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第18話 言葉で表せない寒気

「やぁ、少し良いかな」


「なんです、か……」


声が聞こえてきた方に顔を向けると、そこにはそれなりに交友があった先輩冒険者がいた。


(ゴライ先輩、だよな……ボールドさんと同じ道に進んだんだな)


冒険者ギルドの制服の上からでも解る筋肉質な肉体。

しかし、ボールドの様に筋骨隆々のゴリマッチョではなく、多くの女性が好むであろう細マッチョ。


「こんにちわ、僕はギルド職員のゴライです」


「ど、どうも。Eランク冒険者のギールです」


現在は本人の言葉通り、ギルド職員だが……元はBランク冒険者。

かつて憧れた先輩の一人と言っても過言ではない強者。


(というか……全然老けてないな)


ボールドと同じく、四十を過ぎているが、柔和なイケメンフェイスはギールの記憶の中にある時とさほど変化はない。


「Eランクなのかい?」


「は、はい。Eランクの新米です」


「……はは、そうだったか。いや~、良い動きしてたから最低でもDランクの冒険者だと思ってたよ」


「そ、そうですか。恐縮です」


柔和なイケメンフェイスは今でも健在。

冒険者の中では珍し過ぎると言っても過言ではないほどの良識人であり、一部の冒険者からはメシア……もしくは仙人と呼ばれている。


そんないつもニコニコ笑顔を浮かべているメシア、または仙人……怒り出す、その圧はチンピラなどの非ではない。

普段からそういった態度を取らないからこそ、稀に出る般若の如き圧が尋常ではなく……過去にギールは自分に向けられたわけではないのだが、その圧にビビり散らかし、ほんの少しだけ漏らしてしまった。


故に、ギールにとっては今でも良い意味で敬意を持ち、決して調子に乗れない先輩。

ただ……そんな憧れの先輩に動きを褒めてもらい、正直嬉しくあった。


「訓練場に一人でいるということは、もしかしてソロで活動してるのかな?」


「はい、そうです。最近冒険者になったばかりということもあって」


「なるほど。確かに仲間集めが簡単に出来そうで難しい時期ではあるね」


普段と変わらない様子で会話を続ける中、内心では冒険者になったばかりという言葉を少し疑っていた。


(冒険者になったばかり、か……本当かな? なんだか嘘を言ってるようには思えないけど、あまりにも動き方や体の移動速度が素人じゃない)


別の戦闘職に就いていた過去を持つ冒険者は決して珍しくない。

素振りを観察していた時、その線を考えたが……頭を横に振って否定した。


(前歴があるにしても、若い)


非常に気になる逸材。

それを確認する為だけに声をかけた訳ではなかった。


「ハコスタには、どれぐらい滞在するんだい?」


「えっと……二か月ぐらいは滞在しようかなって考えてます」


「そっか、二か月か……」


何かを考え込むような表情に、ぶるりと背筋が震える。


あくどい顔はしておらず、そういった雰囲気も零れていない。

逆に何を考えているのか本当に解からない表情だからこそ、言葉に表し辛い寒気が起きる。


「ねぇ、もし良かったらハコスタにいる間だけで良いから、僕の息子とちょくちょく臨時パーティーを組んでくれないかな」


「ゴライさんの息子さん、ですか?」


予想外の頼み事に、必死で過去の記憶を掘り起こす。


(ゴライさんの息子……ってことはだ、ネイさんの息子でもあるってことだよな)


ネイ、とはゴライのパーティーメンバーであったエルフ。

ランクは夫と同じくBランクであり、今は旦那と一緒に引退して冒険者ギルドに就職。

後進の育成をメインに活動しているが、実力は現役時となんら変わりない。


(てことは、ハーフエルフ……そういえば、子供いるって前から言ってたよな。ゴライさんとネイさんの息子でハーフエルフ…………ん?)


失礼を承知でゴライの顔をメインに全体を確認。

そして妻であるネイとの記憶を脳裏に思い浮かべる。

結果、一つの答えに辿り着いた。


「あの、もしかしてゴライさんの息子って、あの超絶クールイケメンフェイスを持つハーフエルフのこと、ですか?」


「そうそう、あの若干反抗期気味のハーフエルフで合ってるよ」


笑いながら正解! と答えるゴライだが、ギールは決して小さくない衝撃を受けていた。


(あ、あのイケメンハーフエルフがお二人の…………いや、待て待て待て。落ち着け落ち着け。確かにぱっと見ゴライさんの要素はあまり感じられないけど、ネイさんが男だったらって考えると……納得出来る、な)


異性だけではなく、同性からもモテるクールフェイスを持つネイ。


そのクールな美しい容姿と性格に、ギールの想い人だったクリスタもやられそうになった。


「よし、ちょっと移動しようか」


休息後は戦斧の素振りを行う予定だったが、先輩からのお願いによって破棄。


カフェの代金は全てゴライが出すということもあり、喜んで訓練を切り上げた。


「えっとね、こんな事を言うのは子煩悩という親バカだと解ってるんだけど……うちの息子、ルーキーにしてはかなり強いんだ」


「一回すれ違ったことがありますけど、それは何となく察しました」


レオルに肉薄するかもしれない才と肉体。

それらの要素を持つ者が、弱い訳がない。


「ふふ、そう言ってくれると嬉しいね」


この後、ゴライとネイの息子であるハーフエルフ、エリオの何がどうヤバいのかが説明されるのだが……ギールは初っ端の説明に絶句した。


「ッ…………それは、その、マジですか?」


「うん、マジなんだよね。僕も知った時は本当にびっくりしたよ」


人は生まれた時、何もスキルを持っていない。

それが当たり前なのだが、稀に……極稀に生まれた時からスキルを有している赤子が生まれる。


そのスキルは一般的なスキルではなく、先天性スキルと呼ばれている。


「順調に弓技や風魔法のスキルも習得して、あっという間にDランクに上がったんだよ」


「他に二つも……精霊魔法に加えて、二つもスキルを有していたら……浮きません?」


「いや~、本当にそうなんだよね~。まだ歳も十六歳と本当に若くて生意気な子供なんだよ。だからあまり同年代や同期の同性と上手くいってなくてね」


「な、なるほど」


元は二十二歳だったこともあり、そこそこ戦える生意気な後輩は今まで何人も見てきた。


(……うん、そういう奴らと今まで何度か出会ってきたから解る。浮く様が容易にイメージ出来てしまう)


親であり、元冒険者であるゴライとしては、もっと冒険者は一人では上手くいかないことが多いという事実を伝えたい。


その他諸々の考えを踏まえた上で、ゴライは息子と何回かパーティーを組んで欲しいと、頭を下げて頼んだ。

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