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第50話 狩られて食われてたかも

「なぁ、ちょっと俺と飲み比べしないか」


「ふ~~~ん……良いじゃない。乗ってあげる!」



顔合わせをした日の夜、親睦を深めるために四人は一緒に酒場で夕食を食べた。

そしてその後、ヴェーラの提案でとあるバーへ行き、二次会が始まる。


(あっ……もしかしなくても、多分そういうことだよな)


伊達に七年間も冒険者をしておらず、その間はそこまで大きく成長していないとはいえ、仲間たちがガンガン前に進むため、それなりの修羅場を経験してきた。


その経験もあって……このままグロンを放っておけば、ヴェーラにパクリと食べられてしまうと、本能的にグロンの貞操危機を察知。


狙われているのが自分であれば、ギール(タレン)としては超超ウェルカムなのだが、高嶺の華に手を伸ばし続けるスーパーチェリーボーイであるグロンが襲われてしまえば……為す術なくパクリと美味しく食べられてしまう。


人によっては良い思い出かもしれないが、どう考えてもグロンにとってはトラウマになりかねない。

相手がオリビアの様なそういうことにそこまで積極的ではないクールエルフが、珍しく熱に当てられているとかであれば、逆に気を使ってサラッといなくなる。


しかし、性力に関して割と盛んな鬼人族の女性が相手では、このままでは確実に初めての行為がトラウマとなり、色んな意味で目標への活力が潰されかねない。


そんな悲劇を食い止めるため、ギールはヴェーラに吞み比べを挑んだ。

ドワーフほどではないが、鬼人族の者たちもそれなりに酒は好きであるため、ヴェーラはギールの挑戦に不敵な笑みを浮かべながら受けて立った。



「ふぅ~~~~。流石、ナリッシュと比べれば断然強かったな」


「…………」


軽口を叩くギールの隣で、ヴェーラは完全にバタンキュー状態。


「あなた……本当に強いのね」


ヴェーラと友人と言える間柄であるオリビアは、吞み比べで友人に勝利したギールに驚愕の目を向ける。


「一応、ドワーフと呑み比べられるぐらいには、強いらしいよ」


「そう……とりあえず、吞み比べはあなたの勝ちだから、ヴェーラは払う物は払わないとね」


カクテルを呑みながら、ヴェーラはもし私が吞み比べで負けたら、全額奢ってあげると口にしていた。

その宣言を実行させるため、オリビアはヴェーラの懐を探り……お釣りが少し出るほどの金貨を店員に渡す。


「こいつの事は、オリビアに任せても良いよな?」


「えぇ、問題無いわ」


体格的にはヴェーラの方が完全に大きいが、壁を同じく三回越えているため、そこまで重さを感じることはなく、背負って運ぶことは可能。


「今日はあれだから、二日後の朝九時から出発で良いかしら」


「分かった。集合場所はギルド前で頼む」


そう言ってギールとグロンは二人と別れ、宿泊している宿へと向かう。


「あ、ありがとう、ギール」


「グロン……お前、もしかして自分がどうなるか解ってたのか?」


ギールは意図してグロンを助けた。

それは間違いないが、正直なところ……グロンが自身の危機を理解していると思ってなかった。


「えっと、その……何と言うか、ギルドの部屋で会った時に、こう……ぞくっとしたというか、ヴェーラさんの眼が狩人の眼をしてるように思えたんだ」


「へぇ~~~。まぁ、間違ってはいないなら。カクテルという名のアルコールで潰されて、その後はじっくりベッドの上で食われてただろうな」


「く、食われるってことは……そ、そそそういう事、なんだよね?」


普段であればやや赤面するところなのだが、今回に限っては血の気が引いていた。


「お前が考える通り、そういう事になってただろうな……あぁいう女傑? みたいな奴が相手だと、やってる最中にこっちが食われそうになっるからな~」


ギール(タレン)にも過去に一度だけ逆に食われかけた経験があるため、直ぐにヴェーラの考えを察知出来た。


「とりあえず、明後日から夜は気を付けた方が良いぞ」


「えっ、ちょ! ま、守ってくれないのかい!!!」


「そりゃ俺は俺で、グロンはグロンで目的があるだろ。ずっと守ってやることは出来ない。けど……あれだな、闘気を習得したってなるとこれからも似た様なことが何度も起こるだろうな」


「………………」


グロンは自分の顔から血の気が引いて行くのを感じ取った。


少し離れた場所でオリビアと話しながら、二人が吞み進めていくペースと量を見ていた。

とてもじゃないが、自分はあれ程の量のカクテルを、二人のペースを飲むことは出来ない。


絶対に吐いてしまうと断言出来た。


「グロン、世の中にはアルコール耐性を上げる。もしくは、酔いを治すマジックアイテムの指輪とかがあるんだ」


「そ、そんな都合が良い物がこの世に!?」


「錬金術師がそういうのを造るかは解らないけど、ダンジョンの宝箱から出てくるマジックアイテムには、そういうちょっと冒険では役に立たなくないか? っていうマジックアイテムが手に入るらしいぞ」


ここ最近で一番カクテルを呑んだが、自身の秘密を隠すだけの判断力は残っていた。


「とりあえず、明日街を周ってそういうマジックアイテムが売ってないか探すか」


「う、うん!!!」


冒険者が酒の席でそういったマジックアイテムを使用するのは、ややマナー違反……暗黙のルールを破る形になるが、襲われて食われるのを回避するためとなれば、致し方ないと言えるだろう。


約束通り、二人は翌日の朝食後からミディック中のマジックアイテムを売っている店を周り、昼食を食べ終えてから数時間後……ようやく目的のマジックアイテム、アルコール耐性の効果が付与された指輪を発見。


効果がそれなりに強く、元々グロンがそこまで弱くもないということもあり、装備すればギールに近い耐性を得られる。


その分値段はたかがアルコール耐性の効果が付与された指輪とはいえ、それなりにしたが……グロンは一切悩むことなく購入。


先日の一件で、別に尻の穴が狙われる寒気を感じた訳ではない。

しかし……それでも、女性に食われるというのは、男として色々と終わってしまうと思い、指輪の購入には全く悩む悩まなかった。

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