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【17】オタクの里の抜け忍

すごい話だった。


まるで、映画やドラマの話を聞いているようで、

それでいて今までのギャルさんの言動が、

ぴったりとハマり、それが現実なのだと知らしめる。


ギャルさんは、御崎かなたは、

30年先の未来から、タイムリープしてきたのだ。


自分の未来を変える為に、

友達を助ける為に、

悪い男を退ける為に、

亡くなるはずの老婆を救う為に、


僕と、恋をする為に。


「だましてて、ごめんね。

 でも、憧れだけじゃないよ。

 妄想じゃない本当の君を知って、

 私は、本当に君を好きになったんだよ」


ギャルさんが、僕を見る。

とても大人びた顔だ。

今なら、彼女の成熟した精神に納得がいく。


今目の前にいる少女は、本当は、僕の倍は生きている年上の女性なんだ。


「さぁ、もうこれで全部かな。

 私の罪と、秘密。もう全部言っちゃった。

 へへ。もうミステリアスな魅力はないかも

 ……真響たけるさん。もう一度聞かせて。

 こんな……擦り切れたおばさんだけど……

 まだ、私の事、好きって言ってくれる?」


ギャルさんは…御崎さんは、僕を見ない。

僕に選択の余地を残してくれているんだ。

きっと、ここで御崎さんを拒絶しても、

彼女は僕を恨まないし、責めないだろう。


気持ちは決まっている。

でも、良い格好の言葉が出てこない。

あぁ、そうか。うん。そうしよう。

そのほうが僕らしいじゃないか。


「エルフと人間が恋をしちゃいけないなら、

 どうして子供が作れるんだろう」


「え?」


「長命のエルフと、短命の人間。

 体が老いる時間は違う。けれど心はそうじゃない。

 心の年齢に年の差なんて関係ないじゃないか。

 俺は君が好きだ!!それだけ分かれば良いだろう!!」


「……真響くん?……それって……」


「あっ……ごめん!!つい要らないとこまで言ってしまった!!

 これね!サーキュラーシンボルのセリフでね!!!

 主人公カイルの息子カオンと、後半で再編入するヒロインのエルフのナリリが、

 結ばれるシーンで!!」


「ちょっと……待ってよ!!真響くん!!!」


「あっ!!あっ!!!」


最悪だ!!テンパってる!!

僕!!テンパっていますよ!!

この流れで!!これはダメだ!!

うわぁ〜〜!!!!


「真響くんさぁ……ちょっと、それはないよ」


「あ……あぁ……ご、ごめん」


「信じられない。ショックだよ」


「うっ……」


返す言葉もない。

なんで、こんな大事な時にこんな失敗を……


「ネタバレじゃん」


「うん……ネタバレだよね……ネタバレ?」


「そうだよ!!まだ四章のボス倒せてないって言ったじゃん!

 私、まだカイルとナリリは引っ付くと思ってたのに!!

 なに?カイルは他の娘と引っ付くの!?」


「え……うん。パンダール城の姫と……」


「え〜!!嘘だ〜!!だって!だって!!

 パンダール姫は、カイルの事、虫ケラって言ってたし!!」


「そうなんだよ!!そこがギャップでグッと来るんだよ!!

 ナリリが、次元幽閉された後で、傷心してる時にさ!

 パンダール姫が慰めに来るのが……もう、人間味に溢れてるというか

 不器用だけど……可愛んだよな〜ありゃカイルも堕ちるさ!!」


「え〜。なんか、ショックだな〜。カイルには、ナリリと引っ付いて欲しかったのに、

 でも、カイルとパンダール姫の子供が、ナリリと引っ付くの……なんか、少し切ないね」


「そぉ〜なんだよぉ〜!!もう、最後の結婚式で年老いたカイルと、

 ナリリが会話するシーンなんてさ……ボロボロ泣いちゃうよ!!」


「あ〜〜っ!!またネタバレじゃん!!」


「あっ!!ごめん!!」


「もう〜!!気をつけてよ!!

 ………あれ?なんの話ししてたっけ?」


「あー御崎さんが、未来からタイムリープしてきた話だよ」


「ああ。そっか。うん……それで…結局、真響くんは……?」


「いや……もう伝わってるでしょ?」


「口に出して言ってほしいの、

 十年以上、恋い焦がれたんだから」


「……うん。御崎さんが……か……かなたが、本当は何歳でも関係ないよ。

 きっと、僕の事をこんなに思ってくれる人は、後にも先にも、

 かなたしか居ないよ。うん。絶対にそうだ」


「な……名前で…呼ばれるの……恥ずかしいね」


「と……年上なんだからさ!!そこは軽く受け止めてよ!!」


「か…関係ないもん!!四十歳でも五十歳でも!!

 恥ずかしいものは!恥ずかしいの!!!」


「うぅ〜〜〜!!」

「〜〜〜〜〜!!」


僕らは、二人して顔を真っ赤にしてもだえた。


なんだか、大きな風呂敷を広げたのに、

包むものは、小さいものしか無かった。


そんな感じだ。


でも、僕らはそれを大事に包めたと思う。

決して解けてしまわないように、硬く、安心できるまで。


そうして僕たちは、付き合うことになった。

実質、お互いに婚約に近いと思っている。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



それから、僕は毎日病院に通った。

かなたの家族は、彼女の素行のトラブルで疎遠になっていて、

あまり彼女に時間を割いてはいなかった。


かなたは「これから時間をかけて、関係を修復したい」と言っていた。

深くは聞かない、協力できる事があればするまでだ。

僕にできるのは、この先、かなたの家族と顔を合わせた時、

彼らが彼女の事を見直すくらい、きちんとした男になる事。


かなたに、それを伝えると、少し馬鹿にするように笑ってから

「今のままで十分だよ」と言ってくれた。


かなたの退院は、夏休み明けに間に合わなかった。


僕は、入学式の当日に、名切さんを探した。

名切さんは、いつも通りの綺麗な黒髪をなびかせていて、とても安心した。


かなたに、それを伝えると、少し涙くんで「本当に嬉しいね」と言っていた。

きっと、僕の知らないところで、かなたと、名切さんは、たくさん話し合ったんだろう。


それから、名切さんとも、少し仲良くなった。


かなたの病室で、何度も会うたびに砕けた会話ができるようになって、

学校でも良く話す様になった。

野田のやつは、そんな僕を見て「オタクの里の抜け忍め。いや、抜け陰か?」などと揶揄してきたけど、

相変わらず、僕等は仲が良い。


十月になって、かなたが学校に復帰してから、

僕と彼女の関係はすぐに広まり、クラスは大騒ぎになった。


クラスの中心だった男子たちには、キツく当たられたし、

女子たちには、変な噂を立てられたりもした。


でも、僕等はちっとも気にしなかった。


野田と名切さんは、僕たちの為に怒ってくれたけど、

ただ、二人への信用を強めるだけのイベントだった。


次第に、僕たちは、四人で過ごす事が多くなって、

それは高校を卒業しても変わらずに続いた。


大学で、名切さんと野田が、なんかややこしい事になって、

苦労したりしたけど……まぁ、それも良い思い出になった。


そして、僕とかなたは、結婚した。


もうすぐ、子供も産まれる。

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