8. 上杉謙信
歴史が好きな『モトヤ』と『ソウマ』の何気ない日常。
また『モトヤ』がズレたことを言っているので『ソウマ』が困っています。
こっそり...聞いてみましょう。
【モトヤ】 ソウマ、俺ついに新しい趣味見つけたんだよ。
【ソウマ】 ほう、それはまた意外だな。お前が趣味とか珍しいじゃん。
【モトヤ】 最近ね、家で『一人戦国武将ごっこ』するのにハマってんだよ。
【ソウマ】 さっそく意外すぎるわ。その趣味の癖が強すぎんだよ。
【モトヤ】 いや、めっちゃ楽しいよ?特にスーパー行く時とか便利でさ。
【ソウマ】 便利?戦国武将ごっこがスーパーでどう便利なんだよ。
【モトヤ】 買い物前に、気持ちを完全に上杉謙信にして行くんだよ。
【ソウマ】 スーパーに謙信が降臨して何の役に立つんだよ。米でも攻め落とすのか?
【モトヤ】 まず、塩コーナーの前に仁王立ちで叫ぶわけ。「敵に塩を送れぇー!」って。
【ソウマ】 送らねぇよ。スーパーに敵いないんだよ、敵が。
【モトヤ】 次は鮮魚コーナー行って魚をじっと見つめて、「運は天にあり…」って呟くの。
【ソウマ】 魚の鮮度は店の管理だよ。天任せにすんな。
【モトヤ】 あと店員さんに「ポイントカードはありますか?」って聞かれたら、グッとにらんで、「我に過ちなし!」って断る。
【ソウマ】 いや、カード作れよ。損してんじゃねーか。
【モトヤ】 謙信はポイント貯めたりしないんだよ。正義にポイントは要らぬ!
【ソウマ】 その正義は財布に優しくないぞ。
【モトヤ】 それで極めつけがレジよ。支払いの時はレジ前で仁王立ちして、「これよりこのレジを、我が義にて攻め落とす!」って堂々と宣言するわけ。
【ソウマ】 店員さん怖ぇよ。普通に払えって。
【モトヤ】 ちゃんと普通に支払った後、「領地は取らぬ!」って言い残して去る。
【ソウマ】 もともとスーパーはお前の領地じゃねぇからな。
【モトヤ】 それで家に帰ってからがまた重要なんだよ。
【ソウマ】 まだやることあんの?
【モトヤ】 お菓子の袋を開ける前に一度立ち止まって、「四十九年、一睡の夢…」って遠い目をする。
【ソウマ】 スナック菓子食う前に人生振り返んなよ。どんな重い菓子タイムだ。
【モトヤ】 いやいや、これやるとさ、お菓子食べるだけでも歴史感じるじゃん?
【ソウマ】 歴史の無駄遣いだよ。謙信もお菓子タイムに自分の人生重ねられたら迷惑だわ。
【モトヤ】 でも最近さ、この趣味のせいでちょっと困ったこともあってさ。
【ソウマ】 いや、絶対もっと前から困ってるだろ。
【モトヤ】 仕事の面接行ったときについ、「我が義を御社に捧げる所存!」って叫んじゃってさ。
【ソウマ】 完全にやらかしてんじゃん。それで面接官はなんて言ったの?
【モトヤ】 「採用という領地は取らせぬ」って。
【ソウマ】 ノリいい面接官だな。歴史コント成立させんな。
【モトヤ】 やっぱり上杉謙信モードは社会で使うと危険だわ。
【ソウマ】 社会どころか、家の外で使う時点で危険なんだよ。
【モトヤ】 じゃあ、逆に誰モードなら安全だと思う?
【ソウマ】 いや、歴史上の誰モードでも社会には厳しいだろ。
【モトヤ】 じゃあ、冷静に織田信長でいくか。「是非もなし!」って。
【ソウマ】 完全にあきらめてる奴の言葉だよ。就職を諦めんな。
【モトヤ】 じゃあ、豊臣秀吉の『鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス』的な精神で攻めるわ。
【ソウマ】 面接官を泣かせてどうすんだよ。社会的に追放されるわ。
【モトヤ】 歴史を活用するの難しいなぁ~。
【ソウマ】 その趣味を活用すること自体がそもそも間違いなんだよ。
【モトヤ】 いやいや、待てよソウマ。じゃあ、お前ならどの武将がいいと思うんだよ?
【ソウマ】 いや、俺はそもそも武将を日常で使おうとは思ってないから。
【モトヤ】 冷たいなぁ。俺はちゃんと真剣に趣味の相談してんのに。
【ソウマ】 その真剣さの方向性がズレてんだよ。趣味って普通もっと気軽なもんだろ。
【モトヤ】 じゃあ、日常で使える歴史人物の設定とかないの?コンビニで便利な坂本龍馬とかさ。
【ソウマ】 何その限定的すぎるシチュエーション。
【モトヤ】 例えば、おにぎり温めますか?って聞かれたら龍馬風に、「温めるぜよ!」って元気に答えるとか。
【ソウマ】 ただ語尾に「ぜよ」をつけただけじゃねぇか。龍馬に謝れ。
【モトヤ】 でもちょっと使いやすそうじゃない?「袋は要らんぜよ!」「レシートは捨ててくれぜよ!」
【ソウマ】 龍馬、ただの気さくな兄ちゃんになっちゃってんだよ。
【モトヤ】 じゃあ、ATMで現金下ろすときに、ちょっと徳川家康を降ろしてみるわ。
【ソウマ】 どういう状況だよ。
【モトヤ】 金額を入力するときに深呼吸しながら、「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス…」って言って、画面をじっと見つめる。
【ソウマ】 ATMでじっと待ってても金は出てこねぇよ。すぐ呼ばれるぞ、警備員に。
【モトヤ】 あ、そうか。待っちゃダメなんだな、ATMは。じゃあ、「鳴かぬなら殺してしまえ…」で行くか。
【ソウマ】 ATMを破壊すんな。即逮捕だよ。
【モトヤ】 じゃあ、家康ダメだな…。やっぱり武将は難しいかぁ。
【ソウマ】 武将というか、ATMが無理なんだよ。
【モトヤ】 じゃあ、カラオケで使える武将とかいる?
【ソウマ】 もうその武将シリーズ、やめろよ。
【モトヤ】 いや、絶対いるはずだって。例えば歌い終わったら、前田利家で「槍の又左、歌い切りました!」とか。
【ソウマ】 槍をマイクに持ち替えるなよ。戦国が歌謡祭になるだろ。
【モトヤ】 じゃあ、採点が低かったら石田三成で「我が心に一点の曇りなし!」とか言うのはどう?
【ソウマ】 それはただの負け惜しみだろ。
【モトヤ】 ちょっと待てよ、むしろ、受付で上杉謙信を使えばいいんじゃない?
【ソウマ】 また謙信に戻るのかよ。
【モトヤ】 受付で店員に「お一人様ですか?」って聞かれたら、厳かな表情で「我は生涯、独り身を貫く者なり…」って言う。
【ソウマ】 寂しすぎんだろ。カラオケでわざわざ宣言することじゃねぇよ。
【モトヤ】 あ、じゃあ逆に「四名様でよろしいですか?」って言われたら、「四十九年、一睡の夢…」って渋く言うわ。
【ソウマ】 人数に年齢重ねんな。普通に「はい」って言え。
【モトヤ】 あー、歴史難しいなぁ。やっぱり家でゲームでもしてるほうがいいか。
【ソウマ】 最初からそれでいいんだよ。無理して武将を日常に引っ張り出すからこうなるんだろ。
【モトヤ】 でもゲームもさ、結局戦国モノばっかりやってんだよ。
【ソウマ】 じゃあもう武将離れできてないじゃねーか。
【モトヤ】 だってさ、武将が好きすぎてゲーム内でも無意識に歴史再現しちゃうんだよ。
【ソウマ】 どういうことだよ、それ。
【モトヤ】 例えば、敵が攻めてきたら思わず援軍として塩を送りそうになったりさ。
【ソウマ】 敵に補給物資送ってどうすんだよ。ゲームオーバー一直線だろ。
【モトヤ】 あとは、最終決戦なのに領土取らずに引き上げたりとかね。
【ソウマ】 ゲームの目的忘れてんだよ、完全に。
【モトヤ】 あー、もうダメだ。謙信愛が止まらない。
【ソウマ】 趣味というかもはや病気だろ。
【モトヤ】 じゃあ、どうすればいいんだよ?
【ソウマ】 いっそ謙信の本を普通に読めばいいんじゃないか?変な遊びしないで。
【モトヤ】 本を読む…。あ、その発想なかった!
【ソウマ】 なんで一番シンプルな方法に気付かないんだよ。
【モトヤ】 よし、じゃあ本屋行って、上杉謙信の本買ってくるわ。
【ソウマ】 最初からそうしろよ。
【モトヤ】 でも店員に「袋はいりますか?」って聞かれたら、「敵に袋を送る!」って叫んじゃうかも。
【ソウマ】 だから、その癖をまずやめろっつってんだよ。
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