スノーベアーの雪山 4
「グルガァァアアアアアアッ!!!」
ビックブラックベアーの雄叫びは、雪山を揺らすほどの激しい振動を起こしています。
ロープウェイから降り立った私たちの魂に恐怖を受け付けるのに十分な威圧です。
「これはこれは、私たちも初めて出会うほどの強者ですね」
長さんはタバコを吸いながら、周りの魔物たちに銃を向けて撃退していきます。
ミズモチさんもロープウェイから飛び出すと、魔物たちに襲いかかっていかれました。
二人の活躍でロープウェイの周りから魔物がいなくなりました。
ロープウェイが到着して降りた先には、ミズモチさんと訪れたときとは別世界のような雪山の景色が広がっています。
木々は雪によって薙ぎ倒され、乱雑とした雪景色は荒々しく、魔物の主が現われたことで、魔物たちが殺気だって目を光らせております。
「おいおいおいおい。ここは地獄かい?」
「ふん!」
長さんは、拳銃型の魔道具を武器にしています。
ロープウェイを降りた直後から、魔物の脳天を正確に打ち抜いて倒していきます。
【魔導銃】と言われるドロップ品で、何度でも魔力を弾丸として打ち出せる強力な武器です。長さんの専用武器として登録ができるそうです。
私の白金さんと同じ特別な武器ですね。
元さんも専用武器を持っておられます。
ーーギュイーン
電動ノコギリの金木り音が鳴り響き、魔力を纏わせることで魔物の命を刈り取っていきます。魔力を刃として飛ばすこともできるそうです。
てっきり巨大なハンマーを持っているイメージだったので、意外な組み合わせに見えてしまいます。
お二人ともさすがはA級冒険者です。
装備されている武器が他の冒険者さんよりもグレードが高いです。
「ふぅ阿部君、捜査を開始する。しばらく私は動けない。護衛を頼むよ」
「はい!」
長さんは、特殊効果のあるスキルをお持ちだそうです。
【捜査】と【調査】と言われるスキルで、違和感に気づきやすくなるそうです。
「ふん!」
元さんが黒雷鹿の脳天へ、電動ノコギリの一撃を加えて倒してしまいます。
続けてスノーベアーさんが真っ二つになって、豪快な倒し方です。
【進化ミズモチさん】『ゴハン~いっぱ~い』
「ミズモチさん。今日は制限無しです。全力でお願いします」
【進化ミズモチさん】『りょう~か~い!!!ぜんりょ~くだ~』
ミズモチさんが今まで見たことがないほど、楽しそうに高速で戦場を駆け抜けて行きます。
雪山を縦横無尽に飛び回って黒雷鹿を食されています。
「ふん!」
私がミズモチさんに気を取られていると、背後に現われたスノーベアーを元さんが倒してくれました。
「すいません」
「ふん」
気にするなと言わんばかりの息遣いで、元さんは次の魔物を狩りに行かれました。
「私も活躍出来ればいいのですが、白金さん。お願いしますね」
白金さんはやっぱりスゴイです。
この場で一番弱い私でも、魔物たちと戦えています。
ビックブラックベアーさんは、こちらに興味が無い様子です。
刺激しなければ、このままシズカさんが見つかるまで大人しくしていてくれますかね?
「阿部君、捜査が終わったよ。君の友人たちの話で、最初にビックブラックべアーがあらわれた場所を推測しただけなので、正確とは限りません」
「それでも、お願いします」
「雪崩れの速度と、ロープウェイの位置から彼女の落ちた場所を調査しました」
長さんは、火魔法を使ってだいたいの位置を円で囲ってくれました。
「特定した範囲としては広いですが、この雪山全てを調査するよりは」
「ありがとうございます!!!長さんのおかげでシズカさんの生存確率が上がります!」
「ふぅ~君のような素直な人は珍しいですね。こっちまで頑張りたくなりますねぇ~必ず助けてあげてくださいよ」
「はい!ミズモチさん!」
【進化ミズモチさん】『ヒデ~ナニ~』
「お願いがあります!私を乗せてください」
【進化ミズモチさん】『いいよ~』
私はミズモチさんに乗って、長さんが指定してくれた場所を捜索開始しました。
どうか、シズカさん無事でいてください。
長さんと元さんが、私たちに魔物が近づけないように食い止めてくれています。
その間になんとか………
「グルガァァアアアアアアッ!!!」
それは絶望を知らせる雄叫びでした。
長さんが指定してくれた場所へビックブラックベアーが飛来する。
「ミズモチさん!お願いします!私を跳ばしてください!」
【進化ミズモチさん】『ヒデ~いけ~!!!』
ミズモチさんが弾んでトランポリンのように私を跳ばしてくれました。
空中でビックブラックべアーと相対します。
トレントツリーなど比にならない巨大な身体は某怪獣映画を目の前にしているようです。
ですが………
「シズカさんを生き埋めにはさせません!!!白金さん全力で!」
私は自分が込められるありったけの魔力を白金さんに込めて、ビックブラックべアーの横っ面を叩きました!!!
ゴムタイヤを叩いているような弾力が私の手に返ってきます。
強靭な肉体を持つビッグブラックベアーさんに力負けしてしまいそうです。
【進化ミズモチさん】『マカセテ~アイスランス!!!」
ミズモチさんの援護によってビックブラックベアーを、吹き飛ばすことに成功しました。
シズカさんを守れました。
「やりました!」
私は油断していました。
魔力を使い果たして落下する寸前、ビッグブラックベアーが爪を伸ばして私の胸を切り裂きました。
「阿部君~~~!!!!!!!!!!」
長さんの叫び声が聞こえて私は意識を手放しながら地面に落ちていきます。




