第53話 全員頑張った
「ぜぇええあああああッ!!!!」
グロンはヴェーラが跳ぶよりも速くクロススラッシュを飛ばした。
当然、放たれた十字の斬撃刃は闘気も含まれており、中心部分に関してはかなりの高位力を誇る。
「ジャっ!!??」
これまでの与えた攻撃の中で、一番の大ダメージが入ったが……切断には至らず。
それでも多くの血を流すほどのダメージを与えることに成功し、そこに間髪入れずヴェーラが全力投球をぶちかます。
「ぬぅうううらぁあああああああああッ!!!!!!!」
「ッ!!!?? シャ……ハ、ッ」
鬼人族の肉体に魔力による強化と身体強化、腕力強化のスキルが重なり、しっかり腰の入った投擲を放たれ、見事大剣はグロンが与えた十字傷の中心から強敵を貫いた。
「ど、どうよ?」
フラグに聞こえなくもない声を零すヴェーラ。
ギールもまだ気を抜かずに竜戦斧を話さず構えていたが……ヴァイスサーペルスが地上に持ちてきてから十数秒、ピクリとも動かなくなった。
「殺った、みたいね」
「いぃやっほ~~~~ッ!!!!」
完全に死んだことを確認し、四人とも反応の差はあれど喜びが表情に現れていた。
「おいおい、騒ぐのは良いけどまず血だけ回収しようぜ。皆ビン持ってるか?」
グロン以外のメンバーは素材回収用の空のビンを持っており、傷口から零れ堕ちてしまう前に血を大体四等分に回収。
(まさかこんなに早くBランクモンスターと遭遇して倒すことになるとはな……あれ? 俺……ミディックには休息を取りに来たんだよな)
眼玉や鱗、内臓に肉などを解体しながら、ミディックに訪れてからの日々を思い出す。
これまでと比べて丸一日、あまり体を動かさずに過ごすという日々は、いつもより多かった。
それは間違いないのだが……体が鈍らない様に、それなりに周辺の森を探索し、依頼をちょいちょい受けていた。
それに関してはギールとしても、体が鈍らないようにするために必要だと解っていたため、後悔はしていない。
しかし……フォレストパンサーや今回のヴァイスサーペルスとの戦闘などを考える、果たして自分はじっくり休息を取っていたのか……自信を持って断言する必要は特にないのだが、客観的に見て休息中に戦う様な猛者たちではない。
「そういえば、配分はどうする?」
「どうって、良い感じに四等分で良いだろ。全員やることやったんだし」
ヴェーラの言葉に対し、ギールは即座に等分すべきと答えた。
「あら、それで良いの? 誰もサボってないのは確かだけど、一番の功績はギールだと思ってるんだけど」
「あれですね。両手でヴァイスサーペルスの巨体を放り投げたの。あれは僕も、大きな功績だと思ってます」
「……二人の言う通りね。あれが機転となって一気に終わらせることが出来た」
三人ともお世辞はなく、心の底から思ったことを口にし、ギールの働きを賞賛する。
(……本当に強い奴らに褒められると、照れるな)
薄っすらと表情に照れを隠しながら、いつも通りの態度でそれならと、要望を伝える。
「そんなに俺のことを褒めてくれるなら、街に戻った時の夕食は三人に奢ってもらおうか」
ギールの頼みを三人は迷うことなく了承。
そして十数分後、ようやくヴァイスサーペルスの解体が終了。
「はぁ~~~。つ、かれた~~~~~。早く街に戻りたいわ~」
「そうね。ふかふかなベッドで寝たいわ」
やることが全て終わった。
どうせなら一時間ほど休息を取り、その後は全力ダッシュで日が暮れる前に街へ戻るのもあり。
そう思いながら、全員何かを忘れていたが……体力回復の休憩中、グロンがそれを思い出した。
「そういえば、僕たちって確か……ホリートの泉の水を汲みに、ここまで来たんでしたよ、ね?」
「「「…………あっ!!!」」」
三人とも綺麗にハモり声を上げてた。
当然、三人ともギャグではなく、ヴァイスサーペルスを倒した達成感から、本当にギルドからの指名依頼内容を本気で忘れていた。
今ここあでグロンが思い出さなければ、三人はミディックの冒険者ギルドからまたここまで来る羽目になっていた。
「グロン……超ナイスだ。いや~~、本気で忘れてた」
「私もだよ~。本当に助かったよ、グロン!!」
「恥ずかしながら、私もすっかり忘れていた。ヴァイスサーペルスを討伐出来たのは結果的に良かった、泉の水を汲み忘れていたら、無駄な時間を消費するところだった」
ビンはまだ残っているため、ホリートの泉の水を汲むことは問題無く終え、四人は本当にその日の内にミディックへ戻るため……スキルの使用、もしくは魔力を纏って身体能力を強化し、魔力を消費しながらミディックへ帰還。
「えっ!!!!????」
四人からの報告に、受付嬢は詳細を口に出さず、ギリギリでストップしたものの、驚きの声までは抑えきれなかった。
その場では一先ずホリートの泉の水を納品し、一人金貨五十枚を受け取り、モンスターの解体に使用される倉庫へ移動。
そこで全員、自身に必要ない分の素材だけ鑑定してもらい、売却。
報酬金である白金貨二枚は四等分によって一人金が五十枚の配分となったが、ヴァイスサーペルスの素材を売却したことで、余裕で一人白金貨二枚以上の報酬が手に入った。
「ギール! 今日は勝たせてもらうわよ!!!!」
「……良いぜ、返り討ちにしてやるよ!!!!!」
酒場でがっつり食べてエールをたっぷり吞めば……本日の疲労度的に、その場でぶっ倒れても仕方ない。
しかし、四人は先日と同じく酒場の次はバーへレッツゴー。
そしてヴェーラはギールに吞み勝たない事には、グロンという非常に好ましい雄を食べられないと悟り、今日も吞み比べの勝負を挑む。
当然、負けた方が勝った方の代金を奢る。
本日の報酬額、素材の買取金額を考えれば屁でもない金額ではあるが……決して少額ではない。
強敵であるBランクモンスターを討伐したという達成感もあって、二人のテンションはいつもより高く……先日より速いペースでカクテルが消費されていく。
「だっはっはっは!!! もうちょい自分の体調を把握してから、勝負を挑むんだな!!!!」
「あぁ~~……グロンの、チ〇コ、がぁ……」
お下品な言葉を零しながら、きっちり頼んだカクテルは呑み干しながらも……無念と言わんばかりの表情で、テーブルに顔を突っ伏した。




