第25話 餌をあげないタイプ?
(こりゃ、集中しないと駄目だな)
三回目のエリオと一緒の狩りも無事に終了。
久しぶりに飛び抜けたイケメンに超絶嫉妬した二日後、一応目的に当てはまるモンスター……Cランクモンスター、リザードマンと遭遇。
「シャァァアアアアッ!!!」
(一体だけなのは、運が良いな!!!)
既にオルディ・パイプライブは発動済み。
使用スキルは三つまでという縛り。
討伐時に奪えるスキルは、剣技。
剣技スキルは既に習得しているが、同じスキルを奪うことにより、練度が加算される。
(クソっ!! 剣技だけだは、やっぱり俺より上だな!!!)
身体強化、剣技の二つを使用しながらリザードマンとの激闘に応じる。
ギールには魔力というスキルに縛られない武器があるが、Cランクモンスターになると、魔力を体や武器に纏うことが出来る。
「シャァアアアアッ!!!」
「嘗めんなっ!!!!」
どこかで拾ったロングソードによる斬撃に対し、ギールも負けじと剛剣で対応。
(ちっ! 刃はボロボロだが、もしかしなくても質は向こうの方が上か?)
鍔迫り合いは引き分けで終わり、再び火花散る激闘が再開。
「おわっ!?」
剣技スキル、昇波は下から斬り上げることによって、一部に衝撃を集中しつつも、全体的に下から衝撃を与える。
現在のギールが所有する剣技の練度では、まだ発動不可能な技。
(この感じ……オーガより上、じゃないか?)
フレイムドラゴンを除けば、ギール史上ソロで戦ったモンスターの中で、総合的な実力は一番……かもしれない。
かといって、ギールはこの状況を捨てるほど日和ってはおらず、宙で回転しながらギリギリ昇波を回避し、ロングソード同士の戦いから逃げずに立ち向かう。
(はぁ、はぁ、クソっ!! 普段使わなくても、一本ぐらい、上等な剣を買っとけば、良かったな!!!)
生まれ変わったことによってスタミナも向上しているが、リザードマンとの戦闘は物凄く神経を削り……戦闘時間以上にスタミナをごりごりに削っていた。
「シャッ!!!!」
「っぶね!!!!」
貫通力が強化された突き、撃突をギリギリのところで回避。
服が敗れはしたが、皮に掠った程度。ダメージはない。
(このままじゃ、ジリ貧か!!!)
再び鍔迫り合いになった……その瞬間、三つ目のスキルを解放。
「シャッァアアアッ!!!!????」
ここぞというタイミングで、切り札の一つであるブレスを発動。
ギールを鍔迫り合いで潰すことしか頭になく、完全に虚を突かれて顔面を焼かれた。
魔力などに耐性を持つ鱗を有しているが、完璧な不意打ちは見事に視界を塞ぎ、好機が生まれる。
顔の無事を確認するために手が顔の方に向けられた瞬間、ギールは素早く突きを喉元に放つ。
「ジャ、ァ……ァ」
剣先が首の骨ごと貫き、その命を絶った。
「ったはーーーーーー、はぁ、はぁ、はぁ……はぁ~~~」
苦しい緊張感から一気に解放され、地面に腰を下ろす。
嗅覚感知で周囲には同業者やモンスターがいないことは確認済み。
(フレイムドラゴンとの戦いでも、何度も死を予感したけど……使う者が刃物だからか、こいつとの戦闘は何度も予感させられたな)
全体的にギールより大きく、魔力を纏う技術も有している。
加えて、剣技の腕に関しては圧倒的に戦い慣れている。
(まっ、それなりに成長出来た気がするから、良いんだけどな)
読みの深まり、オルディ・パイプライブによる剣技の吸収。
リザードマンの剣技を奪った事で、ギールは基本技であるスラッシュ以外にも、昇波と撃突が使用可能になった。
(……でも、剣技の腕に関してはあれだな、せいぜいレオルがDランクの最後の方か、Cランクになった時ぐらいか)
何年も傍に居たからこそ、親友の剣技がどれだけ他者と比べて優れているかが解る。
元は同じスキルを手に入れたからこそ、数歩前に進めても……よりその距離を強く感じる。
とはいえ、その距離に打ちひしがれていたところで、その差が縮まる訳ではない。
(とりあえず、解体しないとな。肉は……今のうちに食べてるか)
解体後、いつもの様にアイテムバッグに入らないであろう肉は、なるべくその場で食べつくした。
数日後、四回目のエリオと一緒の狩りで、二人は巨大な岩の塊と遭遇。
「うわっ、ゴーレムか」
「珍しいな」
基本的に鉱山や山の外に出てくることはない、巨大で防御力が高いモンスター。
ランクはDと、二人で戦うのであれば、そこまで恐れるランクのモンスターではない。
ただ、その堅さはランクCに届く。
(チっ! 前より身体能力は上がって腕力もあるんだから、ハンマー……は
場所を取るか。メイスでも買ってれば良かったな)
スピードはDランクの中でも遅いため、二人の攻撃は全て当たるが……どの攻撃も中々致命打にはならない。
「エリオ、魔石の位置は分かるか!」
「あぁ、問題無い」
「頼んだぞ!!!」
身体強化と腕力強化、プラス魔力を纏うことによる強化を重ね合わせる。
懐に潜り込んだギールは両掌をゴーレムの腹に押し当て、後方へ勢い良く押し飛ばした。
「はっ!!!」
直後、吹っ飛んで体勢を大きく崩したゴーレムに向かって、数本の十本近いウィンドアローが放たれる。
放たれた風矢はとある一点に集中し……体内の魔石が露出。
「よっ! っと」
再び軽やかなステップでゴーレムの極太両腕による攻撃を避け、魔石を無理矢理掴み取る。
モンスターの第二の命でもある魔石を奪われては、たとえ頭を破壊されても動き続けるゴーレムであっても、機能停止は避けられない。
「ナイス加減だな」
「当たり前だ……しかし、お前は良くあの剛腕の間を潜り抜けようと思えるな」
「恐ろしいとは思ってる。ただ、一応持ち味は速さだからな。活かさないと勿体ないだろ」
オーガの猛攻に比べたら、ゴーレムの剛腕は速さが足りない。
一定の恐怖は感じれど、ギールからすれば立ちすくむほどの恐怖ではなかった。
「そういえば、あれからアミラとは何かあったのか?」
「いや、何も」
「んだよ……魚を釣っても餌はやらないタイプか?」
「…………何を良いたいかは解るが、そもそも釣った覚えがない」
意識せずともモテるイケメンの否定に、ギールは思わず唾を吐いて悪態を突きたくなった。
(それはそれで質が悪いってやつだと思うぞ、エリオ)




