卒業式のオマケ
タイムトラベル、と検索ワードにありますが、1話では全くそういうのはありません。
あまりしっかりとした文ではないので、そういうのが苦手な人は読まないことをおすすめします。
今日は私の学校の卒業式ッッ!
これで長かった6年間の小学校生活も終わりって思うと、寂しいような嬉しいような。
名前を呼ばれて返事をすれば、手渡された卒業証書。
毎年退屈なだけだった卒業式も、今年だけは少し特別に感じた。
そんな私には、毎日楽しみにしていたことがある。
それは、毎日の下校中。
必ず同じ時間帯、同じ道を犬を連れて散歩しているお兄さん・・・。
あ、別にストーカーじゃないですよ!
たまたま道が同じだけです!
ここまで言えばわかるだろうけど、そのお兄さんが私の好きな人。
話したことといえば、犬が可愛いとか挨拶とか、そういうのだけだから全然どんな人か知らないけど
見るからに優しそうで、綺麗な顔立ち。
『(惚れましたぁぁああ)』
今にも飛びつきそうな勢いで、お兄さんの横を過ぎる。
あぁ、何で名前くらい聞けないかなー・・・。
多分顔真っ赤だろうな・・・。
あ、遅れたけど私の名前は葉月 舞。
ありきたりの名前だから、そんなに気に入ったりはしてない。
卒業式のこの日、少しいつもより早いから、きっとお兄さんには会えないんだろうな・・・。
そんなことを思いながら、親に送ってもらうことはせず家に帰る。
そしていつもお兄さんが通る道―・・・。
「・・・」
やっぱりいない。
お兄さんどころか、卒業式が終わってすぐのまだ昼間の平日、人通りはすごく少なかった。
友達と帰りたいところだけれど、生憎私の帰る道に同じ方向の子はいない。
周りに点々といる嫌な雰囲気の人(多分ヤクザとか不良)、怪しい業者さんが怖かった。
少し小走りになったときだった。
ドンッッ
「!?す、すいませ・・・っ!!」
驚いて顔をあげると、恐そうなおじさん・・・。
「(ひッ・・・ひぁぁああぁぁあ!!!!)」
助けて、と叫びそうになる。けど、いろんな意味で無理だ。
漫画なら都合よくお兄さんとかが助けに来てくれるんだろうなー・・・
・・・少しの間。
その恐そうなおじさんが何か言ってきているかもしれないけど、私の耳には届かない。
恐すぎて頭が真っ白になっているらしい。
「(・・・逃げるべしっっ!)」
もう1度その人の顔を見ようともせず、とにかく横をすり抜けて道を駆け抜けた。
家までは数百メートル。まだ少し遠いけど、曲がり角を曲がれば大丈夫だろう。
次の曲がり角を曲がったら、コンビニに入ろうかな・・・。追いかけてきてないよね・・・。
そぉっと後ろを見ると、特に追いかけてくる人影はない。
さっきぶつかった人は、少し睨むうような素振りを見せていたけどすぐ仲間のような人たちの元へ戻って行った。
よかった・・・。
とりあえず一安心。
でもスピードは緩めず、曲がり角は曲がってしまうことにした。
ドンッッ!!!
「うぁ!!」
うわー・・・恥ずかしい・・・。今日はよく人にぶつかる・・・・。
恐い人じゃありませんようにっ!!!
「あっ、あの、すいません!!!」
顔を見ると、・・・あのお兄さん。
あぁぁああぁぁ・・!!!すごく嬉しいっ!
「・・・あ、大丈夫?」
久しぶりに聞く声も美しいっ・・・!!!
今ならセカイが薔薇色に見えますっ!(え、ちょっと皆引かないでっっ!?)
「だっ大丈夫です!!私が悪いんで・・・。あの、お兄さんこそ大丈夫ですか?」
「僕は大丈夫だよ。・・・あ。」
「え?」
わんっ、という鳴き声が遠くから聞こえた。見ると、お兄さんの数十メートル後ろにお兄さんの飼っていた犬。
「あぁっっ!ラスクっっ!!」
つっ捕まえないと!!逃げちゃう!
急いで追いかける。
お兄さんが先を越して、待て、と叫んでいた。
それから数分ほどラスクとの追いかけっこ。
普段なら何でこんなハメに・・・とか思うところだけど、今日はすごく嬉しかった。
でもお兄さんはぶつかるし逃げられるしで散々なんだろうな。
お兄さんごめんなさい・・・。
ラスクを捕まえて、軽く疲れた私は傍にあった土手に座った。
お兄さんは横に座ってくれた。
「・・・君、名前なんて言うの?」
「えと・・・葉月舞です。」
「そう。僕は林 悠斗って言うんだ。」
やったぁぁあ!!思わぬところで大情報GET!とか内心すごく喜ぶ私。
顔がニヤけてなければいいな。
「そうなんですかっ・・・。あの、ぶつかってすいません・・・」
「あはは、全然いいよ!よくあることだし。変な奴らに声かけられて逃げてたんでしょ?」
「まぁ、ハイ・・・。」
私の他にもいるんだ・・・・。ちっ・・・。・・・あ、・・・まぁいっか。
「あの、でも犬逃がしちゃって。」
「アレは初めてだったな、曲がり角だったから油断してた。」
「すっすいません・・・。」
「いいってば。」
よかった、こうして話すのは初めてらしい。
その時、近くの時計から3時を知らせる音楽。
どうしよう・・・1時半下校だから2時には着くはずなんだけど。
心配してるかな・・・。
「あ、じゃあ、私帰りますね・・・っ。家族が心配したらいけないし。今日は本当ごめんなさいっ!」
「うん、気をつけてね」
少し笑って、礼をして急ぎ足で家に帰った。
悠斗さんが、後ろで立ち上がった気がする。
どうしよう、今すごく幸せ・・・。
卒業式だった、ということは頭の中から抜けていた。
また、会えるといいな・・・・。