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第40話 茨の道を選べた自分

「だ、大丈夫か?」


「あ、あぁ。大丈夫だ……シュバリエの、クリスタ、さんに一目惚れしたんだな」


「そうなんだ……元のパーティーメンバーは眺めて憧れるだけで良いじゃないかって言われたんだけど……俺は、憧れるだけじゃ諦められなかったんだ」


頬に赤みを差しながらも、真剣な表情で自身の想いを口にするグロン。


「な、なるほどな~」


ギールとしては、正直自身の初恋の女性が出てくるとは思っておらず、完全に予想外のボディを食らった感覚。


「えっと……あれか? もしかして一目惚れ、初恋だったりするのか」


「そう、だね。多分、ちゃんとした恋は……それが、初めてだと思う」


「そうか。それなら、尚更諦められないよな」


それらしい言葉を口にしながら、ギールの心はようやく落ち着き始めた。


(レオルにしろクリスタにしろ……罪な奴だな。まっ、あの見た目で野郎たちにモテない筈がないからな)


経験者は語るという言葉通り、ギールもかつてクリスタに惚れていた人物の一人。


「そうなんだよ。子供だと思うかもしれない……初恋は叶わないというし、本当は諦めた方が良いのかもしれない。でも、それでも! あの想いは……そう簡単に諦められない。だから、仲間たちの元を去ってでも、強く……強くなろうと決めたんだ」


「……強いな、グロンは」


ギール(タレン)からすれば、かつての想い人を狙おうとする同性。

普通なら嫌悪するような相手だが酔っている状態ではあるが……いや、やや酔っている状態だからこそ零れた本音を茶化すことなど出来なかった。


(まぁ、あんだけ若くて美人で、超巨乳だったら一人の青年の運命を狂わせてもおかしくないよな)


戦闘光景をしっかり観ていたため、グロンの身体能力が……ドーバングで出会ったナリッシュと比べて劣っていることが解かる。


しかし、死ぬ気で戦うという……一種の戦闘スタイル、手札に関しては非常にグロンの方が高く、死地を乗り越えるためにはその力が超重要。


「クリスタさんの傍には……悔しいことに、レオルさんがいます」


「あの聖剣技を扱うレオルさんだな」


そこで自分の名前が挙がらなかったことに悔しさを感じるギール(タレン)だが、話し出すとややこしくなるので、何も言うことはない。


「……正直、あのレオルさんに追い付けるかどうか解かりません」


「超強いって噂だもんな」


その気持ちは良く解ると言わんばかりに、深く頷く。


「でも、それでも!! だからって、俺は諦めたくありません。強く……今よりももっともっと強くなって、クリスタさんの隣に立てるぐらい強くなって!! ……こ、ここここ告白したいって、思ってる」


酒の力を借りても、そこにはやや恥ずかしさを感じるところに、初々しさを感じたギール(精神年齢は二十二歳)。


(……才能云々は置いといて、グロンは……俺と違って、一歩前に踏み出して茨の道を進むと決められた俺、なのかな)


自分とは違う、もしかしたら違っていたかもしれない、もう一人の自分。

今のギールも中々茨の道を歩んではいるが、どの激闘にも勝算があって挑んでいる。


「…………カッコイイな、お前は。カッコイイよ」


過去の自分が選べなかった道を必死で、ボロボロになりながら進む青年。

目の前で頬を赤くし、やや酔っているグロンが……ギールには眩しく感じた。


「そ、そんなことないよ。俺なんてまだまだDランクで……それに、ギールみたいに

お酒が似合う顔じゃないしさ」


「……ぷっ、酒が似合う顔って、そんなのを気にしてんのか?」


「だ、だって。クリスタはそれなりにお酒が呑める方だって聞いて、それな好みの人も酒が似合うタイプなのかなって思ってて」


酒が似合う顔と言われたことは……正直嬉しいと感じたギール。


(あいつの顔は別に……うん、別に特別似合ってるわけじゃない。確かにクリスタ自身は女性の中でもそれなりに吞める方だとは思うが、今惚れてる奴の面は……どっちとも捉えられる面してるしな)


因みに、レオルもそれなりに吞める方ではあるが、ギールやテオンの酒豪っぷりには敵わない。


「別に顔は関係無い……ってか、寧ろそのままの方が良いだろ。もっと自分の顔を大事にしろよ」


レオルの様な正統派イケメンではなく、やや可愛い寄りの良い意味で女性受けが良さそうな容姿をしている。


「そ、そうですかね? 僕、あんまり自分の容姿に自信がなくて」


「……なるほどな。でも、その顔で戦闘になれば鬼の様に強ければ……あれだ、ギャップってやつに繋がるんじゃないか?」


「ギャップ……なるほど!!!」


こうしてやや自信無さげなグロンをギールが励ますという流れが何度も続き、気付けばグロンはバタリと寝落ちしてしまった。


「おい、グロン……グロン?」


「…………」


「ありゃ、完全に寝ちまってるな……しゃあねぇ」


酒代はグロンの分まで払い、寝落ちしてしまった恋する青年を肩に背負い、先に聞いていた宿まで連れて行き、ベッドの放り投げる。


そして偶々開いていた宿を取り、睡眠。

翌日……休暇であるため、朝食を食べ終えたらぶらっと外に出て調味料などを買い始めた。


「しかし、グロンがどれぐらい頑張ればあのぶっちぎり化け物野郎に追い付けるやら……でも、どうせならグロンがクリスタの意識をレオルから奪ってくれた方が、俺個人としては……はは、メシウマってやつかもな」


昼手前からゲスい事を考えるレオルの元親友。

ギールにとって、元親友は今……戦闘で勝利し、スキルを奪って絶望させる……ただの復讐相手。


自身にスキルを奪われた後、出来れば落ちぶれてほしいという思いがゼロな訳ではない


「つっても、仮に奪えたとしても……その後、再習得は出来るのか?」


オルディ・パイプライブにはまだまだ解らない事がある。

今まで基本的にスキルを奪ってきた相手は殺しているので、再習得出来る可能性があるのか否かまでは解らない。


「…………あいつなら、やりそうだな」


才能だけの人間ではない。

それを強く……痛いほど知っているからこそ、元親友の事を化け物だと認識している。


「っと、胡椒も買っとかないとな」


冒険者にとって調味料は少々お高く、強くなる為なら節約しようと思う対象ではあるが、ギールは躊躇なく購入を決定。


(多分、レオルならこれから一年以内に、壁をもう一つ越える……単純計算で、おそらくだがグロンは一年間の間に壁を三つ超えないといけない…………無理だろ!!!!)


口には出さなかったが、あまりの無茶に心の中で叫んだ。


「ん? なんか騒がしいな」


個人的にはその目標を手助けしてやりたいと思っていると、視界の先に喧騒が映った。

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