第35話 何故、同じ気配が?
(はぁ、はぁ……しっかりしろ、私!! 何度あいつに助けられるんだ!!!!)
認めたくない。
認めたくないが、ギールがいなければ何度も自分が……仲間が危険な目に合ったという自覚はある。
きっちり助っ人としての仕事をこなしている青年に対し自分は? と問う。
ナリッシュは……今まで以上に動けている。
それはパーティーメンバーであるファナたちだけではなく、憎たらしいクソ小娘と思っているギールも同じ。
ハードメタルリザードという化け物と渡り合い、討伐するために否が応でも動きの精度を上げなければならない。
動きが研ぎ澄まされていくのに……それでも、どうしようもない時、ギールが投げナイフで牽制して気を逸らし、ファナに飛んでいった攻撃を丸盾で防ぐ。
(思い出せ……思い出せ、私の目標を!!!!!)
己を鼓舞する。
あと一歩……ただダメージを与えるだけではダメ。
少しでもハードメタルリザードの命に届く攻撃をぶち込む。
その思いを再度、愛剣に込める。
「はぁああああああああああッ!!!!」
ガルネが攻撃を受け流した隙を狙い、愛剣に火を纏い……大切断。
「ッ!!!」
ここでようやく、初めてハードメタルリザードの表情が歪んだ。
「どぅううらああああああああッ!!!!!」
ここがチャンスだと理解し、あらん限り気合を乗せた一撃を叩きこむナディア。
理解して打ったのか否か……ナディアがぶちこんだ鉄製棍棒によるホームランストライクは、見事ハードメタルリザードの体内に衝撃を与えた。
そこからは怒涛のラッシュが降り注ぐ。
表情を歪ませるダメージを与えることに成功したが、それだけ勝てるほど甘い相手ではない。
今ここで仕留めきれなければ、勝ち目は消える。
その考えは皆共通であり、全力を出すために呼吸を止めた。
少しでも無駄な思考を捨て、仕留めることだけに意識を全集中。
「はっ!?」
しかし、ハードメタルリザードの討伐よりも先に、ナリッシュの限界が来た。
脳が酸素を求めた結果、動きの質がダウン。
そこを見逃すほど敵は甘くない。
その鋭く魔力を纏った凶悪な爪を振り下ろし、気を逸らそうとするナディアとガルネの攻撃を全無視して仕留めに掛かる。
(あっ……だ、め)
壁を越えた回数が三回と、本当にただのレオルのミーハーではなく、今までいくつもの修羅場を潜り抜けてきた。
故に……目の前の攻撃を食らえば、死んでしまうと解ってしまう。
「ぐっ、ぬぅあああああああああッ!!!!!!」
「えっ……な、んで」
「さっさと下がれえええ!!!!」
「ッ!!!」
色々と分からない感情が頭の中でごちゃごちゃしていながらも、即刻言われた通り後方へ下がる。
「ッ!!?? がっ!!!!!!!」
数秒丸盾でハードメタルリザードの凶悪な爪撃をガードしたが、結果は敗北。
力で無理矢理弾き飛ばされたが……ダメージはそこまで入ってない。
(な、なんてパワーしてんだよ、クソ!!! ……でも、蟲甲殻を使用して正解だったな)
身体強化、剣技……残り一つ、ハードメタルリザードとの戦闘に使用できるスキルに、ギールは蟲甲殻を選択。
服の上からでは見えないが、腕に蟲の甲殻が纏われたことで、腕自体にダメージはない。
ただ、踏ん張りが効かずに吹き飛ばされてしまった。
(あれを使って、形勢を変えるしかねぇか!!!!)
「「「「「ッ!!!!????」」」」」
次の瞬間、ナリッシュたちだけではなく、ハードメタルリザードも含めて全員の意識がギールに集中した。
(この感じ、ハードメタルリザードに……ドラゴンに、似てる)
ファナと同じ感想を、本能的にハードメタルリザードも察知。
理由は解らない。見た目も全然違う。
遺伝子に刻まれている他の体系の同種とも違う。
なのに……何故か、目の前の青年から自分と同じ……もしくは更に強烈なドラゴンの魂を感じ取った。
(三発全部、もってけこの野郎ォォオオオオオオオオオッ!!!!!!!!)
魔砲剣の柄を槍の様に持ち、全力投球。
意識は向いていたが、それが自分の思考とは違う本能が無理矢理向けた方向。
色々と気付いたときには既に、投球フォームへ入っていた。
ナリッシュたちは冒険者としての経験から反射的にその場から離れることに成功。
ぶん投げられた魔砲剣はハードメタルリザードの腹下に刺さり……ライトニングランス三発分がぶち込まれた。
「ッッッッッッッッ!!!!!」
雷槍を食らった反動により、思わず状態を起こしてしまう。
「殺れぇええええええええええええっ!!!!!」
ギールの叫びに呼応するように、ナリッシュとナディアだけではなく、大盾を投げ捨てて二振り戦斧を振りかぶるガルネ。
三人の決死の一撃は腹の皮を抉り、肉を裂き、内臓を砕いた。
「殺ります!!!!!!!」
そしてラスト、ファリエの大砲が氷槍をぶち込み、見事腹を貫通することに成功。
一般的に他のモンスターよりも回復力が高いドラゴン種のハードメタルリザードだが、腹を思いっきり貫かれては……回復する物もない状態。
「はぁ、はぁ、はぁ……勝った、のよね?」
確かに五人は強敵に勝利した。
それでも、何度も死にかけた場面があったため、倒した今現在でも実感が解らない。
「勝った。俺らは勝ったんだ……だから、さっさと解体しちまおうぜ。そいつの血が勿体ねぇ」
「……全く、君はタフ過ぎるんじゃないか? 解体は私たちがやっておくから、ギールは休んどいで」
「お言葉に甘えとくわ」
割と五体満足ではあるものの、疲労感はフレイムドラゴンとの戦闘時に次いで大きい。
(クソ……気抜いたら、ぶっ倒れそうだな)
女性に担がれたくないという意地から、何が何でも意識を保ち続ける。
しかし、全員の疲労度合いを考えて野営を行った結果、夕食を食べた直後に爆睡。
まるで死んだと思われてもおかしくない勢いで夢の中へと旅立った。
そして翌日、五人は無事にドーバングへ帰還。
冒険者ギルドでハードメタルリザードの討伐成功を報告し、ついでにファナとナディアは三回目の壁越えを報告。
「はぁ? おいおい、俺の取り分多くないか?」
「妥当な配分よ。さっさと受け取りなさい」
何故かちょっと高圧なナリッシュ。
他三人の表情は違ってマイルドだが、思いはリーダーであるナリッシュと同じだった。
「……分かった、有難く受け取る」
Bランクモンスターの素材が大量に手に入った嬉しさを必死で堪えながら、亜空間の中に素材を放り込み、そこで解散……とはならなかった。




