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main友

 ミズモチさんと出会ってから本当に景色が変わってきましたね。


 なんと私にmain友達が出来ました!妄想ではありませんよ!


 この間、ゴブリンから助けた湊さん(19歳)が、何かとmainをしてくるようになったのです。


 始まりは、高良君が目覚めたことを知らせるメッセージからでした。


【湊】『この間は、助けて頂きありがとうございました。サエちゃんも、ユウ君も元気を取り戻しました』


【私】『それはよかったですね。三人とも無事でよかったです』


【湊】『本当にありがとうございます。お礼をしたいと思いますので、またご連絡させてください』


【私】『気にしなくてもいいですよ。同じ冒険者なので、私が困ったときは助けてください』


【湊】『必ずお助けします!!!それでは何かあれば連絡しますね』


 と言った感じのやりとりをしてから、何気ない冒険者情報や冒険者ギルドの噂などを湊さんが私に送ってくれるようになりました。

 私がボッチ冒険者ということは告げているので、色々と情報を教えようとしてくれているのでしょう。


 湊さんは私のようなオジサンに気を遣える良い子です。

 こういう縁は大切にしたいですね。

 あっ、恋愛とかではありませんよ。

 親戚の姪っ子が可愛い的なあれです。

 私姪っ子いませんが……兄妹もいませんので……一人っ子です。


「阿部さん」

「あっ、はい!!!矢場沢さんどうしました?」

「また、ミズモチさんのことを考えていたんですか?」

「あっいえ、最近冒険者仲間が出来まして、その方のことを考えていました」


 いつものお昼時に湊さんのメッセージを思い出して考え込んでしまいました。

 せっかく矢場沢さんの厚意で、一緒にお昼を食べてくれているのに……これではキモいオッサン認定を受けてしまいますね。


「女性の方ですか?」

「えっ?」

「あっいえ、なんだか楽しそうだったので」

「あ~、え~と、はい。女性の方です。この間、冒険者の仕事をしているときに助ける機会がありまして」


 私はゴブリンの住処で起きたことを矢場沢さんに話しました。

 真剣な顔で聞いてくれた矢場沢さんは、危ないシーンに顔をしかめていました。

 やっぱり荒事の話は、女性にするものではありませんね。


「阿部さんが無事でよかったです。それでmainを交換したんですね」

「はい。若いのに良く出来た子なんです」

「そう言えば、同じ職場にいるのにmainの交換をしていませんでしたね」

「えっ、はい。していませんね」

「丁度、話題に上がったので、交換しておきましょう」


 なぜだかわかりませんが、矢場沢さんとmainを交換をすることになりました。

 操作がわからない私に代わり矢場沢さんが操作して、あれよあれよと交換が完了しました。


「ふふ、ゲットです」


 矢場沢さんがニコニコして自分の席に戻っていきました。


 ミズモチさんのお陰なのでしょうか?40歳になってから年下女子からmain交換をしてもらえる日が来るなんて!良いことって続くのですね。


 平日はいつものダンジョンへ散歩にお出かけして、週末はミズモチさんとゴブリンの住処に行く日々が一ヶ月過ぎた頃……いつものダンジョンに久しぶりに人影を見つけました。


「このダンジョンでは久しぶりのゴブリンですね。週末はゴブリンを倒しているのですが、レベルが上がっていませんからね。そろそろレベルが上がりませんかね?」


《ミズモチさんはプルプルしています》


「ミズモチさんもそう思いますよね」


 私は元々臆病な性格なので、一匹でも油断はしません。

 相手とは命のやりとりをしているのです。

 いくら、相手が杖で突いただけで倒せると言っても、何が起きるのか分かりませんからね。


「ミズモチさん、慎重にいきますよ」


《ミズモチさんはプルプルしています》


「やぁ!」


 私がゴブリンを倒そうと杖で突くと、硬い感触で跳ね返されました。


「えっ?」

「ギッギギ!」


 こちらに気づいていた様子で、振り返ったゴブリンの手にはボロボロの鉈が握られていました。

 サビサビで絶対に良い物ではありません。

 ですが、私の杖を防ぐことが出来る武器を持っているゴブリンは初めてです。


「これは……ピンチですね!」


 今までのゴブリンは素手で襲いかかって来る程度でした。

 それが、進化した?もしくは武器を持った?だけで恐怖心が高まります。


 もしも、あの鉈で傷を負ったら……死。


 身震いがします。


《ミズモチさんはプルプルしています》


「えっ?!」


 私が問いかけていないのに、念話さんが発動しました。


 それはミズモチさんの方から何かを伝えたいと、私に話しかけてくれていると言うことです。


 はは、まさか念話さんがこんなところで意味を成すなんて、念話さんも働いていたんですね。それにミズモチさんが話しかけてくれたので、頭が冷静になりました。


 ボロボロの鉈を持っていても、慌てることはありません。


「フック!」


 私はゴブリンの手元を狙ってフックを使いました。


 失敗です。

 的が小さ過ぎました。


 ゴブリンも警戒しているので、こちらと距離を空けて私に意識を集中しているようです。


「グギッ!」


 私に集中しているだけではダメですよ。


 ミズモチさんが、ゴブリンの横から体当たりを決めてくれました。

 私は今度こそとフックを使ってゴブリンの手元の武器を狙いました。

 武器を落として、ゴブリンが魔石へと変わっていきます。


「ふぅ~ゴブリンとの戦闘で、久しぶりに緊張しましたね」


 ミズモチさんとの連携が上手くいきました。


「ミズモチさんありがとうございます」


《ミズモチさんはプルプルしています》


「ふふ、念話さんは翻訳をしてくれませんが、何か話しかけてくれているのはわかります。ミズモチさん、帰りましょうか」


 帰ろうと立ち上がろうとして、私は二つの落とし物に気づきました。


「あれ?赤い魔石がいつもより大きいですね。それに先ほどのボロボロの鉈も落ちています。あれですかね?ドロップアイテムという奴ですかね?」


《ミズモチさんはプルプルしています》


「やっぱりそうですよね。私には必要ないから冒険者ギルドで売れるのか聞いてみようと思います」


 武器持ちゴブリンとの戦闘で、レベルが上がることはなかったですが、始めてのドロップアイテムをゲットしました。


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