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人付き合いの心得 

 女性を待たせるわけには行かないということで、私はタツヒコ君を朝イチで迎えに行ってから待ち合わせ場所にきました。

 予定時刻の一時間前について近くで朝食を取っております。


「どうしてこんなにも早く来る必要があるんですか?」


 タツヒコ君は、対面に座ってコーヒーを飲みながら疑問を口にしました。


「ふむ、これまでタツヒコ君は人間関係で上手く行かなかったと思います」

「はい」

「それでは、人が自分を大切にされていると感じるのはどんな時だと思いますか?」

「大切にですか?」

「はい」

「えっと、命をかけて守ってくれるとか?」

「それはまた極端な話ですね。ですが、間違ってはいません。そこまで思える相手に出会えるのは稀ではあります。人はね、時間、労力、お金をかけてくれる方に大切と感じて好意を抱きやすいというところがあるそうです」


 私の言葉にタツヒコ君が首を傾げる。

 意味がわからないようですね。

 心理学の本を読んでいて、私も知ったことです。


「もしも、タツヒコ君が待ち合わせをしていて、毎回遅刻して来る人が居れば、その人にどのような感情を抱きますか?」

「ムカつきます」

「そうですね、怒りを感じると思います。怒りとは信頼を損なうということです。毎回遅刻してくる相手のことを信頼するのは難しいでしょ?」

「はい。こいつは時間を守らないと思うようになります」


 私が言いたいことが理解できた様子で納得してくれました。

 タツヒコ君は頭の良い子です。

 ただ、これまで見た目で損をして、多分拗れてしまったタツヒコ君自身の態度で損をしてきたと思います。


「タツヒコ君が好意を持っている相手に対して、大切にしたい人にはきちんとした態度を取ることが大切だということです」

「それでこんなにも早い時間に?」

「はい。女性は準備がかかるものです。それなのに早めに来てくれる方が多いのですよ。そのような女性を絶対に待たせてはいけません」

「はい!」


 社会人として、取引先を待たせれば、相手は軽んじられていると思うことでしょう。私は社会に出て人付き合いの難しさを何よりも実感してします。

 だからこそ、人付き合いという大きな括りで、相手を蔑ろにしたくないと思っています。


「だけど、相手が遅刻ばかりする人だったら、自分を大切にされていないと思ってしまいます。それはどうしたらいいんですか?」

「答えは、二つです」

「二つ?」

「はい。あなたが相手に好意を持っているのであれば、あなたが寛容になりなさい」

「好意を持っていれば寛容に?」

「はい。相手を好きなら、まずは自分が相手を好きになることから始めるんです。遅刻をした、嫌なところを見つけたと、相手の欠点を探してイライラしてはいけません。遅刻しても、自分に会いに来てくれた。嫌なところも愛おしい。先に愛することから始めるんです」


 私は人を嫌うことがほとんどありません。

 そうですね。どうしても生理的に合わない人間という人はいます。

 我が社の上司がまさしくそんな人です。

 報連相がちゃんとできなくて、確認もしていないのにミスをして、こちらのせいにしてくるんです。

 それだけじゃなくて、自分の失敗も、他の人の失敗も全て私に押し付けてくるので、会話も成立しないしんどい上司です。


「好意がなければ?」

「縁を切るか、無視するしかありません」

「えっ?」

「世の中は、それほど甘くないのです。全員が全員を受け入れられるわけではありません。縁を切るために逃げるのも一つの手です」


 私が受け入れたいと思った人でも、相手の方が私を拒否することはありました。こればかりはどうしようもありません。

 あの上司から逃げたいのですが、会社にしがみつくにあたり全てのことを無視することにしました。


「僕はこれまで上手くやらなくちゃ、上手くやれば誰かが認めてくれるって思ってきました」

「それは誰もが思うことです。特に若い間は、何者かになれると思っていますからね。ですから、一つだけ私からタツヒコ君に贈る言葉は、人に変わることを期待してはいけません」

「変わることを期待してはいけない?」

「はい、変わるのは自分自身です。富、名声、認知度、見た目、考え方、話し方、環境、様々な自分自身の変化によって相手が自分への接し方が変わります」


 これは私自身が体験したことです。

 冒険者になって、ミズモチさんに出会ったことで環境が変わり、見た目が変わり、富も得られて心に余裕が出ました。

 

 すると、今まで見えていた景色が変わっていきました。

 大きな変化と言えば、カオリさんが彼女さんになってくれたことです。

 ミズモチさんに出会って、レベルが上がって見た目が変わり、スキルを得た後からカオリさんからたくさん話しかけてもらえるようになりました。

 間違いなくミズモチさんとの出会いが、私自身を変化させてくれたと思います。それは周りの変化にも繋がり、私は現在幸福を得ております。


「変わるのは自分自身」

「はい。昨日のタツヒコ君を振り返って見てください。私の後ろに隠れて、モジモジと声が小さく話をしない人をタツヒコ君はどう思われますか?」

「キモいです」

「そこまでは言いませんが、好感が持てる態度ではなかったと思います」


 自分自身を変えるためには、自分の欠点を克服していく必要があります。

 それには自分自身を理解して、諦めるポイントと、どうしても変われない性格を理解するしかありません。


「がっ、頑張ってみます」

「ええ、そろそろ時間ですね。待ち合わせ場所へいきましょう」

「はい!」


 タツヒコ君がすぐに変われるとは思っていません。

 それでもきっかけになってくれればいいですね。


 待ち合わせ場所に行くと、まだ来られていない様子でホッとしました。

 

 少しだけ待っていると、カリンさんがやってきました。

 ただ、その横にはユイさんも居られて、綺麗な大人女性が二人でやってきます。

 タツヒコ君に言いましたが、これは緊張するなという方が難しいかもしれません。


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