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毒蛇ダンジョン 終

 水に叩きつけられた私は咄嗟に白金さんの盾をボール状に形態を変更して、クッションの代わりにして受け身を取りました。


「今ので魔力が尽きてしまいました」


 私はミズモチさんに魔力の補給を頼んで、上空を見上げました。


 空から巨大なダムに巻き付いた毒蛇がこちらを威嚇しております。

 ランク的には城狸よりも低くはありますが、城狸は街のど真ん中にダンジョンを作っていたことが危機的な環境であるということでランクが上昇していました。


 この毒蛇ダンジョンは、街からは遠いダムです。

 広さと毒の危険性でCランクの認定を受けています。

 目の前にいる毒蛇は城狸よりも危険な存在であると危機察知さんが教えてくれています。


 先ほどの部屋はあの巨大な蛇の寝床だったのでしょう。

 狭くて、暗くて、暑い環境が毒蛇には快適な環境になっていたようです。


「かなり大きいですね。ですが、外に出られたので少し安心です」


 私はハルカさんに回復薬と毒消し薬を飲んでいただき、地面におろしてゆっくりとしてもらいました。


「ヒデオさん」

「必ず戻ってきます。こちらで休憩していてください」

「無理したらあかんよ」

「任せてください。私はこれでもA級を目指す者です」

「いつもそうやな。ヒデオさんには助けられてばかりや」

「私ができることであれば頼ってください」


 私はハルカさんに着ていたローブをかけました。

 悪臭カットのおかげで臭くはないはずです。


「ふふ、ヒデオさんの匂いに包まれとるわ」

「お嫌でしたか?」

「嫌なことあらへんよ」

「ありがとうございます」


 私はなぜかお礼を口にして、ハルカさんの元を離れました。

 毒蛇はミズモチさんと相対して、こちらを睨んでいます。

 ダムにいるタツヒコ君たちにメッセージで逃げるように伝えました。


「ふぅ、やっぱりスマホは便利ですね」


 メッセージの既読がついたので、上手く逃げてくれればいいのですが。

 私とハルカさんが無事であることは伝えています。


「さて、ミズモチさん。炎と毒、二属性を使う蛇の魔物は城狸よりも強いそうです。しかも相手には地の利があり、ダムからは毒蛇が溢れてきます」


 ハルカさんを遠くへ避難させている間にダムから毒蛇が溢れています。


 タツヒコ君達を探すとダムの外へは脱出できたようです。

 毒蛇に追いかけられていますが、普通の毒蛇であるなら、彼らの力量に任せることにしましょう。


「ミズモチさん。私たちはボス毒蛇と戦うとしましょう」


『はーい!』


 ダムと変わらない大きさをしたボス毒蛇さん。

 どうやってダムの中に収まっていたのか不思議でなりません。


 私はミズモチさんに乗せていただきます。


「さて、ボス毒蛇よ。お待たせしました」


 何故でしょうね? 巨大な蛇に睨まれると怖くて動けなくなると言います。

 ドラゴンに挑戦する前にチャレンジしにきたつもりでしたが、ドラゴンよりも大きいのではないかと思ってしまいます。


「ミズモチさん。少しずつで構いません。辺りに冷気をお願いします」


『わかった〜!』


 全身に炎を纏い口からは毒の息を吐いた蛇が、ゆっくりと私とミズモチさんに迫ってくる。


 水の中を泳ぐ蛇たちも迫り、私たちを大量の蛇と巨大な蛇が迫りつつあります。


「この場が水場である限り、そしてあなた方が爬虫類である限り、ミズモチさんには勝てませんよ。合成魔法銀世界」


 私が魔法を唱えると泳いでいた辺り一面が真っ白な銀世界へと変貌を遂げていきます。


「我が後光を」


 私の頭が光り輝き、凍った蛇達を撃ち抜いていきます。


 ボス毒蛇は炎を放っていたので、凍ることはありません。

 ですが、辺り一面が氷に囲まれれば、温度は一気に下がり動きは鈍くなります。


「今ですよ。ミズモチさん」


『は〜い! ウォーター!』


 炎を吹き出していたボス毒蛇の体へ水を浴びせて消火していきます。


 炎を消されて、熱を奪われたボス毒蛇がみるみるうちに動きが鈍くなっていくのがわかります。


「危機察知さんはあなたの方が城狸さんよりも危険だと言っておりましたが、私はそうは思いません。外へと出た時点で水があるダムはやっぱりミズモチさんの得意な戦場です」


 私は白金さんを構えました。


「痛いですよ。刺突!」


 ミズモチさんに高速移動をしていただき、私の魔力を白金さんに全て乗せて突きを放ちました。

 ボス毒蛇は一定のダメージを受けて魔石へと変わります。


「ふぅ、ミズモチさん。ありがとうございます」


 私はハルカさんの元へ戻りました。


「おかえり〜」

「はい。体はいかがですか?」

「うん。大丈夫やで。それにしてもヒデオさんは強なったなぁ〜」

「そうですか? 全てミズモチさんのおかげですよ」

「そうか。なぁ、ヒデオさん」

「はい。どうしました?」

「あの子らを毎日は指導できへんねんやんな?」


 あの子らと言われて、私はダムの上で私たちに手を振っている三人の姿が見えます。私はサラリーマンをしていて、毎日は無理です。


「そうですね。週末か、月一ぐらいです」

「そうやんな。なら、ウチがヒデオさんにできる恩返しは決まったわ」

「えっ?」

「あの子らの世話はウチがしたる。もちろん、リーダーはヒデオさんや。せやけど、それ以外の時はウチが守る。プライベートは諦める。せやけど、仕事のパートナーとしてしっかりと支えさせてもらうわ」


 それはハルカさんから、ホーンブレイクの正式な加入要請でした。


「ありがとうございます。ハルカさんが一緒に居てくれれば私も安心です」


 私はハルカさんをお姫様抱っこで抱き上げて、ミズモチさんにタツヒコ君達の元へ連れて行ってもらいました。


「冒険者のヒデオさんには、ウチが側におる」

「すいません。水音で聞こえませんでした。何と?」

「なんでもないよ。ありがとうな」


 ハルカさんは私にしっかりとつかまっています。私たちは仲間の元へ帰りました。


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