに一つを極めた者には癖がついておるからな。その上で基本を学んでもらって癖を少しでも取り除けたらと思っておった」
柳流免許皆伝であることは伝えていたので、平三郎師匠なりに色々と考えてくれていたのですね。
「じゃが、さすが冒険者じゃな。君は君の方法で剣術を知り、剣術を身につけた。極めるとは違うかもしれない。だが、君は剣術を身につけたのだ」
平三郎師匠の言葉に私は何かを手にしたという思いと、何か大切な時間を失ったように思います。
千日の訓練を終えた後にある極めるという時間を私は失いました。
それはズルをしたような感覚で、自分は他の方に申し訳ないと思っていたのです。
「一手、真向斬りを私に向かって放ってみなさい。もちろん、スキルを使って」
言われるがままに、私は剣を振り上げました。
平三郎師匠も同時に剣を振り上げました。
「行きます」
私はスキルを使って真向斬りを発動します。
「なっ!」
同時に振り下ろされた真向斬り。
ですが、平三郎師匠の木刀は雷のような形を描くように振り下ろされた。
それは私の真向斬りを放った木刀を粉砕する威力を秘めた威力を発揮しました。
「君ができたのは、剣の基礎だ。それが短縮できたとしても剣の道は長い。型がいくら綺麗にできたとしても、実際の魔物を相手に戦う際に、型など意味を持たない。私は剣術に身を捧げ、魔物と戦い。魔物に私の剣術は通じないために怪我を負って引退を余儀なくされた」
そう言って袴を捲り上げた平三郎師匠の片足は義足でした。
「だから、私は考えたのだ。魔物と戦う冒険者に綺麗な型など要らぬ。いるのは理解と知識。そして、生き抜く力じゃ。人のように嫌らしく隙をつく戦い方に対抗するんじゃない。どんな動きをする相手も対応できなければ意味がない」
平三郎師匠は下段に剣を構える。
「阿部君。君が得意な杖を持ちなさい」
私は白金さんをミズモチさんに出していただきました。
「どんな技でも構わない。攻撃をしてきなさい」
「よろしいのですか?」
「構わない。私の時間は短い。体が思うように動けるうちに、一つでも多く君に見せたいんだ。私の技を一つずつ」
平三郎師匠の想いに応える必要があるように思えました。
先ほどの雷。
次は何を見せてくれるのか?
「刺突!」
「円」
私が一番多く使ってきた技を繰り出しました。
それは私にとって一番得意な技でもあります。
ですが、私の刺突は、ふわりと柔らかな何かに巻き取られるように受け流されて私の首元から木刀を撃ち込まれました。
「ガハッ!」
平三郎師匠が初めて私を打ちました。
意識が飛びそうになるほどの痛みです。
「すまん。君の鋭い攻撃に止められんかった」
私が首を抑えて転がっていると、平三郎師匠に謝ってもらいました。




