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第43話 明確な理由は言えない

「やっぱさ~、最近あいつ調子乗ってねぇか?」


あいつという言葉が指す人物は、目標の為にあえてソロで走り続けるルーキー、グロン。


「いや、別に調子に乗ってはいないんじゃない? いつもボロボロで帰ってきてるし、変に女遊びをしてるとかは聞かないし」


「けどよ、先輩たちだって俺らの中じゃ頭一つか二つ抜けてるとか……そんなことねぇのに、やたらグロンの奴を持ち上げるだろ」


(……ただの嫉妬やんけ)


こっそり聞いてるのがバレないように、心の中でそっとツッコむ。


しかし、ベテラン以上の冒険者たちが度々グロンを持ち上げている……というのは一応事実だが、いつまであの状態が続くのかというからかいも含まれている。


ソロで活動してれば自然と死ぬ可能性が高まる為、殆どの者たちが早い内にグロンは冒険の途中で死ぬと考えていた。


「そりゃあ、ボロボロになりながらではあるけど、オークを一人で倒したりしてるしな」


「俺らは冒険者だぜ。生き残ってなんぼの職業だろ。なのに毎回毎回ボロボロになって帰ってくるとか、プロ失格だろ」


お前はいちいち誰それがプロのラインに到達しているかなど、語れるほど経験を積んでるのか……とツッコミたい気持ちをギリギリで抑えるギール。


とはいえ、グロンに嫉妬しまくりな髪の毛ボサボサボーイの考えも決して間違ってはいない。

冒険者としてレベルアップするには超ド級の死線という名の壁を乗り越えるしかないが、そんな冒険ばかりをしていれば、死ぬ危険が必要以上に増す。


死んでしまえば、頑張って叶えようとしていた目標もクソもない。


「……あんま調子に乗り続けるなら、やっちまうか」


「やるって、お前まさか殺すつもりか?」


「殺しはしねぇよ。ただ、あんま調子乗ってっとどうなるかは教えてやらねぇとな」


グロンをフォローしていた者も、自分たちの世代では確実に頭一つか二つ抜けている超新星を疎ましく思う醜い心がある。


直ぐに謎に上から目線なボサボサボーイの提案に賛成しなかったが、やはりその醜い心は中々消えない。


(あぁいう連中って、本当に超強かったり特別なスキルを持ってる訳でもないのに、変に妬ましい存在を上から目線で評価するというか、調子に乗ってるとか言うよな……俺でもそんな正真正銘のアホみたいに意味解らん調子のこきかたしなかったぞ)


ギール(タレン)がやっていた事と言えば、自分よりも才能がある優秀なルーキーに酒とお姉さんのお店で遊びを覚えさせること。


これはこれで中々悪質な落とす方法だが、ギール(タレン)の理論や経験上、酒と女に対して心底溺れるのであれば、どちらにしろ冒険者として大成しない。


「はぁ~~~~……一応、伝えといてやるか」


死ぬ気で戦うことに慣れているとはいえ、相手が同じ人間……同職の相手であれば万が一が起こるだろうと思い、翌朝に耳にした一件について伝えた。


「そうか……僕としては、調子に乗ってるつもりはないんだけどな」


「安心しろ。今グロンが言った通り、お前は全く調子に乗ってない。波に乗ってる奴に対して調子に乗ってるなんて口にする奴は、大抵どういった部分が調子に乗ってるのか明確に説明出来ないものなんだよ」


これまた本当の年齢がバレそうな発言をするが、グロンはそんな点を気にすることはなく、単純に励ましの言葉に優しさを感じ取った。


今まででギール(タレン)が行ってきた訳ではないが、過去のパーティーメンバーであるテオンやエルフにしてはそれなりに酒豪であるミレイユたちと呑んでいると……しょうもない嫌がらせの様に、聞こえる彼らに聞こえるか聞こえない程度の声量でレオルなどの陰口を呟く。


結果、口が上手い二人によって表に出て、結果ボコボコにされる。

その際に二人がレオルたちのどの辺が調子に乗ってるのかと尋ねるが、まともに答えられた者は一人もいない。


(六人の中で調子に乗ってる奴がいたとすれば、それは俺ぐらいだったからな~)


途中でグロンと別れて自分の仕事に集中。

昼過ぎ頃には目的のモンスターの肉を手に入れ、終了。


「……ちょっと探すか」


先日の謎に上から目線の嫉妬ルーキーたちの会話を思い出し、なるべく気配を消しながら探し回る。


(ん? あれ……だな)


先日の連中を発見後、ギールはそいつらが馬鹿な真似を起こすか否かを確かめる為、気配がバレない様……慎重にストーキングを行う。


「敵だ!! こっちに走ってくるぞ!!!」


斥候の青年が仲間に敵の襲撃を続けると、地面を揺らしながら一体のイノシシがその一団を目掛けて突進。


(あのイノシシは……ダッシュボアだな。あいつの肉を使ってシチューは美味いんだよな~)


今夜は肉がふんだんに使われたシチューでも食べるか~、と考えながらギールは彼らを助けたり……結果次第で助けるために観察することはなく、忍び足でその場から退散。


友人を闇討ちでどうこうしようと考える連中の命など、ギールにとっては心底どうでも良かった。



「クソがッ!!!! 嗅覚を強化してりゃ良かった!!!!」


先日の様にいきなりCランクモンスターと遭遇することはないだろうと思い、油断して索敵を怠っていたギールは今……多数の蜂モンスター、ホーネッツビーと対峙していた。


(魔力と戦斧の禁止は、意外と厳しいな! クソッ!!!)


不注意で巣に近づいてしまい、ロックオン。


一応オルディ・パイプライブを発動した結果、縛りは魔力と戦斧の使用禁止。

報酬は毒針のスキル。


身体能力では完全にギールが勝っているが、対峙するホーネッツビーが飛ばす毒針は……魔力が使用出来ない今、完全に躱すのが一番の対処法。


蟲甲殻を使ってガードするという手段もあるが、魔力の消費がやや激しいため、連続使用だけは遠慮したい。


スラッシュなどの剣技スキルを使用すれば遠距離攻撃を行えるが、火属性の短剣を使用したとしても、魔力がどんどん消費されていくことに変わりはない。


(あいつらの結果を見ずに去ったから、罰が当たったってか!!?? ふざけんじゃねぇ!!!!)


謎に上から目線の嫉妬ボサボサボーイたちに対して何も行わなかったことに後悔はない。


「はぁ、はぁ、はぁ……クソ、本当にビビらせやがって!!」


全てのホーネッツビーを斬り倒し、ついでに甘い甘い蜜もゲット。

その後、しばらくの間……ギールは甘党女子たちにすり寄られた。

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