毒蛇ダンジョン 3
全身が蒸されるような暑さを感じて、私は目を開きました。
ですが、目の前に何か柔らかい物があり、何も見えません。
「ここは?」
暗くて視界を奪われており、私は手で探るように辺りに触れました。
ですが、どこを触っても柔らかい? ミズモチさんでしょうか?
「あん。ヒデオさん。あんまり体を弄るのはやめてくれんかな」
「へっ!」
視界が明るくなり、私の上にハルカさんが乗っていたようです。
「もう、そういうことがしたいんなら、ちゃんと付き合ってからにしてや」
「もっ、申し訳ありません」
「ええよ。ヒデオさんがウチを助けようとして、穴に飛び込んでくれたから、命は助かったんやし。これぐらいはお礼や」
どうやらミズモチさんが大きくなって、私たちを受け止めてくれたようです。
どれくらい落ちたのかわかりませんが、入ってきた時よりもかなり暑いです。
「それにしても暑いな」
ハルカさんが離れてくれても、暗いので辺りの状況がわかりません。
ミズモチさんの上に乗っているということは大丈夫だと思います。
「ミズモチさん。助けて頂きありがとうございます」
《いいよ〜ヒデ! ゴハン!》
「ゴハン?ということは敵がいるのですか?」
《いるよ〜》
「ハルカさん。敵がいるようです。ミズモチさんの上から降りないようにお願いします」
「うん。ありがとうな。ミズモチさん」
私は視界が奪われているので、察知さんを発動しました。
すると、確かに一匹の魔物がいますが、どこにいるのかわかりません。
「それで? どこに敵はおるん?」
「わかりません」
「えっ?」
「察知を使うと、確かに一匹だけいるのですが、どこにいるのか不明なんです」
「なんやそれ。そんなこと今でもあったん?」
「いえ、初めてですね」
屋内で察知を使ったことはご近所ダンジョンや、ビッグバットダンジョンでも経験しました。ですが、このような姿がわからないなどありませんでした。
「すみません。ミズモチさん。敵はどこにいるのでしょうか?」
《した〜》
えっ? 下?
「ハルカさん敵は下にいるそうです」
「へっ? 下? ウチらの下ってこと?」
「そうみたいです」
ハルカさんが下を覗こうとして身を乗り出したところで、光が灯りました。
いえ、光ではありません。
炎です。
熱を持った炎が突然ハルカさんの前に現れました。
「熱っ! 何っ!」
「ハルカさん!」
私はハルカさんを抱き寄せました。
炎は一部なのです。
それは巨大な蛇の顔でした。
炎は蛇の額に灯っております。
「蛇です!」
「あっ! そういう」
そうです。我々は巨大な蛇の上に乗っている状態のようです。
蛇がとぐろを巻いた上にミズモチさんが着地して、我々がその上に乗っているのです。
ここはダムの最下層だと思われます。
この蛇がいたからこそダム全体が熱くなっていたのです。
この部屋は炎を纏うボス蛇が寝ている部屋なのです。
「うっ!」
「どうしました?」
「湿気と熱気で息苦しいんやと思ってんやけど。もしかしたら、こいつが息をするたびに毒が充満しているのかもしれへんわ。気持ち悪い」
「ハルカさん。毒消し薬です。飲んでおいてください」
「ありがとうな」
蛇は私たちを見ているようですが、動きがありません。
ですが、蛇の顔の大きさからは、バッドやタヌキに匹敵するかもしれません。
「ミズモチさん。毒蛇さんは倒せそうですか?」
『マカセテ〜! ゴハン』
《キシャーーー!!!!》
ミズモチさんが何かを仕掛けた瞬間に、蛇が奇声を上げました。
一気に部屋の温度が上がり、蛇の全身が炎に包まれます。
「ミズモチさん?」
『いくよ〜! ウォーター』
ミズモチさんの体から大量の水が放出されました。
私は苦しむハルカさんを抱き抱えて、部屋に充満する水に耐えることにしました。
「ハルカさん。もうすぐ、この部屋は水で包まれます。息を止めて耐えてください」
「わかったけど、何するつもりなん?」
「ミズモチさんを信じてください」
部屋を埋め尽くす水は部屋の耐久力を超えて溢れることで、逃げ場を求めて圧迫された水は石にも穴を開けてしまうのです。
蛇は、逃げるために壁に激突を開始して、真っ暗な場所で火を灯していた蛇の頭は壁に激突されてヒビを入れる。
「アベレーザー!!!」
蛇を手伝うように私はレーザーで壁に魔法を放ちました。
「ミズモチさん今です」
『ウォーターランス!』
水の中で槍を作り出したミズモチさんは、蛇ごと壁を突き破りました。
「ミズモチさん。あそこから外へ出てください!」
『わかった〜!』
ミズモチさんに捕まり、ハルカさんを抱き抱えて私たちは外へと脱出しました。外へ出るとアーチ式のコンクリートダムの放水場へ放り出されました。
ミズモチさんから放たれた水の槍を受けてもファイヤー毒蛇は自ら逃げられたことで巨大な体をうねらせてこちらへ攻撃を仕掛けてきました。
「白金さん!!!」
私は全力で魔力を注いで盾を作って尾の攻撃を凌ぎました。
勢いで吹き飛ばされた私たちは水へと叩きつけられました。