ビックバットダンジョン 2
顔合わせを済ませた我々は、改めて冒険者ギルドでパーティーとして登録をすることにしました。
仮と思っていたのですが、パーティー登録は入隊や脱退を伝えれば、それほど厳しい規定はないそうなので、登録してしまうことにしました。
パーティーとして、三人と二匹でダンジョンに挑戦することにしました。
私とミズモチさんは、一先ず見守ることにしました。
お二人が息を合わせて戦うことができるのか不安でしたが、杞憂だったようです。
「僕が前にでる。援護を頼む」
「わかりましたのです! 藤丸、お願いします」
二人と一匹は、お互いを支え合うようにビッグバットに対応していきます。
タツヒコ君が盾を持って、襲ってくるバットを受け止め、藤丸君とサナさんが攻撃を行なって対応しています。
サナさんには、黒杖さんをプレゼントすることにしました。
私が柳先生に折りたたみ杖を頂いたように、同じ武器を使うならば、弟子にプレゼントする物だと思ったからです。
タツヒコ君は杖を武器にしていませんから、盾をプレゼントしました。
鉄の剣と盾の相性は良かったようで、現在のように盾で攻撃を受け止め、剣で攻撃するスタイルはタツヒコ君に合っていたようですね。
今は二人のレベル上げが重要なので、私はバットを弱らせるお手伝いをする程度です。ミズモチさんは遠距離水鉄砲を撃ってはバットを落とすという遊びをしています。
「ミズモチさん。楽しそうですね。私もやってもいいですか?」
『いいよ〜』
「それではいきますね」
お二人が戦いやすいように、ライトを消すことはできません。
ですから、額だけに集中して眉間から放つイメージで。
「はっ!フラッシュレーザー」
私の眉間から細長いレーザーが天井に留まるバットたちを撃ち落としていきます。当たらなくても、レーザーが迫ることで、バットたちが一斉に飛び立ちました。
「うわっ!大量襲来です!!!」
「しっ、師匠!あんた何してくれてんだ!一気に落としすぎだろ!」
やってしまいました。
「ミズモチさん。すみません。対処お願いしてもいいですか?」
『は〜い。アイスウォール』
ミズモチさんが落ちたバットたちの上に氷の壁を発生させて氷漬けにしてしまいました。相変わらず、ミズモチさんは凄いです。
「ミズモチさん。ありがとうございます。助かりました」
「うわ〜もう僕はスライムを絶対馬鹿にしたりしない」
「なっ、なんなのですかあれは? 魔法であんなことができるんですか?」
ふふ、うちミズモチさんは最高なのです。
出来るスライムなのです。
「氷をミズモチさんが溶かしてくれるので、どんどん倒していってください」
「わかりました。これはパワーレベリングじゃないのか?」
「凄いのです。どんどん倒せるのです」
二人がどんどんバットを倒してくれので、すぐに大量に落ちてきたバットの処理も完了しました。
「よし、レベル3になった」
「私もです」
どうやら二人ともレベルが上がってくれたようですね。
私たちはその後もビッグバットを狩ることで、レベルを上げて、二人のレベルが5になったところでダンジョンから出ることにしました。
「師匠、これは正しい冒険なのでしょうか?」
ダンジョンから出るとタツヒコ君に問いかけられました。
「どういうことですか?」
「確かに、サナさんと藤丸君と戦っている時は、冒険をしている感じがありました。ですが、師匠が魔法を使ってからは、師匠とミズモチさんにお世話になってそのおかげでレベルは上がりました。それは師匠に安全な場所からレベルだけを上げさせてもらっている気がして納得できないんです」
タツヒコ君もまともなことをいうようになりましたね。
確かにレベル差があるので、ミズモチさんにとっては簡単に倒せてしまう相手ですね。
「あっ、それは私も思ったのです。でも、私は早く強くなりたいので、助かりました」
お二人の想いは多少違いがあるものの、私にお世話をされていることに納得ができないということです。
仕事でも新人が、ある程度仕事を覚えると自分に任せて欲しいと思うものです。
「うむ。タツヒコ君が言うことにも一理ありますね」
お二人が苦労しているのを守ろうと思っていました。
それがかえってお二人にとっては邪魔に感じてしまったのですね。
レベルが5になったことです。
少し早いですが、彼らに任せてみるのも一つの手ですね。
「わかりました。お二人もレベルが5になってスキルを割り振ります」
「はい」「はい。先生」
「スキルに関して私は口出しをしません。自分たちなりにスキルを調べて、お二人が決めた強さを手に入れてもらえれば問題ありません。その力を試すためにも自分たちにあったダンジョンに挑戦して見てください。他の方の協力を得てもらっても構いません。レベル5になったお二人を邪魔者扱いする人はいないでしょう。ただ、スキルを割り振った後は、自分たちの力を把握することを忘れないでください」
私の言葉に、二人が真剣な顔をしてうなづいてくれます。
「冒険者は命に関わる仕事です。油断しないようにお願いします。いいですね」
「はい!」
「わかりました」
「それではそれぞれの成長を促す期間を設けるため、報告会として、次はゴールデンウィーク後に会いましょう」
いつまでも私が側にいては、二人の成長の邪魔になりますからね。二人を信じて仮免許を渡すことにしました。




