コカトリスダンジョン 2
会社のことが一先ず落ち着いたことで、私が次に考えることは自分自身を強くすることです。
会社の忙しさと、タツヒコ君たちの指導。
様々な言い訳をしながら自分の成長を後回しにしていたような気がします。
「ご近所ダンジョンさんに挑戦する」
それは、私の目的であり、冒険者になってから、お世話になった白鬼乙女さんへの恩返しだと思っています。
冒険者になったとき、ミズモチさんに魔力を供給するためにご近所ダンジョンさんに初めて行きました。
戦えない私とミズモチさんに魔力を分けてくださっていました。
その際に、ご近所ダンジョンさん。
いえ、白鬼乙女さんは私に力を貸してくれました。
ドロップ品を頂き、冒険者として収入が増え、専用の武器まで頂き、次第に強くなるための魔物との戦闘までさせていただきました。
そして、白鬼乙女さんは言いました。
《ダンジョンから解放されたいと》
ならば、その願いを叶えるために、私は動き出さなければいけません。
もうすぐレベルが二十になります。
そうすれば、ミズモチさんは、また進化するかもしれません。
実はブロガーのアンジュさんのブログを読んでいて気づいたのですが、スライムをレベル二十まで成長させた人はいないそうです。
スライム好きな方々は世界中におられますが、そのほとんどが愛でることを目的にしていて、レベル10の進化まではなんとか頑張るそうなのですが、それ以上は求めていない方が多いのです。
私は、ミズモチさんから強くなりたいという意志を受け。
ミズモチさん自身の強さもあって、自然にレベルを上げることができています。
「レベル二十になったら、どうなるのでしょうね?」
《ヒデ! トリ〜! ウマ〜!》
コカトリスは、A級の中では最弱と言っても、ミノタウロスよりも強い魔物のです。ドラゴンのダンジョンにいたトカゲたちよりも上位に位置します。
ドラゴンのダンジョンに現れた変異種は、特別ですが、ここにいるコカトリスたちの方が、アースドラゴンたちよりも強いのです。
「ミズモチさんの強さは異常ですね」
コカトリスの異常攻撃に動じることなく、ガンガンと攻撃して食していかれます。コカトリスダンジョンに来るのは二日目ですが、すでに攻略法を編み出したのかもしれませんね。
ですが、私は油断する訳にはいきません。
あの鋭い瞳、尖った嘴、そして毒と石化を使う攻撃。
全てが危険なものばかりです。
石化については、カリンさんに相談したところ。
石化止めと言われる塗り薬をいただきました。
塗り薬でどうにかなるのでしょうか?
「ミズモチさん。あまり奥に進むと、何が起きるのかわかりません。まずはレベル19に上げるまでは、このあたりでレベル上げをお願いします」
《は〜い!》
コカトリスは、飛ぶことができるニワトリさんです。
蛇のような尻尾の攻撃は死角から襲いかかってくることもあり、かなり危険な攻撃です。
ただ、私は自分でも頭がおかしいのでは? と思うのですが、コカトリスの尻尾攻撃も、嘴も一度はダメージを受け入れてみました。
なぜかって? 私にも不明なのですが、痛みがどれくらいなのか試したい衝動に駆られたのです。
石化止めは効果抜群で、塗ったら治りました。
魔物から受ける痛みを感じたいと思うのは、変だと思いますが、大蛇の時も、ドラゴンの時にもダメージを受けても私は平気でした。
むしろ、それが戦っている実感といいますか、生きていると感じられるのです。
何よりも、コカトリスの動きを一つ一つを観察して威力まで体でわかった方が対処ができるような気がしたのです。
そして、ミズモチさんとコカトリスの戦いを観察していると、ダメージに耐えられるような気がするのです。
初日はミズモチさんと協力して倒しましたが、ミズモチさんだけでも十分に戦えております。
高速で動くミズモチさんに対して、コカトリスが速度についていけていません。
アベフラッシュで、地味に遠距離から攻撃を行って気を逸らすようにしていますが、ほとんど必要なく終わってしまうことが多いです。
それにコカトリスの攻撃を受けても、私は多少痛みはありますが耐えることができます。
これは新発見ですが、私は打たれ強い方だったみたいです。
「ミズモチさん。今ので三十体目です。そろそろレベルが上がりそうになってきましたので、あちらにいきましょうか?」
緊急察知さんのおかげで、どこに魔物がいるのかは一目瞭然です。
ですから、ミズモチさんの高速移動と。
私の強靭な肉体? を持ってすれば倒せるような気がするのです。
《いく〜! ゴハン!》
私たちは、群れで動いているコカトリスを見つけて、突撃を仕掛けることにしました。
一気にレベルを上げるための処置ですが無茶をしているかもしれません。
「変身! ミズモチさん、乗せてください!」
《いいよ〜》
ミズモチさんに乗ってしまえば怖いものなどありません!
「一気にレベルを上げますよ!」
私たちは二人で一対として、コカトリスの群れを薙ぎ払います。
「おや、やっとレベルが上がりましたね」
コカトリス討伐100体を迎えたところで、レベルアップ音が聞こえてきました。
「今日はここまでにしておきましょう」
《は〜い。お腹いっぱい!》
「よかったですね。鶏肉祭りでしたね」
私たちは、多少の傷を負いましたが、カリンさんのとこで買ったポーションを飲んでから帰宅しました。




