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第60話 首チョンパ

「ッ!! あっぶねぇな……いきなり襲ってくるとか、礼儀知らずにも程があるんじゃねぇのか?」


いかにもな恰好をした人物が周囲に五人。


ギールは奇襲の一撃を見事に躱したが、それなりの寒気を感じていた。


(そこら辺の裏ゴミではない連中か……面倒だな)


面倒な相手だと思いながら、口端は薄っすらと吊り上がっている。


「どこの誰なんだって聞きてぇけど、どうせ教えてくれねぇよなぁ……まっ、別に良いよ」


二振りの竜戦斧を取り出し、それなりの寒気を感じながらも、オルディ・パイプライブを発動。


縛りはスキルの使用が四つ。

それなりの実力を持った者たちが五人という、相手が明らかに数的に有利なこともあり、魔力の使用が不可になることはなかった。


「ッ!! おらっ!!!!!」


身体強化を使用したタイミングで接近戦三人組が仕掛け始める。


接近戦組は短剣、短刀、双剣と木々という障害物がある環境でも扱いやすい得物を使用。

全員魔力を身に纏い、マジックアイテムを身に付けていることで、身体能力を強化。

三人の中で一人だけ身体強化のスキルを有しており、更に素早い動きで重い一撃を放てる。


ギールに襲い掛かった五人組は当初……少々過剰戦力。

同じ一対複数の戦いであっても、対人戦に限れば自分たちの方が有利。

そう思っていたが、戦闘が始まってから数分後、前衛の一人が竜戦斧によって首を切断された。


「「「「ッ!!!???」」」」


決して彼らの実力が低かった訳ではない。

寧ろ対人戦……複数で一人を叩く技術などに限れば、そこら辺の冒険者よりも上である。


後衛の一人は弓よりも矢を素早く発射できるクロスボウを装備して前衛をサポートしており、紙一重の場面は数回ほどあった。


それでも……スキルの差というのは大きく、エレキボールを飛ばして他二人の動きをほんの少し妨害。

その間に脚力強化を使用されて距離を詰められると、もう間に合わない。


(良い感じに、崩れてくれたな)


後衛で経過観察。

場合によっては逃走して情報を持ち帰ることが仕事の者まで参戦。

見事な腕前で毒液付きの短剣を投擲するが、嗅覚強化を使用しているギールはそれを即座に感知。


防御という選択肢を取らずに回避し、チャンスと思ってうっかり近づいてしまった男の脚をぶった斬る。

これにより、実質戦況は一対三となった。


これでもまだギールが不利な状況ではあるものの、今回襲い掛かってきた者たちが壁を越えた回数は二回。

世間一般的に考えればそれなりの強さを持つ者たちではあるものの……一応ギールはかなりの修羅場を越えてきた猛者である。


前衛が三枚と後衛が二枚という状況でなんとか拮抗していた戦況は、一枚でも前衛が減れば……そこから崩れるのは早かった。


「ッ!? 貴様、毒、をっ!!!」


「なんだよ、俺が使ったらダメなのか? それはちょっと理不尽だろ」


こうれなれば、軽口を叩きながらでも戦えてしまう。

相変わらず魔力を纏ったクロスボウの援護は厄介だが、それでも前衛の数が減れば避けながら前衛の攻撃をぶちかますのも難しくない。


最後の前衛が首を刎ねられた時点で、後衛二人は逃げる準備に入っていた。

非常に合理的な判断であり、二人の行動は決して間違っていない。

まだ……まだギリギリ数の有利はあれど、もう根本的な強さを覆せる数ではない。


「ふんっ!!!!」


「ッ!? ぁ……ぁ」


咄嗟の判断でギールは竜戦斧をぶん投げた。

勿論魔力は纏っているため、しっかり飛んでくる攻撃を見て対応しなければ、どうにか出来るわけがなく……呆気なく首を斬り裂かれた。


「後は、お前だけだな」


「ひっ!!!!????」


悪魔の囁きが聞こえた。

その囁きは命を捧げれば強大な力をくれる訳ではなく、確実にその命を抉る滅びの声。


ギールはあっという間にもう一人の後衛に追い付き、もう一振りの竜戦斧で首を切断。


「はぁ~~~……とりあえず回収しないとな」


殺し終えた死体を一か所に集め、投擲した竜戦斧も回収。


「があああああああああっ!!!???」


「あんまり大声出すなっての。ちょっと焼いただけだろ」


本当にギリギリ生き残っていた足を切断された男の切断面にブレスを使用し、一応失血死を阻止。


「お前が所属してるアジトを教えてくれ」


ギリギリ生きている生き残りが何か言葉を発する前に、ギールは男の爪を引き千切った。


「~~~~~~ッ!!!」


新たな痛みが襲い掛かり、言葉にならない痛みが男の行動を封じる。


「とりあえず爪に関してはあと十九……っと、片足は俺が切断してしまったんだったな。それでもまだ十四個あるんだ。さっさと答えてくれよ~」


男の反論を無視し、ギールは特に表情を変えることなく爪を毟っていく。

歯に即死出来る毒薬でも隠し持っていれば、地獄を耐えることなく逝けたかもしれないが、男はその準備を怠っていた。


「い、言う。言う、から……もうっ!!??」


「良かった良かった。ほら、さっさと言ってくれ。俺の手が狂ってしまう前にな」


竜戦斧を顔の直ぐ横に振り下ろし、嘘を言えば即座に拷問を続けるという意志を示す。

男には所属する組織に対してそれなりに忠誠を持っていたものの……淡々と拷問を続けるギールに怖気づき、所属している所属名とアジトの場所を正直に口にしてしまった。


「ご苦労さん」


「ぎ…………」


ギールに対する恨み言を呟く前に、首を切断され、あっさりあの世へ連れていかれた。


黙々と拷問を始めたものの、ギールは所属しているアジトの場所を教えろとしか口にしてない。


ただ男が所属しているアジトの場所を答えれば見逃してもらえると勘違いしただけ。


(さて……これから色々とどうするか悩むところだな)


自分たちを襲って来た裏の人間、組織。

自分を襲う様に組織に依頼を出した人物を潰すか脅すか殺すか……色々と悩む一件。


それらについて考える前に大き穴を掘り、そこに殺した裏の人間たちを放り込み……ブレスを放つ。


「……もう良い感じかな?」


それなりに裏の人間たちを焼き、もう燃やすところが殆どなくなったところで、土を覆いかぶせて完全消化。


「裏の人間に襲われるとはなぁ……この一件で諦めてくれれば良いんだが……てか、普通は諦めるよな」


残念ながら、本当に普通である人間であれば、そもそも恨み言があっても裏の組織に依頼して、誰かを殺そうとはしない。

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