ミノタウロスの廃ショッピングモール 2
金曜日にお会いしたカオリさんはいつも通りで、何かを言うことはありませんでした。
週末になった私は、ぐるぐると考えすぎた頭をスッキリさせたいと思いダンジョンにやってまいりました。
「ミズモチさん。油断しないで行きましょう!」
『は〜い。ヒデ〜大丈夫⁈』
「はい。大丈夫です。ご心配おかけしてすみません」
私は、ミノタウロスの廃ショッピングモールの入り口に来ました。
前回と同じ職員さんに冒険者アプリを見せます。
「あんた。大丈夫かい⁈前回、すぐに戻ってきてただろ?無理しないほうがいいよ。命あっての冒険者業だからね」
「ありがとうございます!ですが、前回は一体を倒したところでレベルが上がりましたので、戻ってきただけなんです」
「へっ?そうなのかい?俺はてっきり、びびって逃げてきたのかと思っちまった。それは失礼した」
「いえいえ、私のような者なら、そう思われても仕方ありません」
「いやいや、今日のあんたは冒険者って雰囲気だぜ。なんか鬼気迫っているっていうか追い詰められている雰囲気があるよ!」
冒険者以外のことを考えて、切羽詰まっているのかもしれません。
バレンタインでのシズカさんとの行為。
祝日で起こったカオリさんとの行為。
二人の女性の間で、私の心は揺れ動いております。
「とにかく今日は頑張りますので、よろしくお願いします」
「ああ、無理しない程度に頑張りな」
職員さんはいい人でした。私の心配をしてくれています。
中扉が開かれて、ミノタウロスの雄叫びが聞こえてきます。
「ミズモチさん。今日は全力で発散していきますよ!」
『ウシ〜ウマ〜』
「ミノタウロスよ!今日は私の気持ちをぶつけるので受け止めてください!白金さん!」
私は、ミノタウロスを殴っては突き、引っ掛けては払って、倒して行きます。
力の強いミノタウロスですが、こちらの攻撃は、鬼人化することで簡単に決まっていきます。
そして、今更ながら気づいたのですが、鬼人化すると魔力を消費しているようです。微々たるものですが、魔力を消費して強くなっていると思うと原理が分かったような気がしますね。
「モゥ〜!!!」
ミノタウロスをたくさん倒していると、今度はビックブル? 大きな牛の魔物が現れました。
オークのダンジョンに現れたボアの三倍は大きな牛です。
「ミズモチさん倒せますか?」
『マカセテ〜ヒデ〜ゴハン〜』
そう言って私が警戒して問いかけると、ミズモチさんがプルプルしながらビックブルに向かって行かれます。
ミズモチさんと、ビッグブルでは、お家とサッカーボールぐらいの大きさに差があります。
「本当に大丈夫でしょうか?」
ブルの時のように食べてしまうのかな?
『アイスジャベリン」
小さな氷の槍をみずもちさんが吐き出すと、高速で飛んで行きます。
真っ直ぐにビッグブルの瞳へ飛んでいって、そのまま頭を貫きました。
「えええええ!!!! ミズモチさんすごすぎです!」
驚きすぎて大きな声を出してしまいました。
ミズモチさんは、そのまま二階建てのお家ほど大きなビッグブルを丸呑みしていきます。
「ミズモチさん!最近、大きくなれる限界を超えていませんか?いったいどれくらいまで大きくなれるんでしょうか?」
私も負けてはいられませんね。
ミノタウロスの真ん中に飛び込みます。
「私を見なさいライト!!!」
私の顔と頭が360度に光を放ってミノタウロスたちの群れを一気に倒します。
「薙ぎ払い!!!」
白金さんと鬼人化コンボです。
「ふぅ〜」
ミノタウロスには悪いですが、白鬼乙女さんに比べれば全く怖くありません。
シズカさんへのドキドキも、カオリさんへのドキドキも、こんな比ではありません。
「もう、あなたたちに囲まれた程度では、ドキドキできない体になってしまいました」
B級ダンジョンであるミノタウロスにいるはずなのに、恐怖を全く感じません。
「女性に比べれば、牛さんたちは美味しいお肉とお金にしか見えませんよ!」
「「「モゥーモゥー!!!」」
大量に現れたビッグブルに、私はミズモチさんを呼びます。
「ミズモチさん。合成魔法です!」
『は〜い!いくよ〜』
「アイスプリズン!」
大量に走ってきたビッグブルたちを氷の檻に閉じ込めて、レーザーで大量討伐です。
「また、殺生をしてしまいました」
大量に魔石を拾わないといけないので、本日はここまでです。
『大量〜大量〜牛いっぱいウシウシ〜』
倒れたビッグブルを魔石になる前に、ミズモチさんが楽しそうに食されております。私は、魔石になってしまった魔物たちを拾っていきます。いくつかドロップ品も見つけました。
「剣や斧、盾なんてのもあるんですね?全て持って帰れるでしょうか?」
『ヒデ〜乗せて〜』
「よろしいのですか?」
『いいよ〜」
大きくなったミズモチさんにドロップ品を乗せていきます。全ての魔石とドロップ品を乗せて、出口に向かいました。
「おっ!出てきたのか?大丈b!!!!!!!」
私の後ろから現れたキングスライム並みに大きなミズモチさんを見て、職員さんが驚かれています。
「はい。今回は、頑張り過ぎてしまいました。今から、冒険者ギルドに向かいますので」
「おっおう。ご苦労様です」
なぜか敬語を使われてしまいました。
あっ、化粧が落ちて睫毛も眉も戦闘で無くなってしまいましたかね?怖い思いをさせていたら申し訳ありません。
冒険者ギルドにいく前にメイクチェックした方がいいでしょうか?あっ、そういえばドロップ品に馬の被り物がありましたね。それをつけて向かうとしましょう。
化粧って面倒なので、慣れるまでは大変ですね。