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第61話 人気者の宿命

「はぁ~~~……どうしようかねぇ~~」


大量のオークを仕留めた後に襲い掛かってきた裏の組織に所属する連中。

しっかり全員殺してスキルまで奪ったが、それだけで解決する問題ではない。


(クロック、か。名前を聞いたことがあるのは本当にチラッとだけだから、あんまり詳しいことは解らねぇんだよな)


裏の組織と言えど、上が頭の切れる者たちであれば、これ以上手を出そうとすれば自分たちの組織が潰れると危機察知し、貴族の依頼から手を引く。

だが、当然何が何でも依頼を達成して面子を守るという考えを持つ者もいる。

寧ろ……そういった考えを持っている者の方がかなり多い。


(自分から乗り込んで潰すか? 縛りがなければ無理ではないと思うけどなぁ……いや、本当にどうしようか)


自分が依頼した組織が標的によって潰されたと知れば、クロックへギールを殺してくれと依頼した貴族も危機を感じて手を引こうとする。

勿論、この様な場合も依頼した貴族が馬鹿であれば、考え無しに今度は別の裏組織にギールの抹殺を依頼する。


(……割と金が入ったし、敵対してそうな組織に牽制してくれって頼むか?)


いつも通り狩りを行い、依頼を受けて金を稼いでおり、オークの肉に関しては料理店に直接売ってギルドよりも割高で買い取ってもらっている為、懐の調子は先日までと比べれば寂しいものの、決して悪くはない状況。


オークは骨も一応武器や防具の素材として使えるので、臨時収入としては悪くない額となった。


(それか、もうさっさとディーディアから離れて、次の目的地に向かうしか……ないか?)


霊化の効果が付与された指輪を手に入れ、念願だった雷魔法のスキルブックを手に入れ、習得。

偽善と思われるであろう行動で大金を失ったが、それでも気分は不思議と悪くない。


元々ディーディアには役立つマジックアイテム、スキルブックなどを手に入れるために訪れた。

それを考えれば、一応目標は達成したと言えなくもない。


「ギールじゃないか。そんな顔して何を悩んでるんだ?」


「ぱ、パルダさん」


いきなりギールに声をかけてきた人物の名はパルダ。

巨人族の男性であり、アミ―ディオ・シュルパートのパーティーメンバーであり、屈強なタンク。


巨体な体は子供たちに怖がられそうだが、その表情は戦闘時以外は優しいもの。


(…………まぁ、別にパルダさんには話しても良いよな)


先日、狩りの最中に何が起こったのかを説明。

パルダは直ぐに誰がギールを殺すように裏の人間に依頼を出したのか分かり、表情には薄っすらと怒りが浮かんでいた。


「そんな事があったんだね……とりあえず、一人で撃退してしまうのは流石だね」


「ど、どうも」


「それで……ギール君はそいつらをどうしたい? 依頼してきた人物を潰すのは難しいと思うけど、クロックを潰すのはそこまで難しくないと思うよ」


ギールよりも長い期間ディーディアに滞在しているため、裏組織の関係もある程度把握していた。


クロックは中堅より少し下に位置する裏組織であり、上位の組織と繋がりがないため、バックの存在に怯える必要はない。


(多分、こういう場面で嘘を言う人じゃないよな……それなら、乗り込んで全員潰すか?)


報復の恐れを抑えるために、やるのであれば全員殺すのは確定。

斥候の経験が多いギール(タレン)は屋内での戦闘にもそれなりに自信がある。


「ギール君がクロックという組織を潰すなら、僕も手伝うよ」


「えっ!!??」


まさかの申し出に口を両手で塞ぐも、驚きの声が漏れてしまう。


「いや、あの、それは……」


「ギールは責任を感じちゃうと思うから、そうだね……パーティーメンバーから誘えるのは、後一人かな」


どうやらパルダの中でギールがクロックを潰すのであれば、手伝うことは既に決定事項となっていた。


「それはそうかもしれませんね……って、パルダさんたちもそれはそれで不味いじゃないですか!!」


「いやぁ~~、恥ずかしながらも冒険者活動をする上で味方になってくれる人は多いんだけど、それなりに敵も多くてね」


何も裏の組織に潰し、殺しを依頼するのは豪商や貴族だけではない。

金さえあれば依頼を受けるのが裏の組織というもの。

冒険者からの抹殺依頼を受けることもあり……色々とブチ切れたアミーディオたちは襲撃者をボロボロのボロ雑巾にして組織名を聞き出し、アジトを襲撃したことがある。


勿論、それは一度や二度の話ではない。

そのため、裏の組織がアミ―ディオ・シュルパートとその仲間を潰して欲しいという依頼を頼まれても、報復を恐れて断ることが多い。


因みに……依頼してきた人物が冒険者である分かった場合、複数の方法で完膚なきまでに潰す。


面や普段の精神面だけを考えれば正義のヒーローみたいな連中と思われるかもしれないが、過酷な世界でどう生きていけば良いかなど……そういった方法をしっかりと知っており、それらの方法を実行出来るメンタルも持っている。

つまり……敵に回せば一番恐ろしい連中でもあるのだ。


「クロックを潰せば、依頼してきた人物にも良い牽制になると思うよ」


「そ、そうかもしれませんね…………えっと、お願いしても良いですか?」


「勿論!! 任せてよ!!!」


裏組織を潰すのに、強力な仲間が加わった。

一先ず手伝ってもらうため、お金の話をしようとしたが……パルダは特にそういうのは要らないと断言した。


「いや、でも一応危険な行動ではあるんで」


「ギール君は、リスクを背負ってでもシールちゃんを助けてくれただろ。アミーディオにとって、彼女は妹の様な存在……いや、娘に近いかな。彼女を助けようと必死に動いていた時の彼は……傍に居てこっちが苦しくなる程疲弊していた」


僅差で競り合いに負けた時など、本当に見ていられなかった。

その思いはパルダだけではなく、他のパーティーメンバーたちも同じ気持ちだった。


「あそこで本当にシールちゃんを救えなかったら、アミーディオは……自殺してたか、犯罪者になってたかもしれない」


奴隷となったシール・サーブレットを救う最終手段として……強奪という方法がある。

しかし、当然のごとくその行為は本人にどれほどの正義感があったとしても、犯罪であることに変わりはない。


どちらかの道へ進んでいたかもしれないリーダーを、仲間を助けてくれた。

無償で裏組織を手伝うことなど、パルダにとって一切苦ではなかった。

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