久しぶりの梅田は綺麗ですね
八時間といっても、ほとんどが寝ていましたので、あっという間に大阪に着いてしまいました。
降り口を出るとヨドバシカメラさんが建っており、久しぶりにやってきた大阪駅は早朝ということもあり、静かな空気が流れています。
「カオリさんは大阪に来たことはありますか?」
「いえ、実は初めてなんです」
「ミズモチさんは二度目ですね」
「ヴュ〜」
大阪駅から地下鉄に乗って、私鉄に乗り換えです。
前回は京都駅からやって来たましたが、今回は大阪駅からなので行き方も前回とは全然違いますね。
「休みに入っているので、人が少ないですね」
通勤ラッシュの時間ですが、それほど人を見かけません」
私鉄の特急に乗ると、すぐに実家がある枚方駅に到着しました。
ここから少し歩かなければいけないのです。
枚方駅を降りると相変わらずの冒険者ギルドの看板があります。
「ここがヒデオさんの実家がある場所なんですね」
「はい。私が生まれ育った街です」
「ご両親に会っても大丈夫でしょうか?」
「一応、両親には結婚したい人を連れて帰ると伝えているので大丈夫だと思いますよ。両親もいい歳なので、見た目はお爺ちゃんとお婆ちゃんですけどね」
そんな話をしながら実家の前につきました。
チャイムを鳴らすと母が出てきてくれました。
いつも通りの格好ではなく、少しだけお化粧をしてまともな服を着ています。
「母さん。ただいま帰りました」
「おかえり。ヒデオ。それに、そっちが結婚したい言うて連絡くれた人かぁ〜」
「はっはい! 矢場沢薫と申します! ヒデオさんとは、会社が同じでいつもお世話になっております!」
「そない緊張せんでええよ。こんな田舎までようこそおいでくださいました。上がってあがって」
母さんに手を引かれてカオリさんが家へと招き入れられます。
リビングに入ると、父さんも座っていて。
「ヤバっ! べっぴんさん過ぎるやろ! これが都会の女かいな! ヒデオ、いったいいくら積んだんや?!」
父さん、それは私だけでなくカオリさんにも失礼ですよ。
「一生分です!」
「はぁ〜それは偉いごっついな。それは一生大事にせなあかんな」
「はい! 一生大事にします」
「うむ」
「ヒデオさん!」
「改めて、お父さん。お母さん。私は矢場沢薫さんと結婚したいと思います」
「ええんちゃう」
「やっとやな」
拍子抜けするぐらい、うちの両親は軽かったです。
「こないにべっぴんさんを逃したら、ヒデオに結婚なんて一生できへんやろしな」
「そらそうやわ。カオリさん以外に付き合ったことないんやもん」
私のことをいじり倒す両親に、顔が熱くなってきます。
「そや、ミズモチさんは元気か?」
「はい。ミズモチさん」
私が呼びかけるとミズモチさんが、私の胸ポケットから飛び出しました。
「うわっ! なんか紫なっとるやん!」
「ホンマやね。前は涼しげやったけど、今度は美味しそうな見た目やわ。グミみたいやね」
騒がしい両親のおかげでカオリさんも笑顔でいてくれます。
「それで? あんたらはいつまでおるん?」
「二日間だけ泊まらせてもらおうと思っています。本日は夜行バスで来たので、体がバキバキですからね。少し休憩したら、散歩にでも行ってきます」
「きいつけや。最近、枚方は全国でも一番暑くなったらしいで。この間、違う県で40度を超えたって観測されて抜かれたけどな」
私たちは、私の部屋に荷物を置いて、両親と近況を話しながらしばらくゆっくりしてから家を出ました。
「どこにいくのですか?」
「河川敷に行こうと思います」
「河川敷?」
「はい。大きな大学病院があるんですが、その裏手に淀川の河川敷がありまして」
昼食は両親と一緒に、駅前にある串カツ屋さんに入りました。流行病の影響も無くなって、お店も繁盛しております。
我が家では、たまにきていた店なので、潰れないでいてくれて嬉しいです。
両親と別れて、日が一番高い時間に、川沿いの河川敷まで歩きました。
日光に当たると活性化物質が体から出て、夜がよく眠れるそうです。
汗だくになってしまいましたが、やっと見つけることができました。
「ミズモチさん」
「ヴュ〜」
河川敷は一応魔物が発生していて、ミズモチさんの魔力回復が行えます。
そして、ここにカオリさんを連れてきた理由として。
「カオリさんもレベルアップをしてみませんか?」
「えっ? 私も冒険者になるんですか?」
「冒険者登録をしなくてもいいと思います。ですが、体の不調を整えたり、美容効果があったり、レベルアップは様々な恩恵を受けられるんです」
「美容効果! どうすればいいんですか?」
女性には美容が大切ですね。
ミズモチさんが一匹のラットを捕まえて、弱らせてくれています。
そこに今回のために、私は軽い杖を購入してきました。
「これを使ってラットを数度、叩いてみてください」
「叩くですか?」
「はい。叩きます」
「わかりました。やってみます」
ミズモチさんが捕らえたまま、カオリさんが叩くと一度でラットは魔石になってしまいました。
「えっ?」
「頭の中に音が響きましたか?」
「はい!」
「それがレベルアップ音になります。もう少しミズモチさんの魔力が回復したら、家に帰ってスキル調整をしてみましょう」
「はい」
私たちは、しばらく日差しに体を焼かれながら、ミズモチさんの魔力吸収が終わるのを待ってから帰宅しました。




