コカトリスダンジョン 3
カオリさんとの生活の中でもミズモチさんへの魔力の補充は必要になります。
今週はバタバタとしてしまったので、ミズモチさんをダンジョンにつれて行ってあげることが一度しかできませんでした。
そのため、今週末は、コカトリスダンジョンで一気にミズモチさんの魔力回復を目指していきます。
「ミズモチさん。すみません。お腹が空いていますよね」
《ダイジョウブ〜! トリ〜! いっぱい食べる!》
ミズモチさんからルンルンと嬉しそうな雰囲気が伝わってきます。
やっぱりミズモチさんと心が通っていることが嬉しいですね。
《クケー!!コッコッコ!!!》
叫び声をあげて、コカトリスが現れました。
茶色い羽根に立派な赤い鶏冠。
どこからどう見ても大きなニワトリが飛んでおります。
「カオリさんと話した進化論の話を思い出すと、彼らもニワトリが進化したのでしょうか? それでいうなら我々も魔物さんを倒して、レベルアップすることが進化しているということなのでしょうか?」
進化した私と、進化したニワトリさんの対決ということなのでしょうね。
それを思うと、ニワトリさんが大きくなれば、それだけで脅威ですよね。
「しかも、人を石化させたり、毒を体内に持つのはどうしてなのでしょうね?」
異常攻撃なんて、本来のニワトリさんは持っていません。ですが、コカトリスさんの尻尾の部分は蛇を宿しています。
蛇は体の中に毒を持つ個体も存在します。
前回の毒蛇ダンジョンでは、ランクは低くても脅威になりました。
そこへ、石化という新たな能力を生み出したのはニワトリさんですかね。
コカトリスという新たな存在へ進化されたのでしょうね。
「ミズモチさん。今日はボスまで行ってみましょうか?」
「ヴュヴュヴュ」
どうやら良いそうです。
コカトリスダンジョンは、大きな養鶏場から、伸びる頂上の山で鳴いている。
「ちょっとしたハイキングですね」
ボスコカトリスさんを目指して頂上に向かって山を登っていくと、他のコカトリスたちが登場します。
コカトリスの特徴なのか、彼らは群れで襲ってくることはありません。
常に一対一で勝負です。
最初の数回は、私とミズモチさんは協力して戦っていましたが、今ではどちらか一方がコカトリスと一対一で戦うようにしています。
これはこれで今までと違ったダンジョン攻略なので、面白いですね。
「変身! 刺突! オロチ!」
変身を続けながら、コカトリスと戦うのは意外に疲れてしまいますが、これもこれで良い修行ですね。
柳先生から教えられた技術を、今までは無我夢中で使ってきました。
しかし、コカトリスたちは、強いです。
今までのように無我夢中で戦っていても対応されてしまうのです。
その巨体に見合わない動きで、私の刺突をかわして、嘴と足と尻尾の波状攻撃を仕掛けてきます。
それに対応するためにオロチを放つと、互角の撃ち合いをすることになります。
変身で身体能力を向上させて、白金さんの性能があるからこそ私が少しだけ押し勝つことができます。
頂上付近に近づくに連れて、押し勝てていたやり取りが、互角になり、今度は押し負け始めるのです。
まるでコカトリスたちは、ボスコカトリスの元で修行する弟子たちのようにすら感じます。
押し負けても、私には魔法があるので、なんとか勝つことができました。
「アベフラッシュ! ハァハァハァ、なんとか勝てました」
《凄い! 凄い!》
ミズモチさんが私の勝利に喜んでくれますが、私たちを囲むようにコカトリスたちがズラリと並んで待っているのです。
今までは、一対一で相手をしてきましたが、そろそろ疲れてきましたね。
「ミズモチさん。そろそろボスさんに会いたいので、協力して戦いましょうか?」
《は〜い!》
「皆さん、私たちはボスに会いたいので、全員でやりましょう。一対一が面倒です」
私の呼びかけに集まっていたコカトリスたちの顔色が変わります。
言葉こそ分かりませんが、ミズモチさんと通じ合ってビーストテイマーをやっているおかげで、相手の気持ちが伝わってくる気がします。
『俺たちを舐めるな!!!』
コカトリスたちが一斉に飛び上がって全員で同じポーズで飛び蹴りを放ってきました。
数十匹のコカトリスによる飛び蹴りは十分に脅威ではあります。
「ミズモチさん! アイスフラッシュ!」
《は〜い!》
レベルが十九になったことで、魔力が増えたミズモチさんが一斉にコカトリスたちを凍らせてしまいます。
氷の中を私の光の魔法が駆け抜けて、コカトリスたちの魔石を撃ち抜いて行きました。
「ハァ、やっと辿り着きました」
大量のコカトリスたちを退けて、頂上に辿り着くと真っ白な羽根に巨大な体。
立派なトサカをお持ちのニワトリさんが胸を張って立っています。
「先ほどまでの茶色い羽のコカトリスさんよりも、さらにニワトリらしい見た目をしておりますね」
私たちを見下ろすコカトリスさんからは、ビリビリとした威圧を感じさせられます。