ホームセンター
気づいていませんでしたが、冊子に冒険者カードが挟まっていました。
裏面にはミズモチさんの登録証としての役目もあるみたいです。
もう少しだけ説明をしてくださるとありがたかったですね。
冒険者にならないので冊子はいらないかと思って、危うくゴミ箱に捨ててしまうところでしたよ。
一先ず家に持ち帰ることにしましたが……受付さんに次に会うことがあったら言ってあげましょう。
「それでは次はホームセンターですね。ミズモチさんのお家を買って、最後はスーパーで食品の購入ですよ」
リュックの中にいるのに、なぜだかミズモチさんが喜んでいるのが伝わってきます。
これが気持ちが通い合うということなのでしょうか?ハァ~両親がいる実家が恋しくなりますね。
最近、流行病のせいでなかなか実家にも帰れていません。
人と話をして気持ちを通わす喜びを思い出してしまいました。
ダンジョンが発見されて、皆さんの気持ちも活性化していますからね。
病も経済も、良い環境になってくれればいいのですが……
「さて、ミズモチさんのお家は何がいいのでしょうか?」
ホームセンターについたので、そっとリュックの中を覗くと、タオルに包まって可愛く寝ておられます。
もう、このリュックをミズモチさんのお家にしてもいいのではないかと思ってしまうほどです。
お魚さんの水槽や、犬猫用のフカフカベッドも見たのですが、どうにもミズモチさんが気に入っているようには感じません。
ふと……目にとまったのはダンボールでした。
ミズモチさんを拾ったとき、ダンボールの中にいました。
それに実家で飼っている猫ちゃんはダンボールに入るのが好きでしたね。
試しに少し小さめのダンボールをミズモチさんに近づけると、リュックから出てダンボールの中へ入ろうとしました。
「おやっ?!ミズモチさん。これがいいのですか?よしよし。それではこれを買って帰りましょう」
私はダンボールを購入して、気分上々でスーパーカブに乗り込みました。
続いてはスーパーです。
今日は大判振る舞いすることに決めましたよ。
ミズモチさんが何を好きなのか分かりませんからね。
野菜、お肉、お魚、発酵食品、缶詰、パンや冷凍食品まで、多種多様に買ってしまいました。冷蔵庫がいっぱいになるのは久しぶりです。
家に帰ってきた私はダンボールを隅っこにおいてみました。
狭いところが好きだと書いていたので隅っこの方がいいかと判断しました。
包んでいたタオルと共に、ミズモチさんをダンボールの中へと置いてあげます。
「ミズモチさんのベッドですよ。いかがですか?」
プルプルと震えるミズモチさんは喜んでいます。
「ふふ、気に入ってくださったようですね。本日は食材もたくさん買ってきましたので、いっぱい食べられるように鍋にしましょう。
一人ではなかなか鍋をする機会もありませんでしたが、実は私、鍋が好きなのです」
ポン酢と胡麻ダレ、どっちも買ってきましたよ。
思う存分使ってやるのです。
ミズモチさんはどっち派でしょうか?
私はポン酢派なのですが、肉はポン酢、野菜はたまに胡麻ダレ派です。
それと辛みも好きなので一味を多少入れるのも好きです。
「今日は寄せ鍋の出汁を買ってきましたからね」
野菜と魚を切って、鍋に入れて出汁をぶち込んで完成です。
大きな鍋にたくさんの食材……ハァ~良い匂いがしますね。
お椀にボン酢と胡麻タレを用意して、味変用の一味もスタンバイOKです。
「ミズモチさん。お鍋ができましたよ」
ミズモチさんが横に来てくれたので、お野菜をミズモチさんに差し出します。
熱くないのかな?しっかりと溶かしていくので大丈夫でしょうか?食事中に触ったら怒りますか?ちょっとだけです。
私はミズモチさんに触れました。
熱っ!ミズモチさん熱かったんですね。
すいません。
ちゃんと冷まして渡しますね。
「ミズモチさん水です。どうぞ飲んでください」
ミズモチさんから何やら満足そうな気持ちが伝わってきます。
どうやら熱かったようですが、美味しかったようです。よかった。
その後も、ミズモチさんに冷ましたお野菜やお魚をお皿に乗せてあげると、すぐに食べてくれました。一緒に食べる鍋はあっという間になくなってしまいました。
「はぁ~久しぶりのお鍋は最高ですね」
プルプルと震えて喜びを表現してくれるミズモチさんにほっこりしますね。
「そうだ。昨日は遅かったので入れませんでしたが、今日は一緒にお風呂に入りましょう」
私もビールを飲んでテンションが上がってしまいました。
お風呂を沸かして、ミズモチさんとダイビングです。
ミズモチさんに石鹸を使うのはダメな気がして、シャワーで身体を洗い流してあげるだけです。
その後は、お風呂でミズモチさんがプカプカ浮いています。
熱かったのでしょうか?一緒に入っていると、お風呂の水を飲み干してしまいました。
「うわ~ミズモチさん随分と大きくなられましたね」
テレビのニュースなどで見かける程度まで大きくなったミズモチさんは、人をダメにしそうなクッションほど大きくなりました。
「ミズモチさん。お願いがあるのですが、今日は一緒に寝ませんか?」
プルプルと喜んでくれています。
私はお風呂を上がって、ミズモチさんの身体についた水滴を拭き取り、一緒に布団に入りました。
明日から仕事は嫌ですが、ミズモチさんがいるから頑張れそうです。
私が寝返るをするたびにミズモチさんの弾力ある身体が跳ね返してくれるので、なんだか心地よい眠りが出来ました。