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第36話 吞みなおしてこい

「格上相手との激闘を制した私たちに、乾杯!!!」


「「「乾杯!!!!」」」


「……乾杯」


金が入ったということもあり、人目を気にせず食べられる個室付きのレストランで宴会開始。


ギールとしては四人と一緒に飯を食べるつもりはなかったが、ナリッシュ以外の三人から「今日で臨時パーティーは終わりなんだから、今日ぐらい良いでしょ」と頼まれ、やむなく了承。


(ナリッシュはともかく、全員美女美少女ではあるし、こうして食って呑むのも悪くはないか)


美味い料理と酒に手が止まらないギールに、ガルネがニコニコ笑顔で声をかける。


「ギールには本当に世話になったね。私の代わりに何度もファナを守ってくれてありがと」


「おうおう、確かに何度もファナを守ってくれてたな! もしかして、元タンク志望だったのか?」


「いや、別にタンク志望だったわけじゃない。丸盾に関しては、万が一を考えて用意してただけだ」


タンク志望ではなかったが、勇敢で広い背中を持つ男の後ろ姿だけは何度も見てきた。


万が一という危機を何度も助けてもらったことがあり、ハードメタルリザード戦でもその可能性を常に考えて動いていた。


「ファナはパーティーで重要な大砲だろ。ハードメタルリザードの攻撃が一発でも当たれば、離脱するかもしれなねぇ。ガルネは前二人を守るのに忙しいんだから、必然的に俺が守ることになるだろ」


「ありがとう。ギールがいなかったら、多分役に立てずに離脱してた。本当に、ありがとう」


「ッ……真顔でいきなりそんなこと言うな」


一目惚れ、することはなかった。

ギール的に、可愛い系のファナはドストライクゾーンに入るタイプではないが、それでも普段は見れないような笑みの破壊力に、うっかりやられそうになる。


「防御ならあれだよな、ナリッシュを守った時のあれ、ヤバかったな!!! 正直痺れたぜ!!!!」


「ッ!!」


ナディアが口にした時の光景を思い出し、頭の中で様々な感情が溢れ、言葉が出なくなってしまうナリッシュ。


「あれは本当に助かったよ。というか、丸盾があの衝撃で粉々になったけど、左腕は大丈夫だったの?」


「あぁ、特に問題はない……とは言えねぇけど、戦いが終わった後にポーションを飲んだから大丈夫だ」


放っておいても問題はなかったが、怪しまれない為に一応ポーションを飲んでいた。


「……ねぇ、なんで助けたの」


「? どういう意味だよ」


「だ、だから! なんで嫌いな私を助けたのって聞いてんの!」


空気を悪くしたい訳ではない。

今この場が大きな功績を達成した祝いの席だと解っている。


それでも……訊かずにはいられなかった。


「…………お前アホか」


「なっ!!!???」


いきなりのバカ発言に、先程までの深刻で真剣な表情から一変し、表情が大きく崩れる。


ナリッシュは直ぐに暴投を返そうとしたが、それはギールの発言によって遮られた。


「そういった私情を戦場に持ち込むわけないだろ。ガキじゃねぇんだからよ」


「ッ!!! ……それもそう、ね」


ガキという言葉に反応しかけたが、ギールの言葉はもっともだと理解し、大人しく腰を下ろす。


「お前のことは相変わらず気に入らねぇが、それでも戦場では背中を預ける仲間だ。助けられると思ったら、飛び込んで当然だろ」


冒険者として合計で八年目を迎えるギールだが、自身のパーティーメンバーは誰一人失っていないが……その街で出会い、親しくなった友人を亡くしたことはことは決して少なくない。


目の前で殺されたことだってある。

故に、そんな思いは二度としたくない。


屑ではあるが、決して堕ちてはいないため、あそこで動かないという選択肢はギールの中になかった。


「ひゅ~~、意外と熱いじゃねぇか」


「冒険者なんて、いざとなれば全員熱くなるものだろ」


「ははっ!! 違いねぇな!」


何故ハードメタルリザードの爪撃を食らって腕の肉、骨が殆ど無事だったのか、気にならない者はいない。


大なり小なりその点について聞きたい気持ちはあるが、この場でそれを尋ねる者は誰一人としておらず、ただ祝いの席での食事を楽しんだ。



「上等じゃない!!! 吞み比べで勝負よ!!!!」


「ほぅ……言ったな。潰れても知らねぇぞ」


宴会も終盤に近付きつつあるタイミングで、レオル関連でギールがナリッシュに毒を吐いた。


その事にキレたナリッシュが毒を吐き返し、当然暴投合戦はヒートアップ。

最終的には冒険者らしく模擬戦……ではなく、吞み比べで勝負することになった。


「はっはっは!!!! 小娘が俺と吞み比べするなんて、百年はぇんだよ!!!!」


「う、るさい、わね。ま、まだこれ、から」


色々と秘密がバレそうな発言をするあたり、ギールも酔っていないわけではない。


しかし、ナリッシュが潰れる寸前なのに対して、ギールはまだまだカクテルを呑んでも潰れる様子はない。


「……なぁ、ギールってもしかしてガルネと同じ、ハーフドワーフ?」


「私と同じならもう少し体に特徴が出てると思うけど……仮に四分の一八分の一でも血が入っていると考えても、かなり強いね」


最初は自分も勝負に混ざろうと考えていたナディアだが、途中でギールのヤバさに本能が気付き、離脱。


ナリッシュはナディアの様に気付くことなくギールと同じカクテルを呑み続け……結果、ほぼ潰れかけの状況に追い込まれた。


「まだ吞めるって、言ってんで、しょ」


「ふ~~~~ん……マスター、アースクエイクを二つ」


「少々お待ちを」


バーで冒険者が酔い潰れることなど日常茶飯事であるため、マスターはナリッシュの限界値など考えることなくアースクエイクを作る。


「お待たせしました。アースクエイクです」


「よ、よ~し」


見た目は暖色。

まだまだ吞めると思い、ナリッシュはアルコール度数を確認することなく、グラスに入っている分を……一気に飲み干した。


「ッ!!!!!????? は、へぇぁ~~~~……」


一気飲みした結果、文字通り頭にアースクエイクを食らい、ノックダウン。


オロロ~~してしまうという女性としての何かが失ってしまう恥を晒さずに済んだが、結果として吞み比べ勝負はギールの勝ちで幕を閉じた。


「はっはっは!!! 吞みなおしてこい。マスター、ウイニングランは作れるか?」


「……良い趣味してるな。値は張るが、それでも良いか?」


「あぁ、構わねぇ」


ラスト一杯、勝利の美酒を飲み干し、四人と別れ……ギールは意気揚々と宿へ戻った。

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