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二人の時間

 様々な人たちに力を貸して頂けること決まり、私自身も驚いています。


 最近は忙しくてゆっくりとする時間も持てていなかったので、私はミズモチさんを抱き抱えました。


「ミズモチさん。最近はバタバタとしてゆっくりできなくてすみません」


 本日はカオリさんが、みやこママのところへお手伝いに行っているので、ミズモチさんと二人きりです。


《ヒデ! 大丈夫?》


「ご心配をかけてしまいましたね。はい。大丈夫ですよ」


 季節の変化に気づくこともできませんでした。


 梅雨の蒸し暑さが過ぎて、ただただ暑いだけになりました。

 夜だというのに暑さが残っていますね。


「ミズモチさん。恐怖耐性のおかげなのでしょうか? これからとんでもないことをするというのに怖さを感じないのです。きっと大それたことをしようとしています」


《ヒデ! 不安〜?》


「どうなのでしょうか? 確かに一人でしていた時は不安を感じていました。ですが、長さんと元さんが協力してくれて、カオリさんが支えになってくれて、ユイさんが助けてくれます。それがこんなにも心強いなんて知りませんでした」


 膝に乗ったミズモチさんはプルプルとして、気持ちいいです。

 抱っこしていても、ひんやりしているので気持ちいですね。


 窓を開けて、夜風に当たり。


 ビールを片手におつまみを食べます。


「ミズモチさん。今日は一緒に飲みましょう」


《飲む〜!》


「ふふ、意外にミズモチさんもお酒好きですよね」


《好き〜》


「それでは、かおりさんに作っていただいたおでんをつつきますか」


 暑くなって来たので、本日は冷やしおでんです。

 私も知らなかったのですが、しっかりと出汁が効いているおでんは冷やしても美味しいです。


《ウマ〜》


「ふふ、冷やしおでんありですね。ふぅ、ねぇミズモチさん」


《な〜に〜》


「男は黙って我慢するものだと思ってきました」


《うん!》


「私は言われたことをやり続けていけば、全てが上手くいくと思っていました。ですが、ミズモチさんと出会って、自分からミズモチさんを救いたいって思って冒険者になることを選びました。危険と隣合わせで、いつの間にか私は遠くに行っていた気がしたのですが、振り返った時。私の後ろにはたくさんの人が私を支えようと手を伸ばしてくれていました」


 冒険者になった頃の私は右も左もわからなくて、シズカさんが何かと声をかけてくれました。

 ユイさんが教えてくれて、ハルカさんが導いてくれました。


 長さんや元さんが背中を見せてくれて、優君やタツヒコ君。年下ですが、男性の仲間も増えました。


「そして、カオリさんが抱きしめてくれました」


 私は何もしない人間だった。

 何もしない。指示を待つだけで、自分から動いていなかった。


 きっかけはミズモチさんがくれたものかもしれない。


「だけど、全て私が歩み始めた新しい道だったのですね」


 ずっと自信がありませんでした。

 私なんてという言葉が口癖になるほど、私は自分を卑下して生きて来ました。


「もう、私が私なんてという言葉を使うことができませんね。私を支えてくれる人たちに顔向けができるように。何よりもミズモチさんあなたのパートナーとして、恥ずかしくない私でいたいと思います」


《ヒデ!》


「はい?」


《乾杯!》


 ミズモチさんがお酒の入ったお猪口を差し出します。


「ええ。乾杯です。ミズモチさん。これからも私のパートナーとしてよろしくお願いしますね」


《は〜い! ヒデ! ナカマ! ヤバ! ナカマ!》


「おや? 仲間とはもしかして家族のことだったのでしょうか? また一つミズモチさん言語を理解できましたよ」


 私はミズモチさんと梅雨が終わりに差し掛かる夏の夜を過ごしました。


「ミズモチさん久しぶりにあれやりましょうか?」


《やる〜!》


 私は2丁拳銃の構えで、水鉄砲を撃ちまくります。


 身体能力が向上しているので、銃さばきも様になっているように感じますね。


 私の二丁拳銃に対して、ミズモチさんは高速水掬いで、全ての水をキャッチしていきます。


「ふふふ、やりますね!」


《落とさな〜い!》


「まだまだです! 二丁拳銃上打ちをしながら、三丁めで早撃ちです!」


《なんの〜!》


「くっ! 負けました。ふふ、さすがはミズモチさんです」


《楽しい〜!》


「そうですね。身体能力が上がっているので、ミズモチさんと遊ぶのもついていけるようになりました」


 冒険者をして、体が引き締まったことは自分を好きになることができました。


「40歳にしては良い体をしていると思うのですが?」


《ヒデ! やる〜》


「そっそうですか? 私も満更ではありませんよ」


 鏡の前でポーズを決めていると、玄関が開きました。


「何をしているんですか?」


 上半身裸の中年親父が、筋肉を見るためにポーズを見ている姿を見られるのは、恥ずかしいです。


「えっと、恥ずかしいです」

「ふふ、あははははは。楽しそうですね」

「あっはい。カオリさんも飲みますか?」

「ええ、いただきます」


 私は頭をチカチカと光らせて照れ隠しをしてみました。


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