10月10日コミカライズ発売特別SS
どうも作者のイコです。
この度、阿部さんとミズモチさんがコミカライズ、漫画が2025年10月10日に発売されることが決まりました。
そして、秋葉原駅の改札前にデジタルポスターを10月6日~10月26日の期間掲載されることが決定しました!!!
関東の方で、秋葉原に行かれる際は、確認してみてくださいねw
僕は大阪なので、見に行けない( ; ; )
代わりに、よろしくお願いしします。
秋晴れの昼前、私はミズモチさんと連れ立って、秋葉原駅の電気街口改札へ向かいました。ビルの壁面に踊る看板、店先から流れるゲーム音、歩道に重なる人いきれ。街全体が巨大な電源タップのように熱を持ち、しかし風は秋らしく乾いております。
『ひで〜! ピカピカいっぱい〜! たのしいにおい〜!』
「ええ、今日の目的地は改札前のデジタルポスターです。私たちのコミカライズが掲出されると伺いました」
中央通りへ抜ける人波に押されつつ、ガシャポンの壁や基板専門店のショーウィンドウを横目に進むと、改札前コンコースの中央に、縦長の大型サイネージが並んでいました。画面が一瞬暗転し、次の瞬間、私の心臓が大きく跳ねます。
『道にスライムが捨てられていたから連れて帰りました 〜おじさんとスライムのほのぼの冒険ライフ〜』
白地を走るタイトル、その横で、絵の中の私はやわらかく笑い、ミズモチさんはぷるぷると弾んで頭に乗っておられます。
線は軽やかで、色は澄んで、見慣れた日常が絵として息をしている。
私は思わず足を止め、深く息を吸いました。
『ぼく〜! いる〜! ぷるぷるの ぼく〜!!』
「本当に……見事ですね。私たちが、紙の中でもちゃんと暮らしているようです」
通りがかった学生さんたちが立ち止まり、「可愛い」と笑ってくれました。
親子連れの小さな子が画面を指差し、外国からの旅行者と思しき方々も、にこやかにカメラを向けておられます。
言葉は違えど、表情は同じで、胸の奥がぽっと温かくなりました。
『ひで〜、あれ、たべてもいい〜?』
「食べてはいけません。電子の味は保証できません」
『ちょっとだけ、ぺろっ……』
「だめです」
私はあわててミズモチさんを抱え、画面から半歩離れました。
すぐ隣のサイネージでは、次の広告が流れ、またすぐに私たちのビジュアルへ戻ります。
周囲にはメイド喫茶のチラシ、最新パーツの価格表、アイドルのリリース告知。
秋葉原という街の喧噪の真ん中に、私たちの日常が、驚くほど自然に馴染んでいました。
『ねえねえ、ぼく、えがおじょうずに うつってる〜?』
「ええ、とても。可愛く描いてくださっておりますよ。漫画家さんのめぐお先生に感謝しないといけませんね。ミズモチさんのやわらかさや、愛らしさが見事です。よく理解しておられますね。光の拾い方が絶妙です」
『やわらか〜! ぷるぷる監修〜!』
胸の内で、いくつかの景色がよぎります。
道端で出会った日、最初に食べたあのコンビニのパン、初めてのダンジョン、仲間たちの笑顔。社畜だった頃の自分が、まさか家族と、スライムと、こうして広告を見に秋葉原へ来る日が来ようとは……。
人生は本当に、思いがけない方向へひらけていくものです。
「すみません、写真をご一緒してもいいですか?」
声をかけられました。私は帽子の位置を整え、角が失礼にならない角度を確認しながら頷きます。
「もちろん、どうぞ。ミズモチさん、にっこりお願いします」
『にっこり〜! ぷるぷる〜!』
何枚か撮るうち、ささやかな列ができました。
私はできる限り丁寧に対応しつつ、駅員さんの動線を塞がないよう気を配ります。
子どもさんが小さく手を伸ばせば、ミズモチさんはそっとぷに、と指先を受け止め、拍手が起きる。
ああ、ここでも誰かが笑ってくれる。
それだけで、私たちがここに来た意味は十分です。
ひと段落したところで、私はサイネージの前に立ち、画面に向かって小さく頭を下げました。
「丁寧に描いてくださって、ありがとうございます。読んでくださる皆さまにも」
『ありがと〜! ぼく、がんばる〜! コミカライズでも だいぼうけん〜!』
「そうですね。紙の上でも、現実でも、私たちは私たちの歩幅で」
改札を離れると、電気街の空気はさらに濃くなりました。
ラジオ会館の前では新刊の巨大パネル、路地ではハンダの匂い、歩道の端ではコスプレ撮影の輪ができています。
ビルの谷間から秋の陽が斜めに差し、看板の影がタイルに長く伸びていました。
「本屋さんにも寄りましょう。試し読み冊子が出ているかもしれません」
『いく〜! そのまえに、からあげ〜! クレープ〜! あ、あそこ もんじゃのにおい〜!』
「順番です。まずは本屋さん、そのあとで……少しだけ」
『かけつ〜! ぷるぷる採決〜!』
エスカレーターで上階へ上がると、店内の一角に小さな特設コーナーがありました。
ポップにはあのタイトル、平積みの隣には描き下ろしのメッセージカード。
私は胸の前で手を合わせ、深く息を吐きます。
「……本当に、並んでいますね」
『ぼく、ここにも いる〜! ちょっと ほっぺ まるい〜!』
「セロタ先生の解釈ですね。とても可愛いです」
レジへ向かうと、若い店員さんが目を丸くし、すぐに笑ってくださりました。
「もしかして本物の……?」
私は人差し指を立て、そっと口元へ。
「内緒でお願いします。今日は読者として参りました」
店を出ると、通りの風が少し冷たくなっていました。
私は紙袋を片手に、ミズモチさんを肩へ乗せ直します。ビルの壁面を滑る夕日が、ガラスの層で砕けて、街の色が一段やわらいだように見えました。
『ひで〜、きょうね、ぼく いっぱい えがお もらった〜!』
「ええ。私も、たくさんいただきました。守りたい景色が、また増えましたね」
改札前へ戻ると、サイネージはまた私たちの番でした。
通りがかる誰かが立ち止まり、ほんの数秒、画面の中の私たちに目をやる。
その顔にうっすら浮かぶ、日常より少しだけ柔らかい表情。それだけで、今日の秋葉原に来た意味は、充分に満たされます。
『ぼく、これからも ぷるぷる がんばる〜! ダンジョンも まいにちも!』
「はい。一緒に、静かに、確かに」
私はもう一度、画面に向かって小さく礼をしました。
駅の放送が流れ、人の流れが緩み、また満ちる。秋葉原という巨大な心臓の鼓動に合わせて、私たちも歩き出します。
「さあ、約束の唐揚げとクレープに参りましょう。食べ過ぎない程度に」
『やった〜! ぷるぷる販促〜! ちから でた〜!』
夕暮れの電気街に、ミズモチさんの弾む声が溶け、看板の灯りが一つ、また一つ、柔らかく点りました。
ポスターの中と、現実の街。そのどちらにも、私たちの暮らしが確かに続いているのだと感じながら、私は肩の上の相棒と、賑やかな通りへと歩を進めました。
どうも作者のイコです。
書籍も、コミカライズもたくさん売れて欲しいw
どうぞよろしおくお願いしますw




