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 ふぅ~なんとかなりましたね。

 私とミズモチさんの二人でどうにかデカゴブリンを倒すことが出来ました。

 ホッと息を吐いて腰を下ろしてしまう。

 ハァ~下ろしたと言うよりは、腰が抜けたと言った方がいいでしょうね。


 本当に、足に力が入りませんね


 ふと、私の横に影がやってきました。


「あっ、ありがとうございました!!!」


 盛大に腰を曲げた高良君が涙目で私に礼を告げました。


「ふぇ?」


 気の抜けた返事をしてしまいました。

 もっと格好良く決めたかったのですが、なにぶん私も恐かったのです。


「おっ、俺、恐くて本当に死ぬって思って……そしたら、スライムが飛んできて、次におっさ……いえ、阿部さんが来てくれて、ホブゴブリンと戦ってくれて……今まで失礼なこと言ってすみませんでした!!!」


 色々な思いがあるようですが、どうやら高良君に認めてもらえたようでよかったです。


「阿部さん!」


 今度は反対側から、湊さんが抱きついてきました。

 あのオジサン……女性に抱きしめられたの初めてなので恐さとは別の緊張で硬くなってしまいます。


 どうすればいいのでしょうか?高良君と違って湊さんは本当に泣いています。


「私、私恐かったです!本当にどうにもならないって恐くて、もしも阿部さんが一緒に来てくれていなかったら、私たち三人とも殺されていました」


 湊さんの恐怖は私にもわかります。

 もしもミズモチさんが居なければ、あんな化け物と戦うことはできなかったでしょう。


 おや、レベルアップしたようですね。もう何が何やら混乱です。


「皆さんが無事でよかったです」

「阿部さん。私からもありがとうございます」


 鴻上さんは高良君に抱きついて、生還の喜びを噛みしめていました。


 私へ向けて礼を言ってくれるのは嬉しいのですが、足腰立たないので肩を借りなければ立ち上がることもできません。情けないオジサンですいません。


「とにかく、今はこの場を離れましょう」


 ここでゴブリンに襲われれば、本当にミズモチさん以外に戦力がない状態です。


「「「はい!!!」」」


 三人は素直に私の言葉に従ってくれました。


 高良君と湊さんの肩を借りて下山したのは情けないですが、こればかりは甘えるしかありません。

 警戒をミズモチさんにお願いして、荷物を鴻上さんが持ってくれました。


 コンビニまで戻ってきたところで、改めて一息つきます。


「皆さんありがとうございます。なんとか誰一人欠けることなく帰還できて本当によかったです」


 私が声をかけると三人とも座り込みました。


 そして、三人は顔を見合わせて私を見ました。


「改めて、「「「ありがとうございました!!!」」」


 三人が声を揃えてお礼を言ってくれました。


「あっいえいえ、全然大丈夫ですよ」

「俺、いっぱい失礼なこと言ってすみませんでした!阿部さん。いや、阿部先輩!」

「えっ?先輩!」

「はい。俺、ずっとサッカー部で、年上の人は監督とかコーチ以外はみんな先輩って呼んでて、だから阿部先輩のことも先輩って呼ばせてください。マジで尊敬してます。リスペクトです!」

「そっ、そうですか」


 高良君、態度が変わりすぎでオジサンはついていけません。まぁ、とても素直な子だということはわかりました。


「ユウ君も阿部さんを見習ってよ」

「おう!俺、先輩みたいなカッコいい冒険者になるよ」


 私がカッコいい?物凄く当てはらまない気がしますが……まぁ、危険から脱出できて興奮しているのでしょうね。どうやら私の足も回復してきたようです。


「さて、今回は無事に帰ることができそうです。皆さんも気を付けて帰ってくださいね」


 私は鴻上さんからリュックを受け取り、魔石を彼らに渡しました。


「阿部さんこれは!」


 デカゴブリンから取れた魔石を湊さんに渡します。


「今回、私は同行者です。冒険で手に入れたドロップは、それぞれの自由にして良いという取り決めでしたね」

「それはそうですが」

「私は社会人として、安定した収入を得ています。ですが、皆さんは冒険者として、これを本業にしていますよね?稼げるときに稼がなくてはいけません。今回の出来事が君たちに危機管理能力の向上と、次の冒険の糧になってくれることを心から応援しています」


 私は説明を終えると、三人に魔石を全て渡して、リュックにミズモチさんに入っていただきました。


「「「ありがとうございました!!!」」」


 三人は立ち去る私に改めて頭を下げてくれました。


 若者たちを導くって気持ちが良いものですね。


 湊さんは信用できる女の子です。


 鴻上さんは自信が無いからこそ外面は強気な態度を取るタイプでした。

 内面には優しさと自分の意志があり、気を使える女の子でした。


 高良君は……まぁこれからに期待ですね。今回の、命の危機が彼を成長させてくれることを祈るばかりです。


 スーパーカブに乗り込んだ私はミズモチさんにお願いをします。


「ミズモチさん。今日は疲れたので手抜きご飯でもいいですか?某No1チキン店のチキンが大量に食べたい気分なんです。寒くなるとCMがメチャクチャ流れるので気になるんですよね」


《ミズモチさんはプルプルしながら、あなたへ話しかけています》


「ふふ、ミズモチさんもたくさん食べたいですか?ええ、今日は生還記念です。大量に食べましょう」


 本日は疲れたので水野さんの報告は明日にしましょう。


 それくらいは許してもらえますよね。



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