第26話 過去から学習
エリオと四回目の狩りを終えてから一週間ほどが経過。
剣技と斧技、鈍らない様に短剣技の鍛錬を行いながら、適度に狩りを続ける日々を送る中……今日も今日とてまずは受けた適当な依頼の素材を手に入れ、夕日が沈み始めるまでスキルという名の才能を集める。
(できればCランクモンスターのスキルを奪いたいんだが……そう簡単には遭遇出来ないよな)
EランクやDランクのモンスターであれば何度も遭遇しているが、強敵であるCランクモンスターはそう簡単には現れない。
以前までのギールであればソロでの行動中にCランクモンスターと遭遇したいなど、欠片も思わなかった。
(我ながら物騒なことを考えるようになったな)
Cランクモンスターと遭遇出来なければ、Dランクモンスターのスキルを奪うだけで我慢する。
目標を切り替えて行動しようと思ったその時、耳に人の悲鳴が入った。
「この声……どっかで聞いたことがあるな」
同業者がピンチかもしれないということもあり、ダッシュで悲鳴が聞こえた方向へと向かう。
(マジかっ!!)
四人の冒険者がCランクモンスター、ヴェノムコブラと多数のDランクモンスター、ポイズンスネークに襲われていた。
そして四人のうち……二人はギールが知っている人物。
「生きてるか、エリオ!!」
「ギール! 良いところに来た!! 今、前衛が足りてない!!!」
「分かった、任せろ!」
前衛を担当している冒険者……これまた顔見知りの人物であるアミラ。
(エリオが一緒に行動してるってことは、もしかしてあの時と比べて強くなったのか?)
根性がある女だと思いながら、一応オルディ・パイプライブを発動。
縛り内容は、スキルの使用が三つまで。
討伐報酬は毒液。
(意外と……あれだな、オーガやリザードマンと比べれば、割と優しいか?)
ギールがオルディ・パイプライブを発動した対象は、ヴェノムコブラのみ。
だが、実際にギールが対処しなければならない相手に、多数のポイズンスネークが含まれているため、縛りはスキルの使用は三つだけとなった。
毒、もしくはブレスなどを扱う敵を相手に魔力が使えないというのは、防御面に心配が生まれるが……ギールは嗅覚強化を利用し、毒蛇たちが吐き出す毒の位置を正確に把握しながら戦場を動く。
「お前、これを、飲め!!」
アイテムバッグの中から手持ちの中で一番効果が高いポーションを投げる。
毒を食らって動けない前衛を守っている後衛職の女性がそれを落とさずキャッチ。
「あ、ありがとう、ござい、ます…………っ!!!???」
今まで体を蝕んでいた毒が、一気に消えた。
戦闘中に状態異常を回復するポーションを渡してくれた助っ人に対して、素直に感謝の気持ちはあった。
しかし、食らった毒はヴェノムコブラのもの。
助っ人がくれたポーションでも完全には回復できないと思っていた。
だが、結果は完全回復。
食らった毒どころか、傷なども回復。
「無理に入ってこなくて良い! 下手に動かず、エリオを守ることに、集中してくれ!!!」
二人は助っ人……ギールのことを殆ど知らない。
いきなり現れた同業者の命令に従うのは、プライドに障るはずだが……今はそんな事を考えている場合ではないと、冷静に判断出来る頭を持っていた。
「アミラ、ポイズンスネークの相手を中心に、頼む!」
「分かりました!!」
エリオという自分たちの世代で最強であるスーパールーキーと共に行動をしていた男。
戦いぶりは今初めて見るが、自分よりも高い実力を持っていることだけは解かるため、素直に頼みを受け入れた。
「エリオ!」
「っ!? 助かる」
万全を期すため、再びアイテムバッグに手を入れ……今度は魔力回復のマジックポーションを渡す。
(よし……殺るぞ!!!!)
右手にロングソード、左手にディラン作である火属性の短剣を握りしめ、一歩踏み出す。
万全の状態を整えはしたが、気持ちはソロで全て討伐。
なるべくポイズンスネークの相手はアミラとエリオに任せつつも、自身に毒液や尾を振りかざすポイズンスネークには、容赦なく斬撃を浴びせる。
「おわっ!!??」
ポイズンスネークの攻撃に集中して対応していると、従える部下の存在を無視し、足元を刈る様に巨大な尾撃が繰り出された。
幸いにも跳んで回避に成功したギール。
しかし……遠距離攻撃を持つ相手と対峙した時、宙に跳び過ぎるのは悪手。
エリオが慌てて矢を射ろうとするよりも先に、線状の毒液が噴射。
(拡散型じゃなくて助かったな)
左手に持つ短剣に魔力を多く消費し、自身に向かって放たれた毒液を全て霧散。
蒸発させてしまえば、気体となった毒に効力はない。
「ふんっ!!!!!」
「ジャッ!!??」
ヴェノムコブラの巨体から繰り出される尾撃は重く、鱗の堅さも並ではない。
口から噴射される毒液を線状、拡散タイプに分けられる技術を持ち、鋭い牙から毒を体に注入する際の咬合力もバカにならない。
「昇波ッ!!!!!」
敵の視界を防ぎつつ、地味にダメージを与える攻撃。
「ッ!! シャァアアアアアアッ!!!!!」
だが、ヴェノムコブラは視界だけではなく、生物の熱を感知して相手の居場所を把握する術を持つ。
なので……迫りくる高熱の炎は、何よりも危険に感じた。
「っ!!!??? シャ、ァ」
「やっぱり、お前は本当に熱が怖いみたいだな」
戦闘中、少しでも優位に立つために、相手の視界を覆う、潰す。
戦闘者であれば教えてもらっていなくとも考え付く手段。
しかし、過去にそれを同じ蛇であるポイズンスネークを相手にやろうとし、痛い目にあった過去を持つ。
それらから月日が経ち、蛇系のモンスターは生物が持つ熱を感知しているという情報を入手。
当然、ギールの頭にその情報はしっかりと残っており、今回はその特性を囮にし、見事勝利を掴み取った。
(ふぅ~~~……何気に、今回は嗅覚強化で毒の位置を正確に把握出来たのが攻略のカギになったな)
結果的に無傷でヴェノムコブラの討伐には成功。
毒液のスキルを奪うことができ……後はもう、遠慮する必要はない。
まだ残っているポイズンスネークを殲滅。
エリオとアミラの活躍もあり、誰も死なずに危機を脱出した。
「助かったぞ、ギール」
「偶々悲鳴が聞こえたからな。にしても、お前が誰かと臨時パーティーを組んでるなんて、珍しいこともあるんだな」
「それは後で話す。今は解体がさきだ」
「それもそうだな」
アミラたち三人も手伝い、数時間かけて解体が終了。
三人は自分たちは素材を受け取れないと口にするが、まだ大胆に目立ちたくないギールは強制的に素材の大半を四人の押し付けた。




