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看病

 あれ?おかしいですね……ダンジョンから出た後ぐらいから気分がよくありません。


 目もグルグル回りますし、気分が悪いです。風邪でも引きましたでしょうか?ああ、矢も抜かなければ……ハァハァ辛いです。


「だっ、誰かに」


 なんとか家に帰りついた私はスマホを適当に操作しました。


 救急車を呼びたくて操作したのですが、視界が霞んでよくわかりません。


「はい………です」


「たっす……け……て」


 それ以降、私は意識を失ってしまいました……


《ミズモチさんはプルプルしています》


 ミズモチさんが心配してくれているのがわかります……


 ………


 ………………


 ………………………………


「はっ!」


 私は玄関で意識を失っていたはず?


「あっ、気付かれましたか?」

「えっ?」


 部屋に女性の声がして、ビックリしてしまいました。


「驚かせてすみません。でも、結構危ない状態だったんですよ」

「えっ、えっ、あっ、あの~どうして水野さんが家に?」

「やっぱり覚えてないんですね。私が冒険者ギルドでインフォメーションに座っていると、阿部さんから電話がかかってきたんですよ」


 誰かに助けを求めようとして、冒険者ギルドに助けを求めていたようです。


「でも、私が来れてよかったです。阿部さんは毒に冒されていましたよ」

「毒?」

「はい。ゴブリンの住処に行かれていたのですよね?矢にでも撃たれたんじゃないですか?ゴブリンの武器には彼らの糞などで作った毒が塗られていることがあるんです」


 そう言えば、肩の矢が消えて傷もなくなっています。


「私の肩に刺さっていた矢は?」

「矢?いえ、私が来たときには高熱を出して、苦しんでいる阿部さんが倒れているだけでしたよ」


 倒れる前にミズモチさんが……ミズモチさん!


「ミズモチさん!私の傷を治してくれたのですか?」


 私はダンボールに入っているミズモチさんを見ました。


 ミズモチさんは、いつもと変わらない様子でプルプルしていました。


「大丈夫なんですか?」


《ミズモチさんはプルプルしています》


「ホッ、大丈夫なんですね。よかった」

「スライムが助けてくれたんですか?」

「多分ですが、ミズモチさんが私の矢を抜いてくれたんだと思います」


 あとは自身の回復(極小)が傷を治してくれたのかな?でも、毒は治療できなくて倒れたのか……やっぱり冒険者って危険ですね。


「テイマーって色々と不思議な職業ですね」

「えっ?」

「だって、どこから来たのかわからない魔物たちと心を通わすことが出来て、相棒として助け合える。素敵だと思いますが、不思議です」


 今更気付きましたが、水野さんはいつもの受付服ではなく、至福……あっ私服です。

 なんと言うか若いのにしっかりしていると言うか、出来るお姉さん系です。

 メガネがインテリ度をアップさせて……なんだか良いです!


「阿部さん」

「はい!」


 えっ!近い!なっ、何をするんですか?


「うん。熱は下がりましたね」


 冷やっとした手が私の額に当てられました。

 手が小さくて良い匂いがします。


「あれ?顔が赤いですが、まだしんどいですか?」

「あっいえ、大丈夫です!」


 私が赤くなっては茹でタコ状態です。

 なんでしょう……水野さんは年下なのに、綺麗なお姉さん感が強すぎて……緊張してしまいます。


「よろしい。ソロでダンジョンに行かれているんですから、毒や異常状態についての知識は持ってくださいね。今回は私が救うことが出来ましたが、次も助けられるとは限らないんですからね」

「あっ、ありがとうございます!!!この度は命を助けて頂き。どうぞ何でもおっしゃってください。お礼をしたいと思います」


 土下座の姿勢で頭を下げました。


「そこまでしなくてもいいですよ。まぁ今回は貸し一としましょう。これでも冒険者ギルドに勤めていますので、冒険者の方へのケアも仕事です。逆に私たち冒険者ギルドが困っているときは、助けてほしいときに声をかけさせてください」


 出来る女性です!貸し一!カッコイイ。


「わかりました!なんでも言ってください!お手伝いさせて頂きます!」

「はい。本当に今回は危なかったんですからね。異常状態の講習を受けてくださいね」

「承知いたしました」

「よろしい。顔色も先ほどよりもよくなって、これだけ話ができれば十分ですね。一応消化の良い物がいいと思ったのでお粥を作っておきました。朝にでも食べてください」


 朝にと言われて、私は初めて時計を見ました。


 時計には0時で針が止まっていました。


「こっ、こんな時間まですみません!すぐにタクシーを呼びますので!」

「電車もありませんね。そうですね、お願いします」


 私は急いでタクシーを呼んで、住所を伝えました。


 5分ほどでタクシーが来てくれたので、水野さんに1万円を渡しました。


「こんなには……」

「いえ、おつりは要りません!お金でお礼は出来ませんが、どうかお納めください」

「ハァ~わかりました。それで阿部さんの気が済むならそうしておきます。それではゆっくり休んでくださいね」

「ありがとうございました!!!」


 私はタクシーが見えなくなるまでお見送りをしました。


 部屋に戻ると、矢場沢さんとは違う……良い匂いがしました。

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