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結論と方針

 課長の発言に驚きの声を上げたのは、部長でした。

 部長は私が冒険者として、働いていることを資料を読んで知ってくれたようです。

 

 部長とは、正直なところあまり接点はありません。

 他の部署にいった際に、課長と同じくパワハラをしていることを聞いたことがある程度です。


 社長のいない会社の実質的な権力者で、権力を傘にきた無茶な命令をしていたのだと聞いた程度です。


「資料? あんなの読む必要がないでしょ? 結局、阿部がでっち上げたもんでしょうが? 確かに阿部には仕事を押し付けてきた。だからって、会社を潰すなんてことが許されるはずがないんだ!」

「HAHAHAHA。ここまで愚かな者を私はみたことがないよ。悪あがきをするために何かと言い訳を言う者や、発狂して暴れ出す者はいたが、ここまでの愚者だとは……ヒデオ、容赦の必要はないようだ」


 マイケルさんが、こちらを見てウィンクしてくれる。

 

 私も社長の態度にほだされていた気分が、引き締まったような気がします。


「課長、ちょっとよろしいですか?」

「なんだ! 阿部?!」


 未だに威圧的な態度を取り続ける課長。

 昔の私は、課長の態度に怯えてきたのかもしれません。首にされないために言われたことはやらなければならない。


 そんな思いが気持ちを支配して、言うことを聞かなければならないと思っていた。


「こちらを見ていただけます?」


 私はスマホを取り出して、冒険者カードの画面を見せました。


「はっ? なんだと言うんだ……えっ?」


 私も冒険者をする前は冒険者について詳しくはありませんでした。

 ですが、冒険者カードとは身分証にもなります。


「冒険者、阿部秀雄、ランクA」


 そう、私の名前とランクが記載された画面は、とてもわかりやすいことでしょう。


「はっ、これがなんだと言うんだ。冒険者? お前が冒険者だと言うだけだろ」

「これを見せても意味がわからないと言うことでいいでしょうか?」

「知らん知らん。私は動くのが嫌いだからな。冒険者みたいな野蛮人のことなど知らん」


 課長は仕事ができません。

 ほとんど仕事にも来ないで給料だけは私よりももらっています。お金と食べること以外に何が好きなのか、私は知りません。


「そうですか。では、これならどうでしょうか?」


 私は、置いてあるおしぼりで化粧を拭き取って、全力で凄んでみました。

 鏡を見ると、自分でも迫力があると思える顔です。


「ひっ! なっ、なんだ! 暴力でも振るうつもりか?!」

「いえいえ、そんなことをしなくても」


 レベル差はそれだけで脅威です。

 私はそれまで抑えていた戦いへ向かう際の闘志を、相手が醜いゴブリンだと思って気合いを入れました。


「ひっ! ナナナ南アナナナナ。やめっ! 殺さないで!!!」


 ガタガタガタガガタガタガタガタガタガタガタ!!!!!!!!!!!!!


「ぎゃあああああーー!!!あわわわわわブクククククク!!!!」


 私から発せられた威圧とでも言えばいいのでしょうか? に当てられた課長は悲鳴をあげて椅子から転げ落ち、漏らして、泡を吹いて倒れてしまいました。


「ふぅ」

「ひっ、ヒデオ。すまないが、我々も苦しいので、少しだけ気を静めてくれるか?」


 息苦しそうにマイケルさんに声をかけられて、私は何度か深呼吸をしました。


「すみません。少し顔と気持ちを整えてきます」

「OK、少し休憩にしよう。匂いが辛いのもあるからな。部屋を変えて話をしょう」


 マイケルさんが気を利かせて、他の部屋をとってくれました。


 課長の世話は、部長と弁護団のお一人がしてくれることになりました。

 これ以上の話し合いは課長とは意味がないと言うことで、課長は警察へ連行されるそうです。


 社長は、課長や部長にも救いを求めるつもりだったようですが、あまりにも酷い課長の醜態に、会社として横領や脱税などの、会社からの訴えもするようです。

 

「ふぅ、改めて話し合いを始めましょう」


 私が化粧を終えて席に着くと、席に座っている全員から喉を鳴らす音が聞こえました。


「ヒデオはさすがだな。やはりA級冒険者だ。普段の君からは想像もできない圧だったよ」

「そうですか? 私も自分が戦っている時は自分のことがわからなくて、魔物を前にした時のことを想像したら、課長が泣き顔を浮かべていました」


 おじさんが泣き叫んで、のたうち回る光景など見ても、面白くもありません。


 ですが、少しだけ胸がスッキリしました。


「先ほども話した通り、会社の今後と経営者側の処遇についての話をしましょう」


 社長はこちらの要求を全て飲むと言ってくれました。


 私も会社の皆さんを路頭に迷わせたいわけではありません。

 何よりも、社長への恩や仕事ができる能力は知っています。


「これでいいのかね?」

「はい。全社員の給料やお休みなどの働き方の改革を求めます。それは会社の利益だけや、幹部だけが儲かる仕組みではなく。仕事をした者にはしっかりとした報酬を与え、若者にはチャンスを。そして、働かない者には相応の罰を与えてください。そのための評価をしてくれる会社の仕組みを求めます」


 社長を辞めて欲しいとは思えない。

 だけど、社長は責任を取ると言って会社を他の方に託すことを宣言しました。


 それは今いる幹部ではなく。

 

 ずっと会社を支えてきた私の仲間から選んで良いと言ってくださいました。

 また、海外の会社との橋渡し役として、社長には残っていただくことになりました。ですが、社長は全ての引き継ぎが終わったら引退することを宣言されました。


 本当はもっと一緒に働いていたかった。


 ですが、今回のことでどんな判断をするのか決めるのが私であるように。


 社長の人生を決めるのは社長ご自身です。


 課長に関しては、会社に多大な迷惑をかけたと言うことで警察のご厄介になり。

 今後はしてきたことへの償いをしてもらうことが決まりました。


 私も課長には容赦をするつもりはありません。

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