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第21話 対応のし辛さ

(俺一人で十分、って断言出来るほどの実力は十分過ぎるほど持ってる……こりゃ同期と一緒にパーティーを組もうって気が起きないのも当然だな)


今現在まで、遭遇したモンスターはほぼ一撃でノックアウト。


先日の模擬戦で接近戦闘のレベルの高さも知っているギールからすれば、エリオに

死角を感じない。


「こんなところか」


高値で買い取ってもらえる素材だけを剥ぎ取り、後は地面に埋めて放置。


「見張り、ありがとな」


「二人での行動だ。お前が解体を行えば、俺が見張りを行うのは当然だ」


(……やっぱ、性格はやや面倒だな。龍魂の実を食べる前の俺なら、ギリギリ耐えられるか否かってぐらい生意気だ)


依然として生意気感は消えていない。

しかし、それでも彼の凄さを褒めずにはいられなかった。


「エリオ君が同期の仲間なんて必要ない、って態度を取るのも解るよ。本当に強い」


「……昨日俺に勝ったあんたに言われたところで、誇る気にはなれない」


「昨日の模擬戦は、スキルの使用が禁止だっただろ」


「あんたがその気なら、俺の矢を避けて懐に潜り込めるんじゃないか」


あぁ言えばこう言う。

褒め言葉も入っているのだが、中々どうして楽しいコミュニケーションが取れない。


(スキルの使用が何でもありなら、負けるとは思えない……てか、なんだかんだで負けたくない。ただ、条件が一緒ってなると、絶対に勝てるとは言い切れない)


この世に才能という絶対的な壁が存在する限り、そんな妄想はするだけ不毛だが、少なくともエリオは現段階で止まることはない。


「どうだろうね。ただ、俺にはエリオ君みたいに優れた遠距離攻撃は持ってない」


ブレスというぶっ飛んだ遠距離攻撃方法があるが、扱いが難しいため、優れた

遠距離攻撃とは言えない。


「エリオ君はとんでもないハイ・バランサーだ。この街にいる間はないかもしれないが、旅を出てハコスタよりも大きい街に行けば、いくつものパーティーから勧誘を受けるよ」


「…………そうか」


自身の実力を正当に、真っすぐな表情で評価して褒めてくれている。

先日、自分に勝った一応強者ということもあり、悪い気はしない。


だが……一つ、モヤモヤすることがある。


「ところで、そのエリオ君ってのは止めてほしいんだが」


「えっ。そ、そうなのか?」


「あぁ、凄い気持ち悪い」


どストレートな言い様だが、呼んでいる本人もそうかもしれないとは思っていた。


とはいえ、ギールからしてエリオは……上司の息子に近い。

ギールとゴライ、ネイの関係は交友関係がある先輩後輩であり、現在に至っては生まれ変わったこともあり、関係は再構築されたと言っても良い。


しかし、魂まで生まれ変わった訳ではないため、タレン時代は二人に頭が上がらなかったこともあり……自分で気持ち悪いと解っていながらも、君付けで呼んでいた。


「わ、分かった。普通に呼ぶよ」


「そうしてくれ」


呼び方を変えてから時間が過ぎ、昼食も食べ終えた二人。


午前と同じく出会ったモンスター全てとバトルを行うが……基本的にエリオ一人で事足りてしまう。

ただ、将来全く隙の無い高レベルなハイ・バランサーになれるとしても、勝てない一人で倒せない存在はまだまだ多い。


「ギール! 来るぞ!!」


聴覚に優れたエリオは異変を察知し、即座にギールへ伝達。


無差別に木々が折られていく中、それでも確実にそいつは二人の方へやって来る。


(トライボアか!!!!!)


獲物を見つけた際、暴れ狂ったように周囲を破壊するイノシシ。

ランクはCと、ギールと先日戦ったオーガと同じであり、ベクトルは違えど厄介さな部分がある。


(一応、発動するだけ発動するか)


Cランクモンスターとなれば、練度の高いスキルを有しているため、一先ずオルディ・パイプライブを発動。

得られるスキルは……突進。

縛り内容は、魔力の使用禁止と使用可能なスキルは二つ。


(ふざけんなっ!!!!)


縛り内容にブチ切れ、即座にオルディ・パイプライブの効果を破棄。


縛り内容に対してブチ切れはしたが、焦りはない。

内容が厳しいのは、それだけ一緒に戦うエリオの戦力が上等である証。


「なるべく俺が動きを止める!! 良いタイミングで攻撃を頼む!!!」


「分かった、死ぬなよ!!」


エリオの表情に、先程までの余裕はない。


現れたモンスターは当然、エリオ一人で逃避は出来ても討伐が出来る相手ではない。


相性だけで考えれば、エリオの戦闘スタイルはトライボアと相性が良い。

だが、相性が良いだけであり、一方的に嬲り殺しにするのは……今のエリオだと不可能。


故に前衛という仲間が必要不可欠。


(クソっ! 盾を買っておけば良かったな)


当然の様に魔力を身に纏い、身体強化のスキルで身体能力を底上げ。


「ブァアアアアアアッ!!!」


(かち上げっ!!)


予備動作から察知し、ナイスタイミングで後ろに跳んで回避。

ついでに抜剣しているロングソードに纏った魔力を、斬撃刃として飛ばし、若干のダメージを与えつつ動きを阻害。


「ッ!!??」


その隙に二本の風を纏った矢が突き刺さる。


「ッ!!!!!!」


(もうちょい流れる血を気にしろっての!!!)


ギールが放った斬撃刃、エリオが放った風を纏った矢は、確実にトライボアへダメージを与えた。


大ダメージではないが、固い頭部や毛皮を確かに傷付けた。

それらを気にすることなく、再び周囲の木々や大地を気にすることなく暴れ回りながら、目の前の獲物を潰しに掛かる。


(痛覚遮断とか、持ってないくせに! その暴れっぷりは、なんなんだよ!!!!)


今までトライボアと戦ったことがあり、それは一度や二度ではない。


それでもレオルやテオンの様にがっつり前衛として戦っていなかったこともあってか、心の中で文句を吐き続ける。


(お、らっ!!!!!)


紙一重のタイミングで回避に成功し、今度はサイドから斬撃を叩きこむ。


(っ!? かなり力を入れたのに、色々とおかしいだろ!!)


魔力を纏った斬撃は、確かに毛皮を斬り裂き、肉をも斬り裂いた。

トライボアの体勢を崩すことにも成功し、そのまま木に激突……したのだが、一瞬で体勢を立て直し、血が垂れ流れるのを気にせず爆走。


(本当にふざけた生物、だっ!!!???)


ギールはなるべくトライボアの意識が自分に向くように動き、尚且つ自身の直線状にエリオが被らない様に意識していた。


(クソっ、たれ!!!!!)


トライボアの突進時、最悪なことにギールとエリオが直線状に被った。

気付くのがもっと早ければ別であったが、もうあれこれする余裕がない。


そこでギールが取った行動は……纏う魔力の量を増やし、更には脚力強化を使用しながら……トライボアと同じく、突進を発動。

前に出ながら暴走列車を見事受け止めた。

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