15. 伊能忠敬
歴史が好きな『モトヤ』と『ソウマ』の何気ない日常。
また『モトヤ』がズレたことを言っているので『ソウマ』が困っています。
こっそり...聞いてみましょう。
【ソウマ】ちょっとモトヤさぁ、最近やけに散歩にハマってるよね?
【モトヤ】あぁ、散歩っていいよね。道がある限り、僕は歩き続けるよ。
【ソウマ】伊能忠敬かお前は。
【モトヤ】正解です。
【ソウマ】いや違うだろ。
【モトヤ】今日もね、家を出て右にまっすぐ歩いて、郵便局を左に曲がって、そこから神社を越えてまたまっすぐ。
【ソウマ】随分具体的だな。
【モトヤ】そしたらまた家に戻って来ちゃったんだよね。
【ソウマ】ただの近所の一周じゃねぇか!それは散歩じゃなくて徘徊って言うんだよ。
【モトヤ】まぁ、道に迷うこともまた旅の醍醐味でしょ。
【ソウマ】だから近所の話だろ。
【モトヤ】でも僕はちゃんと地図を作ってるよ。ほら、これが僕の『近所沿海輿地全図』。
【ソウマ】近所沿海輿地全図?スケール小さいな、伊能忠敬もびっくりだよ。
【モトヤ】でも、この地図には秘密があるんだよ。
【ソウマ】秘密?
【モトヤ】この地図をよく見てるとね、途中で突然ルートが途切れてるでしょ?
【ソウマ】ホントだ。ここで何があったんだよ?
【モトヤ】途中でおばあちゃんに「あんたどこの子?」って言われて、話し込んでるうちに自分がどこから来たのか分かんなくなった。
【ソウマ】徘徊の先輩に絡まれてどうすんだよ!
【モトヤ】伊能忠敬もね、きっと散歩中にこういうことあったと思うよ?
【ソウマ】あるわけないだろ。
【モトヤ】あの人だって年取ってから旅を始めたんだから。「ワシはどこにいるのじゃ…」って迷っててもおかしくないでしょ?
【ソウマ】日本地図作った人が現在地見失ったら大事件だよ。
【モトヤ】忠敬だって最初は「散歩が好きなおじいちゃん」だったんだよ。
【ソウマ】そんな単純な話じゃないだろ!
【モトヤ】何事も大きな仕事ってのは、日常の延長線上にあるんだよ。俺も散歩を突き詰めたら、伊能忠敬みたいになれるかもしれない。
【ソウマ】何をカッコつけてんだよ、ただ道に迷っただけだろ。
【モトヤ】でも忠敬もこう言ってるよ、「学ぶに遅いということはない」って。俺も今から学んで、地図作りを極めようと思うんだよ。
【ソウマ】地図作りを極める前に、自宅周辺くらい覚えとけよ。
【モトヤ】まぁ、でも迷ったからこそ発見もあるんだよね。昨日なんて家の近所でパン屋を見つけたよ。
【ソウマ】それ昔からあるよ。
【モトヤ】しかも地元密着の小さなパン屋。
【ソウマ】だから昔からあるんだよ。
【モトヤ】そこにね、『日本一美味しいパン屋です』って書いてあったんだよ。
【ソウマ】自称だろそれ。
【モトヤ】でも、忠敬も言ってたじゃん。「地図を改めるは世のため人のため」って。
【ソウマ】急にいい言葉出してきたな。
【モトヤ】だから俺も言ったんだよ。「看板を改めるは世のため人のためです」って。
【ソウマ】ただの営業妨害だよ!
【モトヤ】そしたら店主のおじさんがね、「お兄ちゃん、どこの子?」って。
【ソウマ】またかよ!
【モトヤ】もう常連ですよ、僕も。
【ソウマ】常連の認識がゆるすぎるだろ。
【モトヤ】そうやって地域の人たちと触れ合いながら地図を作る。これが伊能モトヤ流だよ。
【ソウマ】いつの間に流派作ってんだよ。
【モトヤ】まぁ地図作りも散歩も、やっぱり人生も迷うくらいがちょうどいいんだよ。
【ソウマ】何かいいこと言おうとしてるけど、散歩と人生を同レベルに語るな。
【モトヤ】でもさ、僕と忠敬、共通点多いよね?
【ソウマ】どこがだよ。
【モトヤ】年齢を重ねても挑戦する姿勢とか。
【ソウマ】まだ若いだろお前。
【モトヤ】体力があるとか。
【ソウマ】老人と競うな。
【モトヤ】あとは歩きながら地図を描くとか。
【ソウマ】それだけだよ!しかもお前のは近所限定だろ!
【モトヤ】そろそろ日本地図に挑戦しようかな。
【ソウマ】近所で迷ってるやつに日本は広すぎるわ!
【モトヤ】じゃあまず隣町あたりから。
【ソウマ】隣町に入った瞬間に行方不明だよ。
【モトヤ】じゃあ今日も一歩から踏み出そうかな!
【ソウマ】結局散歩行きたいだけだろ!
【モトヤ】でもさ、伊能忠敬も最初は自宅周辺から始めたんじゃないかなって、俺は思うわけよ。
【ソウマ】まぁ確かに急に北海道から九州まで行ったわけじゃないだろうけど。
【モトヤ】だろ? 最初は「庭から玄関、玄関からポスト」くらいの距離から測ったはずだよ。
【ソウマ】スケール小さすぎるよ。忠敬が庭測ってる姿とか嫌だわ。
【モトヤ】そこで気づいたんだよ、「これじゃ世界は広がらない!」って。
【ソウマ】そりゃそうだろ、庭から玄関はもう庭師の領域だよ。
【モトヤ】だから俺も今日からもっと大きな地図を作ろうと思うんだよ。
【ソウマ】例えばどこを?
【モトヤ】まずは商店街。
【ソウマ】まだ近所だな!
【モトヤ】商店街の地図ができたら次は駅周辺、駅周辺が終わったら市内全域、やがては全国、そして世界だよ。
【ソウマ】壮大すぎるな。その頃には200歳ぐらいになってるよ。
【モトヤ】伊能忠敬だって50代後半からスタートしたんだよ。俺には時間がいっぱいある。
【ソウマ】お前の場合、時間があっても方向感覚が致命的にないだろ。
【モトヤ】方向感覚なんて後付けでなんとかなるもんだよ。地図見ればどこにいるか分かるし。
【ソウマ】だからお前がその地図作る側だろ! 作った地図が間違ってたら永久に迷うぞ。
【モトヤ】大丈夫、その時は近所の人に聞くから。
【ソウマ】結局、人頼みじゃねえか。
【モトヤ】忠敬だって地元の人にいろいろ教わったと思うんだよ。「あっちの角曲がったら美味しい団子屋あるよ」とかさ。
【ソウマ】地図作りに団子情報はいらないだろ。
【モトヤ】それが意外といるんだよ。腹ごしらえも大事だからね。
【ソウマ】そこは忠敬も団子基準で歩いてねぇだろ。
【モトヤ】いや、実際はね、忠敬もこう言ったらしいよ。「団子なくして旅はなし」って。
【ソウマ】絶対言ってねぇよ!勝手な名言作るな。
【モトヤ】まあ、俺の解釈だけどね。
【ソウマ】解釈の範囲が広すぎるよ。
【モトヤ】地図作りには休憩地点が必要ってこと。つまり、団子屋さんは現代で言うコンビニみたいなもんだよ。
【ソウマ】団子屋をコンビニで例えるな。店主もびっくりするわ。
【モトヤ】「団子一つで世界が広がる」ってね。
【ソウマ】なんかそれっぽいこと言ってるけど、結局団子食べたいだけだろ。
【モトヤ】まぁ正直、地図はおまけだよね。
【ソウマ】本末転倒だろ!
【モトヤ】それにさ、忠敬は歩くことで人生を学んだわけだろ。俺も歩くことで人生を学ぼうと思ってるんだよ。
【ソウマ】具体的に何を学ぶつもりだよ。
【モトヤ】まずは、自分の家への帰り方とか。
【ソウマ】それは人生以前の問題だよ。幼稚園で習うレベルだろ。
【モトヤ】あと、おばあちゃんとの円滑な会話法とか。
【ソウマ】それも地図関係ないし、ただの世間話だよ。
【モトヤ】でも、忠敬も色んな人に会いながら全国を旅したわけだろ? 俺も地元の人と交流を深めながら地図作りたいんだよ。
【ソウマ】いや、それはいい心がけだと思うけど、交流してる割にお前まだ顔覚えられてないじゃん。
【モトヤ】それがまたいいんだよ。地図を作りながら毎日が新しい出会いだよ。
【ソウマ】新しい出会いじゃなくて、毎回同じ人に「どこの子?」って聞かれてるだけだろ!
【モトヤ】まぁ忠敬もね、きっと出発の時にはこう思ったと思うよ。「迷っても進めば道になる」って。
【ソウマ】その言葉はなんかいい感じだな。
【モトヤ】でしょ?だから俺も自信持って散歩を続けるよ。
【ソウマ】まぁ散歩はいいけど、迷ったらちゃんと連絡しろよ?
【モトヤ】もちろん。「モトヤ、ただいま迷子中」って地図アプリで表示するから。
【ソウマ】地図アプリ使えるんだったら、自分で地図作る意味ねえだろ!
【モトヤ】あっ、バレちゃった?
【ソウマ】最初からバレてるよ!もういいわ。
【モトヤ】まぁ、人生は遠回りが一番近道だからさ。
【ソウマ】だからお前は普通に帰れ!
ありがとうございましたー!!!!
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では、また明日!




