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嫉妬

「ニカ、言いたい事があるなら直接言ってくれ」

「別に」


午後の授業を終え、さて、寮に帰るかと荷物を鞄に詰め込んでいるとニカに影が差した。

すっぽりとニカを覆ってしまう大きな影。


なんだ? とクラスメイトも面白がっているのか野次馬している。

ニカは思わず顔を顰める。すると、ずるりと眼鏡が落ちかけたが、ルキが俊敏な動きで位置を戻した。


ニカは目が悪いわけではない。むしろ、見え過ぎる。なので敢えて世界をまともに見えない厚いレンズ越しに見ているに過ぎない。


誰にでも朗らかで人当たりの良いルキは、ニカにだけ冷たい。

凛々しい眉毛が皺寄っている。この顔のルキを前にすると、ニカも似た顔をしてしまう。


「じゃあなんで昼間ずっと見てたんだ」

「勘違い。ルキ、自意識過剰」

「浮気者って、言ってた」


ニカは目が良く、ルキは耳が良い。

上の階から眺め、誰にも聞こえない程の小さな呟きも拾ってしまうルキの耳に、ニカは口をへの字に曲げた。


「じゃあ、浮気者。愛に真摯に、愛に偽りなく。知らない?」

「知ってる。でもニカ、今まで俺の事避けてたじゃん。いつも逃げるし。すぐ捕まえるけど。なに、急に嫉妬?」

「嫉妬?」


こて、と首を傾げて考え込むニカ。

そこからか、とルキはニカの両肩を掴んで項垂れた。小さな両肩は大きな掌ですっぽり包まれる。


「醜い嫉妬ですこと」


これでもかとまつげをバサバサさせてつんと顎を上げて吐き捨てたのは、よくルキに付き纏っている女生徒。

ソウモク王国出身の貴族令嬢である。

何度もニカにルキとの婚約解消を勧めてくるのもこの令嬢だ。名はアマリリス・ベッケロン。


「醜い、のは。教えに背く?」

「愛に真摯に、愛に偽りなく。ご存知でしょう。醜い嫉妬なんてルルベリアーナ様もお嫌いでしょうね」

「美しい嫉妬、なら。教えに、背かない?」

「なにを仰ってますの?」


ぽつりぽつりと言葉を溢すニカに、アマリリスは問い返すももうニカに言葉は届いていない。


「帰る。ルキ、帰る。どいて」

「え、なに、嫉妬? 本当? ねぇ、ニカ。待って帰るなら俺も」


ルキの手を押し除けようとして両腕にぶら下がっているニカをあっさりと抱き抱え、ルキは颯爽と教室を出ていく。

置いて行かれたアマリリスは、様子を見ていたクラスメイトをぐるりと見回し、拳を握って微笑み合う。


「やっと、あのニカがルキに興味を持ちましたわ!」

「ルキもルキだよな。緊張するからってニカにだけ顰め面見せてたら嫌われるだろ」

「あの二人本当拗れてるよな」

「婚約解消は親の決めた事だからと言いながら嫌そうな顔をするニカ可愛いんですから〜」

「あ、ニカに絡みたいだけの人だこの人」


アマリリスを筆頭にやいやいと思い思いにルキとニカの事を揶揄い出す。

周りから見たらじれったくて仕方がないのだ。


どう見ても過保護過ぎるルキに、構われ過ぎて嫌がっているニカ。

なんだかんだで心の底からルキを嫌っているわけではないとわかった事により、見守っていたクラスメイト達はほっとしている。


「でも、ニカどうするんだろうな」

「って言うか美しい嫉妬ってなんだよ」


疑問だけが残ったのだった。

身長差、体格差は手癖ですね。

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